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1-29 魔女にも問題はあると思いました

 ――マユと一緒に寝る。


 彼女が今の体型にならず、お姉さんそのものであったらきっと何かしでかしているに違いない。

 でもぺったんこでちんちくりんなのが今のマユであり、そこに魅力を感じるロリコンではないと自負していた。

 なのにいざ近くにいるとなれば緊張するのはどういうことか。


 あれか、実年齢を意識してしまうからか?

 それとも視覚意外の部位で魅力を感じ取っているのか?


「アラタ、明日はどうする?」


 いつもより近い距離で声が聞こえる。


「とりあえずチートを買って、レイの居場所がわかれば夜に突撃かな」


 どうしてこんな状況になったかといえば、マユがベッドに書く魔法陣を失敗したからだ。

 柔らかさを求めたら、ベッドがスライムに似た触り心地へ変貌したらしい。


「それにしてもベルが働いていたとはな。私も知らなかった」

「そ、そう……」


 さっさと朝になってくれればいいものを。

 だが家の中に響くのは少女の声だけ。


 街から隔離された森の家に二人っきり。

 男女でここに暮らすことに今さら気恥ずかしさを覚えた。


「あのノロケ勇者にも参加してもらおう。何かあった時には彼が戦えば私たちは安全だ。彼の装備もあることだし」

「おう……」

「さっきからどうしたのだ。もう眠いのか?」

「そういうことにしておいて。理由は別にあるけれど……」

「じゃあおやすみ、アラタ。感謝してるぞ」


 その後は夜の静けさが続いた。


 聴覚も視覚も特に働かなければ次に集中されるのは嗅覚。

 今、嗅覚が研ぎ澄まされると何がわかるのか。

 無論、マユの髪の匂いだ。


 寝る前に風呂に入ったばかり。

 そんな状態の少女の髪の毛を思春期の男子高校生が嗅いで、はたして安眠できるか。


 いろいろ起きるわ!


 自分はそこまで変態的な人間ではないと思っていたはず。

 しかし、そんな自信が大きく揺らいでいた。


「……マユ、まだ起きてるか?」


 自分からそっけない返事を続けておいてまた話しかけるのは相手を振り回すことになるが、これ以上嗅覚だけに集中するとまずい。

 何か別の刺激が欲しかった。


「うぅ、アラタ……?」


 マユからの返事はめちゃくちゃ眠そうな声。

 寝ないでも長時間活動できる彼女だが、一度睡眠の体勢になれば寝つきはとても早かった。


 というか寝ぼけていた。


「着替えはタンス……。ん、あと5分……」

「よし、そのままブツブツ続けておいてくれ」


 マユの寝言を脳内で復唱し、どうにか刺激の比率をコントロールする。

 シングルベッドで女性とともに寝るのははじめての経験だった。


「床で寝ればよかったな……」


 その後悔が誰に届くこともない。

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