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1-26 ラッキーな展開でした

 そこはもう隠し部屋の中だった。

 隠し部屋のど真ん中。


 こちらが転移するなんてこの城の住人は知らなかったし、突然の訪問に驚いた様子を見せていた。


「アラタか、何用で来た。緊急事態か?」


 魔王様は一瞬にして戦闘態勢。

 自身の右腕に視線をやると、誤解を解く間もなくベルが動き出した。

 マユがいないことから、レンガの家で事件が起こったと思われている。


 ベルが今にもレンガの家まで飛び出しそうなので、新は慌ててそれを止めた。


「ただ遊びに来ただけだって! 緊急でもなんでないから!」

「おぉ、遊びに来たのか! そろそろ変態なやつと堅苦しいやつ以外の人間と話したかったところよ」


 変態はイデュア、堅苦しいのはマユだろう。

 色の濃い二人を相手にしてきたシュベールからすると、平々凡々な新との会話はむしろつまらなそうだが。


「ちょっと待ちなさい! 今日はずっとシュベール様の頭を撫でるデーだったのよ!」

「無視しろ。この変態はこそばゆい触り方ばかりするから気持ち悪い」

「あぁ! 塩対応なシュベール様もいい!」


 ひとり変な愉悦を感じる皇女は放っておき、新とシュベールは対面して座った。


「とはいえ、何を話すか……。魔王様は何がお好きですか」

「食い物だと肉。塊を噛みちぎるのがよいぞ」

「パスタ食べます?」

「ぱすた……。初耳かもしれぬ」

「地球の料理だもんな……」


 マユが話していなければ地球の知識は皆無だろう。

 そう考えると自分だけが特定の知識に精通している賢者になったような気分だった。


「……てか、食べ物ってどうやって買ってるんですか」

「ベルがやってくれておる。我がせずとも動いてくれるから我には何もわからん」

「魔王様の好物は街の肉屋で買っています。ここからだとそれなりに遠いですが地元でも評判が良く――」

「買うって、お金は?」

「もちろん合法なやり方でありがたく頂いていますよ」


 つまり、働いている。


 ベルの見た目はただの人間。

 なんならイケメンだし、言葉遣いも丁寧。

 魔物だと隠し通すのはそこまで苦労しなさそうだ。


「じゃあ、今もあるってことか! ……あの、ちょっとだけでいいから貸してくれない?」

「額によっては構いませんが……。シュベール様」

「よいよい。必要ならいつでも分けてやれ」

「そういうことです。いくら必要ですか」

「とりあえず10万バペル。多分余るけど……」

「承りました。すぐにご用意いたします」


 これでクレスのポケットマネーを拝借することなくチートを買える。

 予想通りにレイの居場所がわかれば、同じようにクレスの居場所も判明するだろう。


「暇も意外と役立つなぁ……」


 棚からぼた餅。

 人生はいつ幸運が降ってくるかわからないものである。

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