1-25 一番の敵は家でした
マユが自分のベッドを改造している間、新がするべきことは家事だった。
マユに指示されたわけでもないが、娯楽が少なすぎるこの家ではそれくらいしか有意義に時間を使えないと思ったのだ。
しかし皿洗いも洗濯もする必要はない。
魔改造電子レンジで召喚されたパスタはプラスチックの容器ごと出てくるし、洗濯物も魔法で解決してしまう。
普通、衣服を洗うなら洗濯機を使うがこの世界には『洗浄魔法』なんて便利なものがある。
最初はこの世界の洗濯も水を使って手洗いをしていたそうだ。
しかし、洗濯機を開発したように誰かが便利な魔法を思いついて編み出されたらしい。
水を使わないからたとえズボンのポケットに何かが入っていたとしても安心だ。
この前、新が書いて生み出されたハレンチ魔法陣もポケットに入ったまま。
濡れてシワシワになることはない。
そんなこんなで新ができる家事は掃除しかなかった。
「マユ、この家って掃除機ないの?」
「ないぞ」
「じゃあ雑巾とかは?」
「ない」
さて、どうしようか……。
掃除用具を一切使わずに掃除ができるものか。
そもそも家に目立った汚れがあるわけでもないし。
もしやこれは――。
「この家も魔法陣が書かれてる……?」
「よくわかったな。快適な温度を保ちつつ、家をさらに丈夫にする。他にも細かいおまけを練習がてらつけた」
マユが上を見ながら言うので新も同じように上を見た。
するとどうだろう。
そこにあったのは天井いっぱいに書かれた大きい魔法陣。
それだけ種類豊富な魔法がこの家にはかけられているのだろう。
「この家では魔法学のこと以外は最小限で済むようにした。君は掃除が趣味だったか?」
「暇なんだよ! 魔法以外にもすることが欲しいって!」
「それならば魔王城で遊んできてくれ。シュベールも暇しているだろうから」
「絶対に皇女様が怒るぞ。『私の花園が!』って」
「じゃあ今後の予定を立てるなりして我慢するのだな」
マユはベッドに集中したげに返してくる。
これ以上話しかけたら怒られそうだ。
新は仕方がないので魔王城へ行くことにした。
魔法陣トラップがあるので転移魔法で行くしかない。
もはやこの世界では徒歩で歩いた距離よりも魔法でワープした距離のほうが長く思える。
そんなことを思いながら魔法陣に手を重ねた。
暇つぶしのためにラスボスと対面だ。




