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1-24 一旦休憩しました

「すいません、金がまとまったらまた来ます」


 新はチート能力のカタログを女性に返却した。

 はじめてここに来た時と同じ女性だ。


 彼女もマルクと繋がっていているのだろうか。

 笑顔で対応してくれている裏に隠された腹黒さを考えると少しおぞましい。


 新は逃げるように外へ出た。

 マユも後ろから追いかけてくる。


「さて、ここからどうしようか。次にノロケ勇者と会う日は決まっているかな?」

「やっべ、何も言わないで解散しちゃった」


 新もクレスも国王城に潜入した後は緊張から開放され、肝心なことを相談し忘れていたのだった。


「アイツ、方向音痴だし……。森から家までの道のりわかるかなぁ……」


 クレスが家に来たことはあっても、それは転移魔法によるものだった。

 転移魔法でしか来たことがないため、きっと詳しい道のりは知らないはず。

 こちらも彼の家を知らないし、どうやって会うべきか。


「アラタ、とりあえず今日は帰ろう。多少でも今後の見立てができたのは収穫だ」


 マユは自作の本を広げる。


 索引を多用する新とは違い、マユはそれぞれの魔法があるおおまかなページを覚えていた。

 書いた本人だからか、体が自然と答えに導いてくれるのだ。

 今回も開いたページから遠くない場所に本命の魔法陣があった。


「マユさ、頻繁に転移魔法使ってるけど、ストックなくならないの?」

「もう書き慣れたのだ。最近は早書きがマイブームになりつつある」

「よくもまぁ、あんなに難解なものを……」


 しかも書き間違えればどうなるかはわからない。

 ある意味で危険物とも言える魔法陣を早書きするとは。


 マユについて知らないことは多くあるが、知れば知るほど天才っぷりが見えてしまう。

 異世界に行っていなかったら彼女は何をしていたのだろう。


「……(うわ)の空だな。考え事かね?」

「あぁいや、なんでもない」

「ならいいが。ほら、行くぞ」


 マユの声に被さるようにして破裂音がした。

 その後、一瞬にして景色が変わる。


 眩しい日差しはなくなり、空も低くなった。


 靴を履いたままだが、転移した場所は玄関であったから問題はない。

 これもマユが考え、正確に書いたからこそなのだろう。


「やっぱり我が家が一番だ。落ち着くよ……」


 力尽きるようにベッドへ横たわるマユ。

 今度は新のベッドでなく、自分のベッドでだ。


「……そうだ。これにも魔法陣を書けば最高の寝具になるではないか。どうして今まで気づかなかったかな」


 家に着くなり考えるのは魔法のこと。

 学問そのものを楽しむ姿勢だけで新にとっては天才の所業だと感じた。

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