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1-23 解決策は近くに転がっていました

 チート能力はやれ最強の腕力だの、最速の走力だの派手なものが多かった。

 新たちが求めている隠密性に優れたものはなかなか見つからない。


「つーか、高いとはいえ買っちまえばいつでもこの能力が使えるんだろ? わざわざ魔王を倒しにいかなくても強盗とかしたほうが手っ取り早いよな」

「それほどまでに魔王の首が高額なのだ。……まぁ、君と同じような発想をする人がいてもおかしくないとは思うが」


 大々的に事件を起こせばチート能力のことが世間に知られる。

 そうならないためにもマルクが対策をとっているのかもしれない。


「いろいろ穴があるようで騙せてるのがすごいよな。SNSとかあればすぐに知れわたるのに」

「魔王という目に見えた敵を意識させると、密かに隠れている他の敵には気づかなくなるものさ。あとは懸賞金に対する欲望が大きい」

「クレスみたいに、マジで心の底からイデュアを助けたいって人もチートを買うんだしな……。なんか複雑……」

「善意が絶対に正しいわけじゃない。悪意が絶対に責められるべきものでもない。結局は後悔しないために、自分の信じたことを貫くしかないのだろう」


 犯罪行為だったとしても、悪の味方なんて肩書きでも。

 後悔しないためにやるべきことをやるだけだった。


 新は一旦、大きく伸びをして大きく息を吐いた。


「せっかく異世界に来たんだしな。現実じゃやらないようなことをバンバンやるべきだわ」

「うむ。死なない限りはちゃらんぽらんで構わんよ」


 新は肩を回してから再び目を落とす。

 マユは一瞬たりとも休憩せずに字を流し込んでいた。


 そんな作業が続いて、ついには夕方。

 それらしきチートはまだ見つからない。


「ここから先は安物ばかりっぽいけど……。見ておくか?」

「もちろんだ。そこにもヒントがあるかもしれない」


 最初は安物能力のカタログに何も感じなかった。

 しかし二人は少し進んだページから見覚えがあるような気がしてくる。


「あ、前に買ったやつだ。たしか『行きたい場所までの道のりがわかる能力』で――」

「アラタ。それを使った時、どうだった」

「は? どうって聞かれても……」

「どうやって自宅までの道のりを調べた?」


 妙にマユが興奮している。

 新もその様子から彼女の考えを察した。


「これでレイの居場所がわかるってことか……!」


 新がこの能力を買った時、目の前に矢印が見えるようになった。

 転移魔法のように目的地の特徴を細かく記載しなければ、魔法では実現不可能なはずの能力だ。

 しかしその時の新はセーブポイントからレンガの家までの道のりなんて知らず、ただ漠然と家をイメージしただけで矢印が見えた。

 初見の道でも、行きたい場所の特徴が曖昧(あいまい)でも、多少のイメージで目的地が設定されるのだ。


「もしもこれが魔法学の()したことだったらとんでもないぞ……。マルクはそこまでの天才なのだろうか」


 魔法オタクはレイの居場所がわかるかもしれない事実よりも別の方向で興奮していたようだ。

 いろいろと早口で呟いているマユはさておき、意外と近くに答えは転がっていた。

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