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第6幕 マダムなパトロンつまりはゲス!?

「長い!です」

長々とスケさんとヨンズだけで話が進み、ほったらかし状態だったプリンはオカンムリの様子だ。しかしまたしても、そんなプリンを置き去りにして話が進んでいきそうな空気が漂っていた。


「ふっ、お見事と言いたいところじゃが、どこにそれが真実であるという証拠があるんじゃ?」

そう言いながらもヨンズの額にはジワリと脂汗がにじんでいる。

「証拠?じゃあそのカンテラの火を消してみてよ。消してもまた点ければいいだけなんだし」

「この魔法の炎を消せと?そんなバカげたことできるわけないじゃろ」

言ってもダメなら実行あるのみと、スケさんはヨンズの手にあるカンテラを落とそうと、不意を突いてその腕に飛びかかる。しかしヨンズも素早い反応でそうはさせるかと飛んだり跳ねたり、クルクルと身をよじったりして防戦一方ではあるがなんとかスケさんの魔の手から大事なカンテラを守り通していた。


「ぬぬぬっ、ですっ」

その様子を見てご立腹の者が一人、そうプリンだった。

いつまでもほったらかしにして二人だけで話を進めておいて、挙句の果てには自分たちだけ楽しそうにダンスをしているように映ったその光景は、彼女の我慢の閾値いきちを振り切った。というかそれはもう、ぶっちぎった。


プリンは愚か者たちに制裁をとヨンズを背後から蹴りつける。スケさんではなくヨンズを最初に狙ったことに大きな意味はなく、ただ単にターゲットが大きくて蹴りやすかったというだけなのだが、その結果にはおおきな意味が生じた。プリンよりも一回り大きいくらいの背丈しかないヨンズは、彼女の飛び蹴りをくらって大きく揺らめき転倒してしまう、そしてその拍子に手にもっていたカンテラがコロコロと地面に転がってしまった。

「あっ!?」

転がるカンテラを確保しようと追いかけるスケさん。でも猫の手では爪をはじかれるばかりでカンテラの回転を止めることができない、そしてその光景がプリンの目にはスケさんがカンテラでじゃれているようで楽しそうに映った。

絶妙のタイミングでコロコロ転がったカンテラがプリンの足元を通過しようとした時、プリンの足はすでにカンテラめがけて蹴り上げられていた。

「シュート一閃!です」

プリンに蹴り上げられ放物線を描いたカンテラは、皆のアッ!という顔に見つめられたままジュッという音を立てて水面へと落ちていった・・・。


驚くことが三つ起きた。

一つはシラズのほとりに立ち込めていた霧が消えた。人々から奪ったキラキラした思い出というのがウィルオーウィスプに大きな力を与えていたんだろうと、後にスケさんは語っていた。

もう一つはヨンズが変身した。

実年齢が18だといっていたヨンズの言葉は、ガセだと思われていたが本当だった。しかも美少年というオチまでつけて。声も以前のようなしわがれた声ではなく、その風貌に似あった美声で、なぜか身長も伸びていた。しかし喋り口調だけはヨンズのままで、美少年がワシとかヌヒッとかいう様は違和感ビンビンなのが玉にキズというところだったのだが、これはまあ仕方がないだろう。

最後のひとつは・・・、ミス・セプテンバーがヨンズに付いていくと言ってパーティーを離脱しようとした。

よく妖精の姿は心のきれいな子供にしか見えないとかいうが、要はオッサンには用がないから姿を見せないだけで、美少年が好きなただのゲスだと判明。(ミス・セプテンバー限定なのかもしれないが)

ミス・セプテンバー曰く「じゃあアナタたちは美少年もオジサンも平等に愛せるとでもいうの?ハッ、調子のいい綺麗ごとだけ並べる者ほど信用ならないものはないわ!」

気持ちがいいほどのヒールっぷりだった。


「ズンズの元おっちゃんは、これからどうするですか?」

「元おっちゃん・・・。その呼び方もどうかと思うんじゃが、まあいいわい。もうこの湖にワシを縛るものは、何もなくなった事じゃしな。ウィルオーウィスプに奪われた思い出がすべて戻ってきたわけではないのだが、幸いなことにいくつかフェアリーランドでの昔の思い出がよみがえってきたから、ワシは自分のルーツを探しにそこへ行ってみようと思う」

「それがいいよ。この場所はウィルオーウィスプが消えたことで浄化されたけど、一人で残るには寂しいところだというのには違いないから」

美少年には優しいミス・セプテンバー。

「フェアリーランドかぁ、いいですねえ。アタチも少しだけ行ってみたいのです」

「何を言ってるんだい。早くドッペルゲンガーを見つけないと、君はいつ死んじゃうともわからない身なのに。そんなことに時間を費やしているヒマはないよ」

「おお!そうだったのです」

なんだか色々あったせいで当初の目的を忘れかけていたプリンだったが、スケさんの指摘で現実に引き戻されてションボリした表情を浮かべる。それを見かねたスケさんの「だから全てが終わったら、安心してフェアリーランドでもどこへでも行けばいいじゃないか」という言葉に元気を取り戻したプリンは旅の続行に意欲を燃やすのだった。



「それじゃあアタチたちはもう行くですよ」

「ウィルオーウィスプが消えたことで呪いにも似たこの湖にかけられた魔法も解けたはず。岸を伝って歩いても向こう岸にたどり着けるじゃろう。ミス・セプテンバーもお元気でな、ヌヒッ」

「私が一緒についていれば、その変な喋り方も矯正して、私好みの美少年に育成できるのに!服だってキレイで美少年にピッタリのデザインのやつを私が買ってあげるわよ?」

「一体どこのパトロンマダムなんだい?君は長老エントのところまでボクたちを案内するって約束したんだろう?」

「私、何であんな約束しちゃったんだろう・・・」


ミス・セプテンバーは最後まで後ろ髪を引かれているようで諦めが悪かったが、いつまでもキリがないのでヨンズに別れを告げて、無理やり引きはがすようにその場を後にしたのだった。




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