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第2幕 妖精ミス・セプテンバー

「とぉーぅ!」

洗面所の鏡のなかに広がる世界へと飛び込んだプリンとスケさん。その目の前に広がる景色は、草木の生い茂る深い森のなかだった。


「なんですか、ここは?」

「何と言われても、まあ森だね」

「そんなことは見ればわかるです。なんでドッペルチェンジャーを追いかけてくると、森のなかに出てくるですか!?」

「そんなことはボクにもわからないよ。君の家とココがつながってたって事しか」

「突然こんなとこに来ても、いったいどこを探せばいいのか分からないです!一回戻って出直すです」

そう言いながら元居た洗面所へと帰ろうとするプリンであったが、あることに気付いて立ちつくす。後ろを振り返っても帰り道となるゲートがなかったのである。


「どうやら帰れなくなっちゃったみたいだね」

「んなーっ!?どうしてくれるですか?聞いてないですよ!」

「だからボクは待ってって言ったのに、プチ魔導士のプリンちゃんなら大丈夫なんでしょう?」

「むふーっ!」

冷ややかに言い放つクロネコに、顔を真っ赤にしながら黙りこむプリン。


「まあ大丈夫ですよ。お助けキャラ枠で今回からスケさんが参入しているから、困ったときにはスケさんがなんとかしてくれるです!」

「いやボクはなにも聞いていないから、お助けキャラ枠じゃないんじゃないかな?」

「じゃあ何のために出てきたですか!?」

「そりゃあ・・・、キミのボケに対するツッコミ役なんじゃない?」

「そんなの、なんの役にも立たないです!」


帰るゲートも閉ざされ、深い森のなかにたたずむプリン。

むやみに動き回れば余計に迷って、現在地もわからなくなってしまうだろう。

どうしたものかと困っていた時、スケさんの肩に青い蝶がとまった。

「うわ!やめろよ、ボクに触れるな!」

肩にとまった蝶を追い払おうと必要以上に飛んだり跳ねたり、本当に嫌がる様子のスケさんを見ていたプリンから笑みがこぼれる。

「なにもそんなに嫌がらなくても、蝶々はべつに噛みついたりしないですよ」

「イヤ、そもそもボクは虫が嫌いなんだ!彼らには魂と呼べるものがないからね」

半狂乱にも近い状態で反論するスケさんだったが、蝶々はしぶとくスケさんの肩に留まったまま離れようともしない。だがやがてその光景に不自然というか異常さを感じ始めたころ、スケさんの肩からふわふわと飛び立った蝶が、プリンの頭上まで飛んでゆき一瞬でその姿を変えた。


「そんなに汚いモノみたいに扱わなくたっていいじゃないネェ。全くツレないんだから」

そう言いながらプリンの目の前に浮かんでいたのは、羽の生えた小人だった。

「おおお、ガのヒトですよ!」

「ぅおい!失礼な、アタシはフェアリーだよ」

「フェアリーって何ですか?」

「妖精のことに決まってんじゃん!」


その自称妖精は得意げに続ける。

「私はこの森に住む妖精のセプテンバー。みんなは私のことをミス・セプテンバーって呼ぶよ」

「ミス・・・婆?」

「ヤメて、その間違え方ホントにヤだから・・・」

さっきまでの勢いはどこへやら、ミス・セプテンバーは意気消沈した面持ちで懇願する。


「ふぅん、まあどうでもいいですよ」

「なにぃ!?さんざん引っ掻き回しといて、このヤル気のなさ・・・。これがニュージェネレーションってやつなのかしら」


そんなくだらないやり取りをしていたプリンだったが、ふと何かを思い出したように小さな握りこぶしを手のひらの上でポムと叩く。

「それよりもアタチのそっくりさんが、この辺りを通らなかったですか?」

「アンタのそっくりさん?知らないけど、なんで?」

「かくかくしかじかで、そのドッペルチェンジャーを探さないとアタチは死んじゃうらしいのです」

「そりゃ大変なことになったねぇ、でもこの森の事なら長老エントのじいさんに聞いてみたらいいんじゃないのかな?ま、まだ生きてたらのハナシなんだけどさ、キャハハハハ」

何がおかしいのかは分からないが、ミス・セプテンバーはご満悦の様子で笑い転げている。

「エントって誰ですか?」

「樹齢500年を超えた樫木の霊木だよ、長く生きた樹木には不思議なものが宿るって聞いたことがない?そんなわけでここでは長老って呼ばれていてさ、この辺りの事なら何でも知ってるんだよね。だからもしかしたらここに迷いこんだっていう、アンタのドッペルゲンガーについても知ってることがあるかもしれないよ」

「おおーっ」

「会ってみるって言うんなら、この私が案内してあげる」

追ってきたドッペルゲンガーの手がかりもない、帰ろうにも家に戻るゲートも閉ざされてしまった。そんな状態で何かの策があるわけでもないプリンたちに、この申し出を断る理由があるはずもなかった。


「よし、そこまで言うなら仕方がないから会ってやるです。ガのヒトよ、さあアタチたちを導くがいいのです!」

「いやだからアタシはセプテンバーだって言ってんじゃん、ってか何故にそこまで上から目線なの?まあいいわ、どうせヒマなんだしアンタたちに付き合ってあげるわ。感謝しなさいよね!」

「おう、感謝感謝です」

「・・・なんだかすごくムカつくんですけど」

プライドの高そうなミス・セプテンバーではあったが、口ではプリンに敵わないとふんだのか肩を落として誘導を始める。


「そうと決まれば出発です!スケさん行くですよ」

「ああ、ウン・・・」

こうしてプリンとスケさんにミス・セプテンバーを加えた一行は、長老エントに会うため深い森の奥へと進んでいくのであった。







                                              やす

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