5 暗黒神、故郷に帰る その5
「あ、でも考えてみれば」
何事か思いついたようにノーフェスが、俺を見た。
「暗黒神様なら、魔物を従えられるのでは?」
「え?」
なにそれ。
「俺に魔物を倒せってこと?」
まあ出来る気はするけど。
「いえ、そうではなくて」
ノーフェスが慌てたように両手を振った。
「魔物は暗黒神様の僕なのでは?」
「え?そうなの?」
蘇った知識の中には、そんな物はないんだけど。
「え?」
え?なんで全員で驚いてるの?
「魔物は暗黒神様が生み出したと思っていましたが」
代表してヒイが答えた。
「はい?」
「神話では光明神が人を作り、暗黒神様が魔物を作った、と」
うわ。やはり暗黒神って、完全に悪役ポジションなのね。
朧げな記憶と知識を辿ってみると、大筋では間違っていないようだ。
「なんか光明神の位置付けに違和感は感じるな」
首を捻ったが、一同は光明神に関心がないのか反応は薄い。
「んー。まあ創ったのは俺かもしれんが、従えてるわけじゃないみたいだぞ」
創ったというより環境を整えた、というのが正しいようだ。はっきりしたことは、全然思い出せないけど。
あ、でも使えそうな魔法を思い出した。
「ただ魔物避けに良い手がある」
それは祝福である。
「石でもなんでもいいから祝福すれば、その近くに魔物は寄らないようだ」
この寺院も祝福されているから、魔物が入ってこないみたい。1,000年たってもあまり朽ちていないのも、祝福されているからっぽい。
すごいな、祝福。
という事で、みんなで試してみたら本気で凄かった。
小石を祝福してみたところ、小石を中心とした半径約100メートル以内に、一切魔物が入ってこない。
祝福するときに使用する魔力も、極僅か。
問題は効果の継続時間だが、寺院の例を見てもかなり持つと思う。流石に、普通の人間がやって1,000年ということはないだろうが、1年程度なら余裕だろう。
これで囲んでしまえば、帰らずの森でも安心して暮らせるエリアを確保出来る。
移動だって祝福された小石を持って歩けば、安心ってことだ。
さすが、神の御技。
システムとか全く分かってないけどな!
早速分かれて準備することにする。
女性陣は俺と共に残って、居住エリアの確保。
男性陣は、なんとか町にたどり着き、残してきた人たちと合流する。
道は分からなくても、大まかな方向さえ分かれば、どうにかなるだろう。
頑張れ。
3日程かけて寺院の中庭に実っていた果実集めたり、森に住むケモノを狩って食料を確保し、男たちは出発した。
これでしばらく、俺は女性陣とウハウハ(予定)である。
この幼児の身体が恨めしい。
なんとか成長させられんもんかな。