表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/65

17 諸君、暗黒神(わたし)は風呂が好きだ


水は十分に確保できて、畑も切り開きつつある。森の中での狩りについても目処がついた。

住居は、もう少し時間はかかるがどうにかなるだろう。


「となると、くつろぎが欲しくなるなぁ」


神殿の俺の居室で、呟いた。


「くつろぎ、ですか?」


俺の前で控えているフウが、確認するように繰り返す。


ヒイとフウは、俺の巫女として他の住人たちの橋渡しをしてくれている。

今日はヒイが、みんなの元を回っているはずだ。


ピアとミリは、侍女として。ユキは護衛として、俺の側に常に控えてくれている。


最初は彼女たちはずっと立っていたのだが、俺が落ち着かないので、ちゃんと座ってもらっている。


なので客観的にみると、幼児と美女のお茶会のようになってしまっている。


「みんなは、お風呂に入る習慣はないの?」


「お風呂というと、お湯で身体を洗うという事ですか?」


フウが首を傾げた。


ああ、その言い方でわかります。風呂は一般的慣習じゃないんだね。


「もう少し、海沿いの地方では、そういった習慣があると聞く。自然にお湯が湧いているって」


ユキが貴重な情報を教えてくれた。


それにしても、ユキも他の連中も最初のうちは敬語を使っていたけど、俺が気にしないとわかったら、あっという間に普通の喋り方になったな。

気楽だからいいんだけど。


いまだに敬語を使おうとするのは、ヒイとフウ、それにスシャルくらいだ。その3人にも、出来るだけフランクに、と繰り返し言っている。


いや、もう2人いたな。

生き残りのダークエルフを探しているミイとヨウだ。

ときおり念話で報告を受けているが、めちゃめちゃ固いんだよなぁ。


まあこの2人に関しては、おいおい教育するという事で。


なにはともあれ風呂である。


生活の術がある程度ついたなら、次に揃えるべきはトイレと風呂である。となろう小説の主人公(せんじん)たちも言っている。


そして俺も風呂は大好きだ。なによりヒイたちと混浴がしたい!


風呂の重要性を、わかっていただけただろうか?


大浴場を!!一心不乱の大浴場を!!


俺は右拳を振り上げ天を仰いだ。


「クラキ様?」


フウが、そっと俺の名を呼ぶ。


「あ、ああ。水を温める魔道具ってあるかな?」


我に返って、慌てて質問でごまかす。急に椅子から立ち上がって、天を仰ぐ幼児。うん。アブナイ奴だよね。


魔道具についてという事で、早速ノーフェスたちの天幕、別名ハーレム小屋へ行ってみる。


「ノーフェス。いるか?」


大きな天幕の外でフウが声をかける。

まさか、昼間から大運動会を開いているとは思えないが、世の中には防音の魔道具だってある。

天幕を開けてみたら肌色の乱舞、というのはチト頂けない。


まあそれは杞憂だったようだ。

すぐに天幕が開いて、黒髪のスレンダーな女性が顔を出した。


「これはクラキ様。わざわざこのような所に」


跪こうとする女性を止めて、ノーフェスを呼んでもらう。


「なにか御用ですか?」


相変わらず奇矯な格好でノーフェスがやってきた。


立ち話もなんだという事で、天幕の中で話す事にする。


天幕の中はむせ返るような女性の香りで、一杯だ。

8人も若い女性がいるからね。

馥郁たる、と言いたいところだが、少々臭い。もちろん口に出さないが。


みかけが幼児なので幼児らしく「くっさ〜い!」とか叫んで、女性たちのへこむところを見てみたい木もするが。

妙な性癖の扉を開けてもしょうがないので、我慢する。


ただ女性たちは、赤面しながら天幕の出入口をあけて、風通しを良くしている。


どうしたのかと振り返ってみると、ピアとミリが顔をしかめていた。


本当に幼児だから、しょうがないね。


しかし、これで風呂の重要性は裏付けられたと言えるだろう。

水で身体を拭くだけじゃ、やはり清潔さを保つのにも限度があるのだ。


「お湯を沸かす魔道具、ですか」


「沸騰させる必要はない」

50度以下のお湯を、と言おうと思って言葉に詰まる。

この世界、温度計ってあったかな?


「身体を入れても問題ないくらいの温かさでいい。ただし、量はたくさん必要だ」


かくして大浴場建造プロジェクトは、始まった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 薪に余裕が有るなら焚火とかで石熱して 風呂に沈めるって手も有る、温度コントロール出来んけど 病気予防には公衆衛生って大事だよね
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ