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14 暗黒神、スローライフを企む その2

「今、一番困っている事はなんだろう?」


俺の問いにリザードマンのスシャルは、即答した。


「水ですね」


オーガのゲールも大きく頷いた。


「生活するのにやっとで、畑なんかに使う分はほとんどねぇな」


この拠点の水源は、神殿の中庭に湧く泉だけだ。

水の流れの痕跡からすると、その泉を水源に神殿の周りに水路があったようだ。今の泉の水量は、コップ一杯を溜めるのに、30秒以上はかかりそうな程だ。


これじゃ、確かに畑には使えないだろう。


ヒイとフウ、それに獣人の女の子二人を引き連れて中庭に行く。


ちなみに犬の獣人が、ピア。猫の獣人がミリというらしい。

風呂などに入れないので、まだ毛並みが燻んだ感じだが、出会った頃よりは、だいぶマシになった。


水量を増やして風呂はともかく、水浴びくらいはできるようにしたいところだなぁ。


泉は中庭の中央に大きな石の柱があり、その4方向に竜の頭部の彫刻がある。東洋風の竜だな、これ。

本来は4つの口から水が出ていたのだろうが、今は南側の口から一筋の水が垂れているだけだ。


泉というか、涎にしか見えない。


いろいろ調べてみたが、仕掛け等は見当たらない。

周囲に高い山もないし、仕掛けもなしに水が自噴するとは、思えないんだがなー。


「魔法のアイテムで水を出す物ってある?」


ファンタジーで言うところの水の魔石辺りを念頭に、聞いてみる。


「あるにはありますが、大量の水を長期間出すとなると、価値が物凄い事になると思います」


フウの返事に頷いた。そりゃそうだよな。


あとは神の奇跡か。


「水あれ!なんちゃって」


その瞬間、小紋章が現れ魔力がゴッソリと抜ける。


「「「おお!」」」


その場にいた全員がどよめいた。

全ての竜の頭から、滔々と水が流れ落ちてくる。乾いた溝が水路として復活した。


「さすが暗黒神(クラキ)様!」


ヒイが俺を持ち上げ、抱きしめた。


うん。ナイスご褒美。

身体に当たる柔らかい感触を堪能しながら、今の現象を考える。


明らかに俺の言葉で魔法が発動したんだが、俺は魔法を使おうと意識すらしていなかった。

もちろん、紋章を使おうなんで意識すらしていない。


つまり不用意な言葉を言うと、魔法を乱れ打ちする恐れがあると言うことだ。


むしろ、いつも魔法は使わないと意識しておく必要があるのかもしれない。


なんか面倒だが、今回は悪い事じゃないので、まあ結果オーライという事で

困り事が一つ解決した事を喜ぼうか。


流れる水に気がついたスシャルたちが、中庭にやってきて、驚き喜んでいる。


「他になにか困っている事はある?」


「あとは、畑とか家とかテメェ共でどうにかなる事、ばっかだよな!」


ゲールが男前な笑顔で言い、スシャルも頷いた。


「クラキ様のお力で、十分に環境は整いました」


「トイレとかは、大丈夫なの?」


「それはノーフェスの作る魔道具で、どうにかなります」


ほう?

ヒイの言葉に興味を持って、その魔道具を見せてもらう。


磨かれた石盤に魔石を埋め込み、その周囲に紋様を描いている。

つーか蘇った知識にあったけど、魔石の現物見るの初めてだ。

黒曜石にちょっと似た感じだな。


周囲の紋様は魔法式だ。紋章と違って汎用性のないものだな。ついでに言うと、結構無駄な部分が多い。


「これは400年前に賢者スメーヌスが作ったと言われる、魔道具です」


得意そうにノーフェスが言う。

周囲にはいつものハーレムメンバーと、今回助けた男の子がいる。

妙にノーフェスに懐き、憧れているようなので彼に預けたのだ。

ノーフェスに憧れるという感受性が、やや心配だが、ハーレムメンバーの女性たちにも可愛いがられているので、立派なオネショタ要員として頑張ってほしい。


「なるほど腐敗と分解を促進するのか。しかも臭いも抑える効果付きだ」


こいつをトイレに入れとけば、立派な肥料が出来る筈だ。


「さすがクラキ様。式を読むのもお早い」


「しかしこれを応用すれば、印なんかなくても魔法を使い放題じゃないか」


というか人工的な印だよね、これ。


「いえ、少し強力な魔法を使おうと思ったら、式が持ちません」


ノーフェスが首を振るが、魔力を通す時にちょっと気をつければ、大丈夫そうに思える。


そうノーフェスに言うと彼は苦笑した。


「クラキ様が気をつけて行う魔力操作は、人間には不可能なレベルですよ」


そんな褒めるなよ。照れるじゃないか。


などと言いつつ、試しに目の前の石盤に魔力を流してみる。

なるほど、石盤に刻まれた紋様を壊さないように魔力を流すのは、ちょっと面倒な気がする。


「こんなに簡単に…」

「なんで精密な魔力操作...」


ノーフェスたちが、ザワザワと騒いでいる。


「あ!」


思わず声を上げた。

中心に嵌め込まれた魔石が、砂のように崩れ去ったのだ。


「あー。魔石が腐敗、分解しちゃったな」


「魔石に影響を及ぼすって、どれだけ強力なんですか」


ノーフェスが呆れたように言った。こいつに呆れられる、というのは非常に不本意である。


「なんか面白そうな技術だな。俺も勉強してみよう」


なんで、そんなに嫌そうな表情をする。

 

 

 

今のところ、神殿以外の住居は大きめの丸太小屋が一つ組まれているだけだ。

あとは天幕を張っている。


ホントに神殿なんか後回しにして、自分たちの住居作ればいいのに。


「クラキ様の事を後回しには出来ません。それに材木も切り出した、生木ばかりですし」


なるほど。スシャルの言うこともわからないではない。


「乾燥させようか?」


材木置場の前で、そう言ったがスシャルは遠慮がちに断った。


「なにもかもクラキ様に頼るわけにはいきません」


恐縮するスシャルには悪いけど、出来そうな感じがしたんで、やってみたかっただけなんだよな。


で、コソッと一本だけ乾燥させてみた。

うん。結構簡単にできました。

ただ、何故か紋章は浮かばなかった。


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[一言] 魔力を電気に見立てて家電製品作るなよ!電気自動車なんて絶対作るなよ!(ダチョウ倶楽部感
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