少女の涙
あったよ、病院が!……まさかの半分潰れた状態であるが。まあ全壊でないだけよかったと思おう。
おそらくマンション的な所だったのであろう先ほどの建物を出てしばらくぶらつくと、いい感じに町の地図のようなものが書かれた案内板を発見することが出来たので向かった先がこれである。なんていうかこう、元の世界と同じように会話や読み書きができるのは所詮ゲームの世界だからで納得できるが、世界観設定とか一々覚えていなかったからどうしてこうなったのかがわからんのだよなぁ。
まあ技術やら世界観がちぐはぐなのも全部作者ってやつのせいなんだ! と分かっている風な感じで流しつつ、半ば倒壊した建物の中に入っていく。
「あの、これって入っても大丈夫なんですか?」
「大丈夫かどうかはわからないが、薬がある可能性が一番高いわけだし」
「ふぇぇ」
同行者がさっきから若干泣きそうだが、道中獲物の試し切りと言わんばかりに襲ってきたネズ公をずんばらりんしていったのがメンタルに来ているのだろうか。一応血がそっちに飛ばないように気を遣っていたのだが。
そうそう、血の匂いに釣られてかネズ公が何度か襲撃してきた。結果としては同族の爪の前に儚く散っていったわけではあるが、一匹見たら二十匹はいたりする系の生き物かもしれないので面倒ではある。毎回爪を剥いでいくのも面倒なので放置しているが、まあ問題が起きたらその時に考えればいいや。
というわけで中に入ったわけであるが、如何せん病院に勤めたことも無ければ詳しいわけでもない。ので片端から調べていく他ないわけだが、ここで一つ心配事がある。
崩壊した世界の病院とかどう考えてもクリーチャー的な感じの厄さしか感じないよね!
真面目な話、屋内に入る大きさの生き物であれば素手でない以上は何とかなりそうな気がしてきた(なおどうしようもないレベルの物もいる)が、もし群体で来られれば俺はともかくとして同行者が危険なのである。
解決策? ははっ、何言ってんのかわかんねーや。そんなものが用意出来るとお思いかね? 諦めてキビキビ漁るんだよ!
まあ見取り図を見つけたので見てみれば幸いにも薬の取り置き所的な場所を発見、しかも崩れてない様子。建物の4階らしいが階段を使えばちょちょいのちょいである。崩れていない階段や順調すぎる道中にむしろ不安を煽られながら辿り着けば、多少散らかっているとはいえ無事にお目当ての物を見つけることが出来た。
「これが薬、なんですか?」
「そうだよ」
詳しい理屈は忘れたが細菌やウイルス性の病気であれば速攻で治してくれる万病速攻丸である。ネーミングが安直すぎてあれだが、見た目は普通の無針注射器。錠剤や液体の薬を想像してたら分からないだろうなぁ。
保存状態の良さそうな物をダース単位でかっぱらっていく。交換レート的に考えてもその辺のガラクタに比べれば圧倒的であるし、実利面で考えても薬なんざ多ければ多いほどいいだろう。
「あの、これってどうやって使うんですか?」
「ああ、適当に押し当ててここのボタンを押してやれば……」
ぷしゅ、と気の抜ける様な音とともに薬(だと思う)が体内にシュー! 病気の元を超! エキサイティンッ! される。早速使っているみたいだが、もし俺が悪い奴でこれが毒だったらどうする気なのだろうか?
と、へたり込むと同時に突然ぽろぽろと泣き出した。うぇ!? 俺? 俺が悪いの!?
「ど、どうした? 痛かったか?」
「いえ、もう駄目なのかなって思ってたのに、助かってホッとしちゃって……ありがとう、ございました」
……あ、これってもしかしてこの娘が病気だった系のやつ? なぁるほどなぁ、そりゃ嬉しくて泣き出しても仕方ない、のかな?
生憎と血濡れなのでどさくさに紛れて抱きしめたりは出来ないが、まあ安心させるためになでるくらいならいいだろうと撫でたらしがみ付かれた。解せぬ。
解せぬではない(憤怒)