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仮題:VRゲー世界に転生  作者: クラスペダ
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ファーストコンタクト・アナザー

 親が居ないなんて、今の世の中じゃよくある話です。その点、目の前で化け物に殺されたり、食べられたりする所を見て心を壊した子たちに比べて、ある日突然帰ってこなくなった両親の、それも顔も覚えている私は運が良い方なんだと思います。……そういうと皆悲しそうな顔をするのですが。


 私が生まれる前からこの世界はもうこんな感じになってて、おじいさんたちが言うには昔起きた大きな災害や崩壊で人は文明を失ったそうです。昔は化け物もいなくて安全だったと言われても、本当かどうか分からないしそれより生きるので精一杯です。


 私の暮らしているシェルターでは水も食べ物もプラントが稼働しているので十分に手に入りますが、服や薬などは不足しているらしいです。他の場所はどうかわからないが、食べ物があるのはきっと幸せなことなんだと思います。


 とはいえやっぱり病気になったりすると大変です。以前パンデミックという恐ろしい話を聞きましたが、その防止の為に外に捨てられたり、隔離だけじゃなくて燃やされる人を見るとやっぱり生きるのは大変だなって思います。


 ちょっとした咳が出るだけでも、もしかしたら恐ろしい病気かもしれないと追い出されると、大人の場合は外の遺跡に薬を探しに行けますが、子供だったらどうしようもありません。でもまぁ、みんな生きるのに必死なので仕方ないと思ってました。


 ……まさか私が追い出される側になるとは思ってもみなかったのです。朝から少しけほけほと咳き込んでいたら、あれよあれよと外に連れていかれました。まぁ燃やされるよりは生き残れる可能性が高いのではないでしょうか?


 仲の良かったおばさんからせめてとナイフを渡されましたが、無いよりはマシといったところでしょうか。銃を持った大人でも帰ってこないのに、正直なところを言えば半分以上諦めています。よっぽど運が良ければ、お薬を見つけて帰ってこれるんでしょうか。


 まあ仕方無いので、もしかしたらと言われた遺跡に歩いていきます。いざ冒険です。


 道中遠くで土煙が上がっているのを見かけたり、見つからなかったとはいえ私よりおっきな化け物を見かけたのですが、やはり命の危険がいっぱいです。まだ死にたくないです。


 開けた道を通るときは、いつ何かに見つかるか気が気ではありませんでした。後になって思い返せば、周りをみてビクビクしていたのは空から見たら獲物にしか思えなかっただろうなぁと、そう思います。……やっぱり、運が良いのでしょうか?


 なんとか遺跡に辿り着いたときほっと一息ついてしまったのは、仕方のないことだと思います。むしろ危ないのはこれからかもしれないのに、辿り着いたという安心感で気が抜けてしまったんです。


 だからでしょうか、あれだけ恐れていた化け物に見つかってしまったのは。


 ……がむしゃらでした。私より小さいとはいえ、私の持っているナイフなんかよりよっぽど恐ろしい武器を持って飛び掛かってくる化け物から必死で逃げました。崩れている建物をどんどん抜けて、ふとそこそこ綺麗な建物を見つけたんです。


 どことなくシェルターに似ていた色だったからでしょうか? 逃げ込む私を化け物はまだ追ってきました。そこで私は、このままだともし建物の道が行き止まりになったらそこで終わりだと気が付きました。行き止まりで逃げれないくらいならと、慌てて近くのドアを開けて飛び込んで、閉めてすぐにドアに勢いよくぶつかる音がしました。


 おねがいです、諦めてどこかに行ってくださいと思いましたが、しばらくドン、ドンとドアを破ろうとする音は続きました。やっと止んだかと思えば、今度はがりがり、がりがりと削るような音がしました。このままでは、きっとドアを破られて食べられてしまうのでしょう。


 諦めるわけにはいかないので、おばさんから貰ったナイフを構えます。震えは止まりませんが、もしかしたら刺したら驚いて逃げてくれるかも知れません。


 ふと、ドアを引っ掻く音が止まりました。それからすぐに、ドスンという音が聞こえました。……化け物がどこかに行ってくれたのでしょうか? それなら今の物が落ちたような音がわかりません。もしかしたら、もっと恐ろしい……


 そこまで考えたとき、ドアノブがガチャリと回りました。心臓が止まるかと思いました。もちろん、慌てていたので鍵なんてかけていません。……後から考えてみれば、私が逃げ込むときに鍵がかかってたらそこで終わりでしたよね。


「ひっ」


 恐怖でひきつった声が出ました。ドアを開けれるような化け物がいたなんて、もう逃げれないんだと思いました。でも、そこにいたのは化け物ではありませんでした。


「まて、落ち着け」


 男の人、でした。ただし、なにも着ていません。手にはさっきまで私を追いかけていた化け物がぶら下がっていました。訳が分かりません。助けてくれた? でもなんで全裸? パニックになりそうでした。そこで止めの一言です。


「パンツをくれないか?」

「きゃぁっ!」


 変質者というものがいると話には聞いていましたが、まさか裸でいきなり人にぱ、ぱんつをくれだなんて思いもしませんでした。反射的に手に持ったものを投げつけてしまいました。……唯一持っている武器をです。


 投げたナイフはそのまま刺さるように飛んでいきましたが、手に持った化け物の死体で防がれました。吹き出た血が顔にかかって、とても恐ろしいです。ああ、きっと私はこれからこの人に乱暴されて、もしかしたら殺されてしまうのではないでしょうか? ナイフを投げつけておいて、優しく扱われるなんて思えません。


「………………」

「っ……」


 何か言っているみたいですがパニックになった私は気が付かず、これから襲い来るであろう事に身を震わせていたのでした。


 これが、あの人と出会った日の思い出です。……やっぱりどう思い返しても勘違いした私に責任はないと思うんです。むしろ責任を取って…………!? な、なんでもないです!

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