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仮題:VRゲー世界に転生  作者: クラスペダ
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廃人荒野に降り立つ(全裸)

 VRゲーなんてジャンルが考えられたのは、実際にVRなんてものがない遠い昔だったらしい。実際当時のゲームのプログラムとかを考えてみれば、固定化されたキャラクターが動くだけでも一般人には訳の分からない膨大な量の情報や処理が行われて、しかもそれを実際に人が好き勝手に動いて、フィードバックされるなんて考えられないような技術しかない時代でもあったわけだから、やはり人の想像力というのは逞しいものだと思う。


 夢幻と言われていたVRというジャンルがなんだったか、教科書に載るような技術の特異点がどうのこうのといった発展により実用化されたのが俺の生まれる前。その頃は労働なんてものを人が必要だからやっていたらしいが、いったいどれだけ酷い世の中だったのだろうか。


 しかしその酷い時代でも培われていた想像力を働かせた結果にしても、現在体験しているこれは酷すぎるのではないだろうか。


 現在わが身に降りかかる現状が発達しすぎた文明の何らかのアクシデントなのか、あるいはその逞しすぎる想像力による夢幻の類なのかはわからないが、あるいは、一番非現実的ではあるが、遠い昔から現代にいたるまでなんやかんやともてはやされた小説のジャンルの一つであるところの、異世界というものであるのだろうか。


 ……だとすれば、もっとほのぼのとした世界をモチーフにしたゲームをやっておけばよかったと思う。いや実際、よほど頭のイカレた社会不適合者でも無ければこんな世界に好き好んで行きたいなどとは思うこともないだろう。


 ゲームは現実でないから、どれだけ現実のように作られた世界であっても現実ではないからこそ楽しいものなのである。いわんやポストアポカリプスのクリーチャーやヒャッハーのいる世界に俺のような文明人を放り込まれても、恐怖や不安でしかドキドキしないんだよぉぉぉ!!!」


 無意識のうちに叫びだしていた。実際これは酷い。何度でも繰り返すがこれは酷い。


 まだレベル制のゲームにキャラクターそのままの性能で放り込まれただとかなら、俺だって叫ぶほど現状に対して不満を持たない筈だ。むしろある程度までなら興奮や期待すら持てるだろう。実際いくつかのゲームでは敬意をこめてはいじんなどと呼ばれる程度にやりこんでいたこともあるし。


 大体その手の娯楽作品なら? かわいい女の子のピンチをぽっと貰った圧倒的な力で? 最悪でも苦戦程度で済む、むしろ現状を考えれば安全どころか楽園にすら思えてくる展開が待ち受けているに違いない。


 ……いったん落ち着いて整理しようか。今やっていた、最悪の場合これから先の人生を過ごすことになるこの世界にはレベルというシステムはない。熟練度こそあったものの、オブラートに包んだ表現で人外製造用クソゲーと言われる程度にはシステムによる強さの乖離は無かった。


 この時点で、この世界の圧倒的な存在にレベル差で蹂躙される危険性が無いと考えるのは甘い。言っては何だが素人どころの騒ぎではない。確かに同じ人間同士の素のスペックならそうかもしれないが、人外の化け物相手に同じことを言えるのかという話である。


 まあ仮に言ったところで聞く耳持たずに襲ってきますがね、ははは(渾身の激ウマギャグ)。


 ……それに加えて装備やらの話である。脳裏に浮かぶという表現が適切であろう現在のバイタルデータやらの存在を鑑みるに、世界観設定であったナノマシンだのなんだのはあるようだし、おそらくだがゲームの時と同じように動けるのだろう。


 NPCもピンキリでプレイヤーと同じようになまらすげぇナノマシンのおかげで「思った通りに」体を動かしてくるものからサイバネなる改造により文字通りのキカイノカラダを手にした連中、低いところではただのひょろい何のサポートもない奴すら居た。


 しかし、いくらそんな世界でゲームとはいえなじむ程度にプレイしてきた俺でも、素手で機関銃の隊列と装甲車や戦車まで抱えた集団に正面からのこのこと突っ込んでいけば勝てるわけは無いのだ。至極当然の話である。


 というわけでだ。まず最低限の話として、最悪クリーチャーがいるかもしれない目の前の廃墟に入り、男としての尊厳を隠し、人としての尊厳を取り戻すべく衣類だけでも手に入れなければならないと思うのは当然の話だよなぁ。


 ……インチキ兵器をよこせとは言わないが、着の身着のままどころか生まれたままの姿で朽ちた町に放置はないわー。正直な話それが一番このふざけた現状が現実だと実感させているあたり、ないわー。

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