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第五十九話

結論から言うと終わっていなかった。


シュンも『やったか?』などと聞いた事を後悔した。

このセリフはやってない時に発するものだ。


『まあだまだだぜえええ!!』


バーティービジットの声が響く。


斬り伏せたバーティービジットの身体は煙を噴きながら蒸発し始めているし、胴体と決別した頭部も同様に蒸発していっている。

ではこの声はどこから?


「エミ、シュン!こっちよ!」


リルが声を上げて指を指す。


その指の先には、先ほどシュンが切り落とした腕、“纒禍呪”があった。

……その腕が指で立ち上がり、切り口からガス状の顔の様なモノが浮かび上がっていた。


『俺ぁまだまだやれるぜえ……どっからでもかかって来いやあ』


流石は上位のアンデッド、中々滅んではくれない様だ……が、弱体化は明らかだ。


「ち、やっぱヤってなかったか」


「と言っても、ここまでくればもうヤったも同然じゃないか?」


毒づくシュンにエミが応える。

確かにそうかもしれないが油断は禁物だ。 こういった手合いはその攻撃力などよりも呪力の大きさが脅威となる。


今のバーティービジットは先ほどまでの呪力欠乏状態と違い、むしろ呪力が膨れ上がっている様にも感じる。

これはつまり、纒禍呪の宿る腕の方が本体だと言えるのかもしれない。

……となると、今蒸発しているバーティービジットは抜け殻の様なものだ。


マリに手伝ってもらいながら埋没から抜け出すシュンは想像以上に自身が消耗している事を感じながらも、隙は見せない様に気を張る。

やはりドーピング効果の反動は大きい様だ。


見ればミラも“滅魔六角陣(リジオンディスパーチ)”の影響なのか膝をついているし、リアも限界なのかうつ伏せに倒れている。


「エミ、こちらも消耗が大きいわ油断しないで」


「心配するなリル、オレに油断はない」


言いながらもリルの指摘に気を引き締め直すエミ。


『さぁーてぇ、仕切り直しといこうじゃねぇかぁ』がありそうなのは


指でよちよちと歩きながら近づいていくバーティービジット。


「ふん、そんな状態で笑わせる……」


虚勢をはるシュン。

気力を振り絞って立ってはいるが、激しい脱力感と薬物の副作用による胃痛や胸焼け、関節痛などでまともに動けない。

マリの様子から回復は期待出来ないし、ヒールポーションの入ったリュックは離れた所に転がっている。


今この場で余力がありそうなのはエミとリルとマリくらいだ。

けれどもマリは退魔効果のある矢は撃ち尽くしてしまったし、リルも魔法は打ち止めに近

い。

だがそんな現状を気取られるわけにはいかない。


「まったくだ、そのざまでオレ達に敵うとでも思っているのか、何度でも倒してやろうじゃないか」


エミが周りの状態に気付いているのかいないのか自信満々で剣先をバーティービジットに向ける。


『ハッハァ、テメエも中々だよなあ。 イイぜえ、やれるもんならなあ』


腕の切り口から噴き出すガス状の顔の様だったものが、どんどん整った形になっていく。


『よぉぅしぃ特別だ、俺様の真の姿を……』


『そのくらいにするであーるよ』


バーティービジットが言い終わる前に別の声が響く。

姿は見えないが、代わりに薄紫の霧が立ち込め始めていた。


『お屋形様がお待ちなのであーる、肉体を滅ぼされた段階でお前さんの負けなのであーるからして潔く引くがよいであーるよ』


『グルの旦那かあ?……けっ、まだ俺ぁ負けてねえぜ、これからがいいとこなんじゃねえか!』


『……お屋形様の命に背くと申すのであーるか?』


グルイーヴィヴァンの声に剣呑な雰囲気が感じられる。


『ちっ……仕方ねえなあ……』


バーティービジットはそう言いつつも、確かに今回は自分の負けだろうという事も理解はしている。


バーティービジットはドラウグルやアゲインガンガーなどとも呼ばれる“生命を与えられた死者(アニメイテッドデッド)だ。


その根幹は纒禍呪である。

“罪を犯した者の禍をその身に宿す”とミラが言っていた様に、“腐った死体(ロッティングコープス)”に過ぎなかったモノが(わざわい)、つまりは呪をその身に宿す事により生命を持つ死体になったのがバーティービジットだ。


その纒禍呪のみになってしまった今の状態は、もはやバーティービジットとは言えない。

ただの呪われた腕だ。

真の姿とやらも単に呪いの大元の姿が顕れるだけである。

しかし、その纒禍呪に自分の意識を移している事から考えればまだバーティービジットは滅んだわけではないので、負けを認めたくはなかったという事だった。


元々おもしろがってシュンにちょっかいをかけに来ただけなのだし、エミという新たな強者にも会えたので満足は出来た。

さらに自分に纒禍呪を与えてくれたボスの名を出されては引かないわけにはいかない。


『けっ、命拾いしやがったなあお前ぇらあ、今回はここで引いてやるよお』


「む、何を勝手な事を言っている! お前はここで息の根を止めてやる!」


「貴様は本当に猪武者だな」


意気込むエミにシュンは嘆息する。


「おい、貴様らの親玉に伝えておけ……俺が助けてやるから大人しく待ってろとな」


『あ? なあに言ってやがんだあ?』


『ふうむ、了解したであーるよ』


バーティービジットとグルイーヴィヴァンの返答は対象的だ。


「あとルーちゃんになんかあったら許さんからな!」


『ああうるせえなあ、もうちっとは大丈夫なんじゃねえかあ?」


「何だと、どういう意味だ!」


だがシュンの声には取り合わず薄紫の霧と共にバーティービジットの姿は消えていってしまった。


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