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第五十五話

倒したブリーデングウルフの素材を回収し、リュックに詰めていく。

一度見ているので、毛皮や肉なども解体しそれも詰めていく。

何せリュックの中にスッポリ納まらないものは収納できない、一部分でもはみ出していると二次元化しないのだ。

最大容量はどのくらいなのだろうか?


今回の戦闘だけで判断するのは早計かもしれないが、皆の実力の程はおおよそ把握できた。

素材の回収をしながら、シュンは戦力分析を始める。


先ずはリーダーのリルことシェリル。

どういった系統の魔法が得意かまでは分からなかったが、相手が飛び掛って来るのとほぼ同時に鼻っ面へ“ウインドカッター”の魔法を的確に食らわせたのは評価できる。

絶対に回避できないタイミングまで待ち、それこそ相手の間合いに敢えて合わせる度胸は意外にすら思える。

一撃必殺とまではいかないものの、十分に敵を弱らせた威力も悪く無い。


次にマリことマリンカ。

武器は二連装のハンドボウガン。 一発撃つと射出部が半回転し、二連射出来る上に中折れ式で矢を装填出来、コッキング操作も不要の優れものだ。 シュンの目から見てもかっこいい。

武器も優れているが、技量も中々のものだった。

跳びすさぶ相手に対し、小柄さを活かして懐に潜り込み腹部への二連射を決め、ほぼ致命傷だ。

これもいい度胸をしている。


その次にミラことミラーナ。

エミを除く四人の中では一番の剣の使い手だった。 武器はレイピアなので、一撃よりも手数勝負だ。

身のこなしを見る限り、無手の格闘術でもソコソコやりそうな印象を受けた。

流石は冒険者をやってるだけあって、退魔術だけでは無いらしい……或いはその一端かもしれない。


それからリアことリアンは、スタッフで応戦していたが……彼女に近接をやらせてはいけない。

いなしていると言うよりは逃げ惑っていた。

まあそもそも治癒術師(ヒーラー)に近接戦闘を要求する事自体が無茶ではある。

そういえばこの前もみんなと一緒に朝練しないで朝食をつくっていた……もう諦めているのかもしれない。

とは言え、奇妙な舞の様な危なっかしい動きながら全て避けてはいたので、意外に回避性能は高いのかもしれない。

まあ、彼女の真骨頂は回復とスキルなのだから怪我さえしなければいい。


最後にエミだが……あーハイハイ強いね。


何よりブリーデングウルフ相手とは言え、全員無傷で切り抜けたと言うのは見事だ。


などという感想はシュン以外は誰も思わないだろう。

ブリーデングウルフは群れだと手強いのだ、普通なら。

最初にいきなりシュンが九頭も仕留めるからこうなっただけである。

全員自分達がこの事態を無傷で乗り越えた事に驚きを隠せない……エミを除いて。


そのエミがシュンの方をジッと見ている。


「何だ、俺の顔に文句でもあるのか」


「……そうだな、今お前なんか不公平な顔をしていなかったか? 不当な差別を受けた気がする」


本当に顔に文句があった様だ……不公平な顔とは一体?


「訳の分からん言いがかりをつけるな」


シュンは不当とは一切思っていなかった。

魔王だったら強いのは当たり前だろう、今は違うとしても。



その後も数度の遭遇戦があり、ギリギリ日が暮れたタイミングで森を一周することが出来た。


「おいリュック、ちょうど一周した事だし一回森から出ても大丈夫か?」


野営をするにしても、わざわざ森の中でやる必要はあるのだろうか。

シュンは虫が……特に蚊が嫌いだった。

昔は魔法で虫除けをしていたが、今はそんな事で貴重な陣紙を使いたくは無い。

森の外なら多少はその害は少なくて済むだろう。


「駄目でヤンス。時間制限は無いでヤンスが、 森から出たらリセットされるでヤンスよ」


「森で寝ろと? 俺はデリケートなんだよ」


「デリカシーのない旦那にデリケート言われても挨拶に困るでヤンス」


「ほう、いい度胸だ……」


「ギャース!!」


冗談で言ってただけなので、お仕置きも軽めに目潰しにしておく。


「シュン君、あんまりリュックさんをイジメちゃ可哀想ですよ」


シュンを(たしな)めるマリ。


「……うちの教育方針なんだよ、愛の鞭ってやつだ」


愛のある目潰しとは斬新だ。


「ちょっとシュン!野営の準備よ、子供だからって遊ばないで」


リルも叱っているが、そこには冗談めかした仲間の気安さがあるとシュンには感じられた。


「ハイハイ、俺が悪うござんした……子供だからね、しょうがないね」


「拗ねると結構可愛いのが腹立ちます……いや、そうじゃなくて普通に腹立ちますわ」


「……まあ、顔立ちだけは……顔だけ……」


何だか含みのあるミラとリアの言い方だが、シュンは気にしない……ふりをする。


「旦那…… キャラ変わってるでヤンスよ?」


「俺は変わってなどいない」


などと緊張感のない野営の準備を進める。

リアとマリが食事の準備、エミ、リル、ミラがテントの準備をしているが、シュンは男なので同じテントに入るわけにはいかない。


「飯は任せる。 俺は自分の寝床の準備をさせて貰う」


そう言ってシュンは落ち葉を集め、木の皮を剥いできた。

その木の皮に葉を貼り付けていくと、簡易の掛け布団が出来上がった。

……が、それを見た彼女らの反応は惨たらしいものだった。


「お前がホームレスじゃないか!」


とはエミの言である。


「これを蓑虫と言うのですわ」


ミラも辛辣だ。


「汚いです」


マリの一言も効く。


「ちょっとこっちに来ないで」


リル……仲間とは?


「……キモい」


リアは鬼だった。


『さすがの俺もそりゃあ引くぜえい』


バーティービジットですら笑いが引きつる。


「なんだお前ら、これはこれで結構使えるんだぞ!」


シュンとて、コレが素晴らしいと思っている訳ではあるはずが無い。

だが寝具などシュンは持って……。


「何い!」


シュンが跳びのき剣を構え、エミも瞬時に気持ちを切り替える。


“キャア!”という叫び声の中、シュンとエミはすぐさま臨戦態勢に入り、考えを巡らす。

一体いつの間に? シュンとエミに気配を気取らせないなど並の事では無いが、それよりも敵の規模、目的の方がこの場では重要だ。 この様な奇襲は想定外だった。


『いよお、会いたかったぜえ……、……ミノムシ?』


「誰がじゃあ!」


“ ヴォーエンスイエーガー”バーティービジットの突然の闖入だった。



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