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第四十八話

「おお、シュン! 待ちかねたぞ!」


ドアをノックして出てきたのは、あからさまにホッとした顔をするエミだった。


この表情でシュンは全てを理解した。


「貴様、まさかまだ何も話してないのか? オマケに俺に説明させようって腹じゃ無いだろうな?」


「うむ、まあその通りだ……頼む、オレの話じゃ信じてもらえないんだ」


仲間の絆とか信頼関係とか女の友情はどうした?


「そうか、まあ魔王の言い分を鵜呑みにする人間などいなかったと言いたいのだな」


「……残念ながら」


どうやら何も話してないという事ではない様だが、シュンの辛辣な指摘にエミは気落ちした様に答える。

これにはシュンも少々拍子抜けだ。

てっきり『仕方が無いだろう』ぐらいの反論があるかと思っていたのだが、よほど堪えてると見える。

これでは皮肉も言い甲斐がない。

ともあれシュンも危惧していた通り、やはり一筋縄では信じてもらえない様だ。


「遅くなってすまない」


シュンはそう声をかけながら、エミと共に皆のいる部屋に入っていく。


「あ、シュン君おかえり」


声をかけてくれたのはマリだけだが、皆の表情を見る限りそれほど険悪な雰囲気でもなさそうだ。


「さて……エミはどこまで話したんだ?」


エミは『信じてもらえない』と言っていた。

つまり『魔王と勇者の関係だ』ぐらいは話したのかもしれない。


「……エミってば、自分は魔王の生まれ変わりで、シュンはその時に戦った勇者だって言うのよ? 説明するって言ってたのに、はぐらかしてばっかり……」


リルは疲れた様な顔をしながら言う。

こういう反応が返ってくる事は当然予測がつく。


「あ、で、でもシュン君の事を“私の勇者様♡”だなんて……ロマンチックじゃないですか」


「おいマリ! オレはそんな事言ってないだろ! なんだその♡は!」


マリのフォローだかなんだか分からない言葉にエミが過剰に反応する。


「埒があかない……あなたからも説明してもらえる?」


リアはもう怒ってはいないのか、今までと変わらない口調でシュンに説明を促す。


「これであなたまで巫山戯た話だった許しませんわ」


と、ミラは釘をさすが、残念ながら同じ話をするしかない。


「ふう……じゃあ話すが、最初に言っておく事がある」


一息入れ。


「今から話す事は真実だ……嘘だと思うのは勝手だが、俺からはそれ以上言う事はない。 途中で余計な文句や苦情が出ても、俺は取り合わずに話を進める……が、まあ最後に質問ぐらいは受け付ける」


そう宣言したシュンは、二千年前の事、封印され最近その封印が解かれ、この町に来てエミ(魔王フューデガルド)と再会し、幽霊狩猟との関係と“シュラート” ルーセリーナの事を話す。

ここまで話すのは、シュンなりのお詫びのつもりだ。


話の最初こそ全員から罵声が飛び交ったが、宣言通りに一切取り合わずに話し続けるシュンに諦めたのか、皆一応は最後まで話を聞いていた。


「……ふぅ……あのさあ、なに? 二人はそう言う宗教にでも興味あるわけ? 個人の嗜好に文句は付けたくないけど、私達を煙に巻こうとするその態度には腹がたつわね」


リルは機嫌が悪い。

結局さいごまで聞いても納得のいく説明は得られなかったからだ。

皆一様に……と思ったが、どうもミラとリアは様相が違う様に感じられる。


「最初にも言ったが、俺から言えることは以上だ」


二人の様子を疑問に思いながらも、シュンは念の為にと、保険代わりに購入しておいた陣紙を取り出す。

もちろん一番安いやつだ。


「最後に、これが証拠になるかわからないが、魔法を披露する。 これは俺のオリジナルだ」


「え?シュン君魔法が使えるんですか?」


「そりゃあ……腐っても元勇者だからな、少しぐらいは……な」


マリの驚きにおどけて返すシュン。


魔法を披露すると言っても、室内で攻撃魔法などの戦闘魔法を使うわけにもいかない。

なので、クラフト用の大人しい魔法を使う事にする。

せっかくなので、さっき収集してきた素材を使って何かしてみようと、蔦を解き頭蓋骨を解放する。


「え?そのスケルトンって……」


「ああ、心配しなくていい、今は俺の下僕兼収納鞄にしてある」


「旦那あ……鞄はやめて下せえ」


リルが目を見張るが、シュンは事も無げに言い放つ。 当然スケルトンの苦情は耳に入らない。


「鞄?」


シュンは逆さまにした頭蓋骨から小さい魔石三つを取り出す。


「え?え?え? ど、どうなってるんですか、今の一体どうやったんですか?」


マリが驚きの声を上げる。


「なんですの?スケルトンから魔石が?」


「いくらなんでも意味不明」


「そ、それで……鞄?」


これには、今まで何か考えている様子だったミラとリアも驚きを隠せない。

リルはシュンが鞄といった意味を察した様だが、驚きは同様だ。


「まあ、便利な奴って事だ」


そう言いながらシュンは陣紙に“延”の一文字を描き、そこに魔石を三つとも乗せる。


『力持つ大地の欠片よ、()びよ、()びて(のべ)て一つとなれ』


シュンの呪文に応え、三つの魔石は一つの延べ棒と化した。

魔石の延べ棒である。

シュンの知る限り、魔石の合一や、延べ棒への加工はかなり高度な技術で、この時代の水準は分からないが、少なくとも部屋のテーブルの上でやれる様なものでは無いはずだ。


これがどの程度証拠として認められるか不明だ。『ふーん、凄いね』で終わってしまうかもしれない。

けれども、これがシュンに示せる現状では精一杯の証拠だ。

何せ、シュンにしか使えない魔法なのだ。 例外でルーセリーナみたいなのもいるが。


「これが俺の漢字魔法だ。 魔法陣の亜種なんだが……」


「シュ、」


シュンが説明を続けようとすると、横槍を入れる声がする。


「シュラインガーダー!!」


リアの叫びに、シュンは顔から火が出るほど恥ずかしい思いをさせられた。


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