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第四十四話

地下遺跡……その様なものの存在はシュンはさっきまで知らなかった。

ヘカルベレントが当たり前の様に言うものだから、てっきり周知のものなのだと思っていたが、果たして案内が必要なものなのか?


「地下遺跡だと……一体何の事だ?」


だがエミは知らない様だ。


ヘカルベレントの言った『地下遺跡で待つ』……実はギルドにはその事は伝えていなかった。

首領に冒険者達を会わせたくなかったからだ。

もっとも、結果的には大事になって国家規模の話になってしまったので、軍隊なんかがやってきたら向こうの方から出向いて来そうな気もするが。


マリンカやリアンも地下遺跡に関しては何も言及する事はなかったが、シュンが何か知っていると思われただけかもしれない。

エミだけが知らないと言うのは不自然なので、多分みんなも知らないのだろう。


「おい骨、俺は貴様を許さないと言ったな……その言葉に嘘は無い、だがチャンスをやろう」


シェリル達がこちらに向かってくる。


「貴様が人質に取ろうとしたのは俺の仲間だ、彼女らが案内は必要だと言えば貴様のその呪われた命……多少は長らえさせてやる」


「へへ、旦那……冗談キツイですぜ、退魔師(エクソシスト)がいるじゃねえですかい」


アンデッドにとって退魔師(エクソシスト)は天敵であるし、退魔師(エクソシスト)にとってアンデッドは殲滅対象なのだ。


その退魔師のミラーナが『三大アンデッド、ゾンビ・スケルトン・あと一つは?』に入るほどの有名アンデッドを見逃す道理はない。


とは言えミラーナも冒険者だ。

目的の為には信念も捩じ曲げる覚悟くらいはあるかもしれない……とシュンは思わないでもないが、そういうタイプではないような気もしないでは無い。


「リル……ついてくるなと言っただろう」


エミはそう言いつつも、特に非難する感じでも無い。

シェリルの性格はエミも良く知るものなので、十中八九こうなる事を予想していた。


元々シェリル達を置いて行ったのは、シュンからの質問があるだろうと察していたので、その内容を聞かれない為だった。

一言付いてくるなと言えば、少なくとも話を聞かれない程度には距離が取れるだろうという目論見だ。


「……こんな危険な森に、シュンみたいな得体の知れない人と二人で入っていくあなたを放ってはおけないわ」


得体の知れないと言うのは全くもってその通りだろう。

シュンも、そう言われていい気分のするものでは無いが、自覚ぐらいはある。


「そうですよエミ、私達は仲間なんですからいつも一緒に居ないとダメです」


マリンカの言葉に、自分の都合で別行動をとった事を申し訳なく思うエミ。

仲間の身を案じての行動ではなかった為……無論全くそのつもりが無かったというわけでは無い。 危険だと思ったのは本当だ。

しかし、やはり仲間を蔑ろにする行為だったと反省する。


「そうかもしれないな、すまなかった……むしろ勝手な行動をとったのはオレの方だったようだ」


「分かればよろしいんですのよ」


「……無事なら許す」


エミ、シェリル、マリンカ、ミラーナ、リアンがそれぞれ互いを見つめ合いながら今一度仲間の大切さを感じ合う。


そう、敵が強大であればこそ、なおの事仲間と力を合わせる事が重要なのだ。

今までもそうやってここまで闘い生き抜いてきたのだ。 そしてそれはこれからもそうなのだ。

誰か一人が危機の時には皆がそれを助け、皆が危機の時には一人が奮闘する……全員同じ気持ちである。 それでこそ仲間なのだ。


「仲間の絆を確認し合っている最中にすまないが、俺から話がある」


なかなか会話に入りにくいシュンだったが、放っておけばいつまでも見つめ合いの百合百合空間が続いていきそうだったので、強引に打ち切らせてもらう。


「なんですの?今みんなとの美しい友情に浸っているというのに……って、ちょっとあなた!その手に持っている髑髏(しゃれこうべ)は!!」


喋らなければただの頭蓋骨にしか見えないが、さすがは退魔師、シュンを非難しながらも、ただの頭蓋骨ではない事に気付いたようだ。

ただ、シュンを見る目が完全に部外者を見る目になっていたのは気になるところだったが。


「ああ、お察しの通り幽霊狩猟の一味のスケルトンだ」


シュンはここまでの経緯(いきさつ)を掻い摘んで話す。

勿論、アンデッドになった冒険者達の罪も含めて。

ちなみにハルはいつの間にか姿をくらましている。 恐らくシェリル達が現れた時点だろう。


「そう……このスケルトンが他のみんなを……」


愕然と呟やくシェリル。

いかに妖精に対して非道な振る舞いをしたとは言え、一応は顔見知りだ。

その死を悼むぐらいのことはする。


それにしても、人の法や妖精に罰せられるならばともかく、アンデッドに襲われる謂れなどないはずだ、その上アンデッドになって浄化されてしまうなんて……。

と考えるシェリルは、その冒険者達がエミに邪まな企みを抱いたが故にこのスケルトンを呼び寄せてしまったなどとは知る由もない。

もっともそれは他の皆も同じだが。


「ではその遺跡に行くのに、この呪われた髑髏が必要だと言うんですのね」


ミラーナの口調は平静だが、表情からは不満が見て取れる。

そもそもこの森の地下に遺跡があるなど初耳だった。

今までだって誰からもそんな話を聞いた事が無い。 このスケルトンが助かるために嘘をついているのかとも思ったが、その話はマリンカやリアンも本当だと言っていたので信じるしかない。


スケルトンの方も、退魔師に何を言っても逆効果だと悟っているので終始無口だ。

それが功を奏したか、どうやらこの場で消滅させられる事はなさそうだとスケルトンは安心し、とりあえずこの場さえ凌げれば後は成るようになるだろうと楽観視する。


「いやいやいや、待ってくださいよ。幽霊狩猟退治は国の仕事になったじゃないですか」


遺跡に乗り込んで幽霊狩猟を倒そうという前提の話にマリンカは慌てる。


「そ、そうよ!ミラ、あなた敵地に乗り込む気?」


軍隊が必要なレベルの相手に、自分達が太刀打ち出来るわけがないと、シェリルも慌ててミラーナの考えを確認する。


「アンデッドが手ぐすね引いて待ち構えているんですのよ?ここで逃げるような者は退魔師じゃありませんわ」


「……いや、別にそんなこともないでしょ」


強気というか頑固というか……ミラーナの言葉にリアンが小さくツッコミを入れる。

アンデッド相手にスイッチが入ってしまうと、ミラーナはいつもこうなるのだ。


しかし今回は相手が悪すぎる。

パーティーの総力を挙げてでもミラーナを止めなければならない。

いくらミラーナの退魔の力を信じてはいても個人の力には限界がある。


頼みのリアンのスキルも効かないのだから、勝算は無いとしかシェリルには思えない。

それはマリンカやリアンも一緒だった。


さらにはシュンの存在だ。

前回の幽霊猟師であるヘカルベレントを撃退し、今回も冒険者十一人をアンデッド化させるほどの強力なスケルトンを単身で無力化するなど、およそ普通の子供にできることでは無い。

ハッキリ言って異常だ。


(エミの事は信じてるけど……このシュンの事だけはどうしても不安だわ)


これはシェリルだけでなくマリンカ、リアン、ミラーナも同じく思っている事だった。


「まあ、決めるのは一度帰ってから話し合おう。まずはギルドに報告だ……それでいいか?リル」


エミのこの提案にシェリルは是非も無い。

報告は当然しなければならないし、エミはシュンとの事を帰ったら説明すると言っていた。


「そうね、一度落ち着きたいわ」


皆も異存は無いようだった。 ただ一人を除いて。


「俺は少しこの森で準備したい事がある。 先に戻っていてくれ、報告は任せる」


シュンだった。


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