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第三十一話

ギルドに入ると、報告カウンターや買い取りカウンターは混んでいたが、受付カウンターは空いている。

時間的にこれから依頼を受ける者というのは少ないのだろう。


空いたカウンターに行きパーティーへの登録をする。 担当するのはメリティカだ。


「あら、シュン君昨日はご苦労様」


幽霊狩猟の情報についての事だろう、労いの声をかけてくる。

正確には幽霊狩猟そのものでは無く、その先触れであるブリーデングウルフの素材を売りに来ただけなのだが。


「えーっと、それじゃあパーティー登録ね。 冒険者カードを見せてくれる?」


シュンはヒヤリとする。

エミから聞いた登録料や税金や保証金の事が念頭にあった為だ。


まさかカードからそれらが分かるという事はないだろうか? 誤魔化すつもりは無いのだが、今は持ち合わせが心許ない。

何より、エミの前でかっこ悪い。

『やーい、この脱税勇者〜』とか言われたら間違いなくぶん殴るだろう。


「よくいるのよね、低レベルの冒険者が高レベルパーティーに頼ってレベル上げをする人達が」


なるほど、そう言う事かとシュンはホッとする。

確かにそんな事をしてステータスだけ上げても、真っ当な経験がなければ決して強くはなれまい。

レベルと実力を取り違えると大怪我や命に関わる。

それを未然に防ごうという訳だなと思ったところで、シュンは自分のレベルを思い出す。

確かレベルは二だったはずだ。


エミ達のパーティーは幽霊狩猟退治を受けるくらいだから二十前後はあるのだろう。

およそ十倍近いレベル差では、完全に寄生扱いされてしまう。


「なあエミ」


シュンはエミにだけ聞こえる様な小声で話しかける。


「どうした」


エミも小声で答える。


「俺、昨日までレベル二だったんだが」


ブリーデングウルフ九体に今日のブレシングシェルもモンスターだ。

それらを倒して、果たしてどれだけレベルが上がったのか?


ゲームなどでは、低レベルの時に高レベルモンスターを倒せばかなりのレベルアップが望めるが、この世界ではどうなのだろうか。


「そんなわけ無いだろ、オレが二レベルの奴に負けるか」


「まあそうなんだろうけどよ」


「何コソコソ話してんの?」


シェリルがこちらを窺ってくるので話を中断する。


「いや、何でも無い」


シュンはそう言うほか無く、冒険者カードを提出し、設定した呪文を唱える。

こんな事なら、一度ぐらい確認しておくべきだったと後悔しながら。


「はい、じゃあ目せてもらうわね」


メリティカがカードを凝視して硬直する。


「シュン君は……十二歳だったわよね」


「ええ、そうですけど」


「……まあ……ええ……はい確認しました。 ではパーティー登録に名前を追加しておきます」


何だろうか、歯切れの悪い感じだが、問題は無い様で安心したシュンは、返してもらったカードを自分でも確認すると、レベルが十二になっていた。


エミ達も年齢の割にはレベルは高い。

エミとミラーナがレベル十九、シェリル、リアン、マリンカが十八だ。

けれどもこれは一年半、モンスターを倒しまくって稼いだレベルだ。

シュンは昨日一日で十レベルも上げた事になる。


ブリーデングウルフは適正レベルが二十のモンスターだ。

基本的にはシュンの思った通り、倒したモンスターとのレベル差があればあるほどステータスの上昇値は変わる。


同レベルであれば、十体も倒せば一レベルぐらいは上がる。

一体倒すごとにステータスが二は上がるという事だ。


これが格上となると格段に変わってくる。

格上というのは、レベル差五割増しの相手だ。

格上相手なら一体倒せば一レベルは上がる。

レベル一〇ならレベル十五以上が格上となるから、レベルが上がれば上がるほど格上とのレベル差は広がり、まず倒す事は不可能となっていく。


通常の目安として、自分のレベルプラス五辺りが現実的に戦えるレベルだろう。

レベル二十だとすると格上はレベル三十となるのでまず勝てない相手になる。

ただしこれは一人で戦った場合の話だ。


パーティーで戦う事により、格上とも互角以上に戦える事もある。

もちろんパーティーの連携次第だが、一人で戦うよりは幅が広がるのは間違いないし、リスクの軽減が大きい。


ただし、パーティーでモンスターを倒すと、吸収されるモンスターの魔力は分散されるので、ステータスも上がりにくい。

パーティーで望む場合は、格上との対戦がレベルアップの近道になるというわけだ。


なお、この場合は倒したモンスターとの物理的距離が吸収する魔力に関係してくるが、魔法を使って倒した場合、つまりは魔力を敵モンスターにぶつけた場合、それによる魔力の連絡路ができ、それを通じて魔力を吸収する。


与えたダメージに比例して大きくなる為、魔法一撃で倒せばそのモンスターの魔力の十割を吸収する。

物理ダメージによって倒した場合は、物理的距離によって吸収率が変動するので、よほど距離が離れていない限り、何もしなくても多少は魔力が吸収される。

寄生プレイというやつだ。


シュンの場合で言えば、すべて一人で倒したが、ブリーデングウルフの時はルーセリーナが近くにいた為、魔力は分散された。

前例が無い為確認はされていないが、十倍ものレベル差がある相手を倒せば、一体倒すだけでレベルは五ぐらいは上がるだろう。


一体目でレベル七まで上がり、二体目でレベル差は三倍弱となり、およそ三レベルの上昇でレベル十。

三体目でレベル差二倍で、二上がるとしてレベル十二、四体目でレベル差一・五強となり、レベルは十三、五体目が一・五差でレベル十四、残りは格上にならず四体分の魔力。

まあ、レベルは上なので一レベルは上がるとして、レベル十五、と本来はこうなるのだが、ルーセリーナ分を差し引きレベル十二と言うわけだ。


もっともこれはギルドの培った経験上の概算であり、本当にこの様な事になっているのかは不明ではあるし、誤差や、そうならない場合もあるのだが、冒険者達は皆これを基準に自分のレベリングをしている。

無論、そういうのを気にせずに冒険をする者もいる事はいる。


「何だ、普通に通ったじゃないか」


エミはシュンの言ったレベルが、つまらない冗談を言っているのだと思い少々あきれ顔だ。


シュンはさらにステータスを確認してみる。


名前: シュン・ゴドー


出身地: ユラの里


年齢: 13歳


レベル: 12


筋力: 35


知力: 78


体力: 46


敏捷性:83


魔力: 1


魔力は一のままだった。

って言うか十三歳になっている……


今日誕生日だったのだろうか? 不思議に思うシュンだが、そうなのだろうと思うしかない。

それよりもこれだけ数値が上がっているのに、体に変化を感じない事に違和感を覚える。


それは、シュンに全盛期の記憶が残っているからだった。 その頃に比べれば多少の数値の変動など誤差に等しいものだった。

もともと、ステータスの数字などそれほど劇的な差ではない。

筋力七が五十になろうが、小学生が中学生になった様なものだ。

もっとも、その多少の差が生死に直結するのが冒険者という商売なのだから、たとえ微々たる差でもでも少ないよりは多いに越した事はないのだ。


「よし、じゃあ無事にシュンもパーティーの一員になった事だしうちに戻ってお祝いでもしよう」


「俺はさっきお前のメシを食ったばっかだぞ」


「いいじゃないシュン、別に食べなくたって今後の話とかしましょう」


「いやすまないが、今日はもう宿に戻って予約をしなさなきゃいけない」


本当は明日でもいいのだろうが、ルーセリーナが帰ってきているとしたら報告もしなきゃいけないし、あまり待たせるのも悪い。

それに小剣の鞘も買いたい。 今は布を巻いているだけなのだ。


「宿なんか明日でも大丈夫だよ」


シェリルにはバレていた。


「何ならうちに泊まればいいだろう」


「馬鹿言うな」


「エ、エ、何言ってるの?」


ギルド内で交わすこの会話を聞いて、殺気を放つ者が何人もいる事にシュンは気付かなかった。


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