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第三十話

シェリルはエミが殺されてしまうのじゃないかと心配だった。

手合わせと言っても、エミが稽古をつける格好になって『どうだ、見所があるだろう』的な感じでこちらの説得にかかってくると思っていたのだが、とんでもなかった。


ガチだった。 見ているこっちにはとても稽古だ手合わせだには見えない迫力があった……あんまりよく見えなかったけど。


一体どこであんな男の子見つけてきたのだろう。

エミとシェリルは同郷の幼馴染だ。 ずっと一緒にいたのに、気付かなかった。

これだけ仲が良いのだからそれなりの時間を重ねてきたのだろう。


シェリルの感じた嫉妬の様な感情は果たしてどっちに対するものだろうか、本人にも分からなかった。


ミラーナもマリンカもリアンも二人の演舞に見惚れていた。

目で追うのが困難であった為、何やら踊っている様にしか見なかった。

エミは魔法剣士だ。 三人の認識ではどちらかと言えば魔法よりのタイプだと思っていたのだが、これほどの鋭い剣を使う事など見たことが無かった。

そのエミの剣術もさる事ながら、それを子供扱いするシュンの技量は年下にはあり得ないものだと思った。


自分達のパーティーに男を入れるというのに抵抗はもちろんあるが、整った中性的な幼い顔立ちのシュンであればそれほど気にしなくても良い様な気もしてきていた。


エミは満足していた。

どうやら皆がシュンの実力に納得してくれた様だ。

かつて自分を倒した男のことを認めてもらえた様で嬉しいという感情が湧いてくる。

けれど、アレ? とも思った。

確かに自分の前世は魔王で、シュンとは憎み合い殺し合いながらも、ある種の共感の様なものを持っていたが 、今感じているものは果たしてそう言った類のものなのだろうかと。


今の自分は女だ。

五年前までは確かに女として過ごしてきたし、その時の記憶はしっかりとある。

一体自分はどういう目でシュンを見ているのだろうか……自分と向き合うのが怖かった。


シュンは基本的にはソロ扱いだ。

ルーセリーナはカードを作っていない為に、冒険者ではないからだ。

だから、誰とパーティーを組もうが問題は無いはずなのだが、いないから仕方ないとは言え、ルーセリーナに話を通さず勝手にパーティーを組んでしまった事に罪悪感は感じている。


しかも、魔王を含む全員女の子のパーティーだ。

変な下心を疑われてしまいそうだし、何より魔王がメンバーと言うのがいかにも不味い。

ただ、エミは魔王と言うよりは魔王の記憶を持ってるだけなんだから、魔王本人では無い。

魔王じゃ無いならわざわざ魔王とパーティーを組んだなどと言う必要は無いかもしれない。

内緒にしておくのが吉だろう。


もっとも、シュンとしては幽霊狩猟退治の為の臨時パーティーだと思っているので、それほど気にする必要も無い。


一番気にするところは、やはり言葉遣いだろう。

エミと他の人とを分けて話すのは正直面倒くさい、かと言って今更エミに敬語で話しかけるつもりなど毛頭無い。

となれば……


「パーティーに入れでもらっておいてなんだが……」


入れてもらったという体にしておく。


「他のみんなにもこの口調で話しかけさせてもらうが、宜しいか?」


エミに対するよりは、若干柔らかい口調にする。

普通はこんな感じなのだ。

ルーセリーナに優しいのと、エミに厳しいだけなのだ。


「仲間感が出るだろう?」


肩を竦め、おどけた風に言い訳をする。


「その方がこっちも気兼ねしないわ」


シェリルがいうならパーティーの総意と考えて問題無いだろう。


「これからよろしくお願いしますわ」


「シュン凄いね、期待しちゃいますよー」


「大所帯になった」


ミラーナ、マリンカ、もそれぞれ歓迎している様だ……リアンはよく分からないが、嫌がっては無い様だ。 きっと素直じゃないのだろう。


「アレ? でもさっき依頼受けちゃったじゃん」


マリンカが思い出す、というほどでもないことを言い出す。

もっと前に言うべきではないだろうか。


「ええ! ではどうするのです? 今回シュンはお留守番ですの?」


と、ミラーナはあまりにも無体な事を言う。


「……今までの話は無かった事にしてくれ、 短い付き合いだったな」


お前ら俺を馬鹿にしてんのか? 下らん茶番に付き合わせおって、とシュンはかなりイラっときながら、立ち去ろうとする。


「普通にパーティー登録すればいいだけ」


リアンが最初に言うべき事を言う。

って言うか今の会話は一体何なんだ、とシュンが一瞬対応に困っていると、


「シュン、からかわれたんだよ」


と、エミがクックと笑いながら教える。


シュンは『てめえら睨めてんのか!』とはならなかった。

むしろ、『ほほう、こいつら面白えじゃねえか』と、思うくらいだった。


「じゃあ早速そうしてくるわ、エミ、シュン、ギルドまで一緒に来て」


シェリルはそう言い、二人を連れ立ってギルドに向かう。

もう結構遅い時間になってきている。

川に潜って剣を作り、エミに会って手合わせして、気付けば日暮れ時。

時間が経つのが早いのか遅いのか。


さらにこれからギルドへ向かう。

そう言えばルーセリーナはもう戻ってきているだろうか? あ、宿は今晩までしか借りてないな。

と、丁度その考えに及んだタイミングで、心でも読んだのかエミが聞いてくる。


「ところでシュンはどこに住んでるんだ?」


「宿を借りている」


「えー、どこの?」


無邪気に聞いてくるシェリル。 シュンが宿の名を言うと


「あー、あそこご飯美味しいよね。 エミのとどっちが美味しかった?」


シェリルの言葉にモゾモゾするエミ。


気持ち悪いな、と思いつつ素直な感想を言う。


「毒が入っていなかったのが意外だったな」


「おいコラどういう意味だ」


同時にエミがガラ悪く反応を返す。


「どうもこうも、貴様の飯って俺にとって毒じゃねえのか?」


「それは偏見だ」


「一体何の話? 」


などと、もういい加減にしろと言うイチャイチャ?話をしていると、ギルドはもうすぐそこだった。


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