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第十四話

ソロンの森を抜け小半日、バージの街に着く。


簡素ではあるが、それなりの高さの石壁が街を囲んでいる。


これだけの広さの街を囲っているのだから立派な事だ。


逆に言えばそれだけの危険があるという事にもなるのだが、有ろうが無かろうが、安心安全に生活していくには必要なモノだろう。


「俺は受付に並んで来る、リーリスも来てくれ。」


ルースが代表で入場受付に行くが、リーリスも呼びつけた。


結構並んでいるみたいだから一人じゃ暇なのかな。


そんな事を考えていたいたら、ヴォルがそれを読んだかのように


「入場制限があるからな、一人につき四人までだ。」


と説明する。


どうやら街に入るための札が必要で、それは一人に対して四枚までしか発行されず、現在シュン達は七人なので二人必要になる。


多くの街がそうらしく、ルース達が四人だったのも一人並べば良いからだったというのも理由の一つらしい。


つまり、ルースが受付に並べば済む話らしい……ルースよ。


「あの、別にみんなで並んでも良いんじゃないんですか?」


シュンは当たり前の事を聞いたつもりだったが、パティナが『え、嫌ですけど』みたいな顔をし、ヴォルも『ふ、意味が分からないな』みたいな顔になる。


いや何でそんな顔をする。


「みんなで並んでも人数が増えて邪魔になるだけですから。」


パティナは言うが、さっきの表情でそんな正論は通じないだろう。


え、このパーティー仲わるいの?


そんな事は無いだろうが、まあ役割分担という事か。


リーダーのルースが『お前が並べ』とか言ったら感じ悪いしな、人のいいルースの事だからいつも率先して並んでいるのだろう……リーリス頑張れ。


見渡してみれば、確かに思い思いのところに並んでいる人たちの連れと思しき人たちがいる。


「さすがルース様、皆の為に自らを犠牲にする精神、まさに真の英雄です。」


真の英雄のハードルが低い。


「こりゃ! 真の英雄はシュン兄ちゃんに決まっとるじゃろがい!」


ルーセリーナが変な言葉使い出した。


「昔はそうだったのかもしれませんけど、時代は常に新しい英雄を必要としてるんです!」


言い合いが始まったので、放置する。


「ところでルーちゃんとレイテスさんは冒険者カードとか作ってないと思うんですけど、街に入るのに問題無いんですか。」


「ああ、受付をした者が身元引受け人になるからな。」


「私達も変な人を入れたら冒険者出来なくなっちゃいますし。」


だから危険人物はそうは街に入れないって事か。


もっとも身元のしっかりした危険人物はだっているだろうが、そんな事を言ったらキリが無い。


街には人が必要なのだから、最低限のセキュリティーという事か。


(そう言えば最初は俺もこの街で冒険者カードを作るって話だったんだもんな。)


昔は逆にこんなセキュリティーなど無かった。


無意味だったからだ。


魔族は大抵空を飛べるし、空間移動までする奴がいるし、城壁ごとぶっ壊す奴までいた。


石壁だろうと鉄壁だろうとお構い無しだ。


何なら人壁の方が持ったぐらいだった。


……っと、また昔の仲間を思い出しそうになった。


シュンはかぶりを振って考えを追い出す。


しばらくして二人が戻ってくる。


「みんなー、お待たせ。」


リーリスがシュンとルーセリーナ、レイテスに木札を手渡す。


入場手形だ。


「シュン、街に入ったら昨日の報酬を払いたいから、買取も兼ねて一緒にギルドまで行こう。」


「分かりました、お願いします。」


昨日のインビジブルレプテルの他に倒したモンスターは、やはりナニモノかのエサになっていたが、魔晶核だけは残っていた。


ヴォルの魔晶核の魔力を探知する“コンクリーションディテクター”という魔法で幾つかは回収出来た。


当座の資金には十分じゃないか、という事だった。


シュンの冒険者カードはもう作ってあるので、その分は費用がかからないのでルーセリーナのカードを作っても大丈夫だろうと、皮算用をする。


もっとも、自分で作れるのに有料で作ってもらうのも変な話だから、慌てて今日作らなくても、後日里にでも戻って作るのもいいだろう。


特殊な素材を使うので、材料は里に置いてあるのだ。


ちなみにレイテスに作らなかったのは、甘やかさない為みたいだ。


冒険者になるのなら、ちゃんと自分の力でやっていきなさいと言う事だ。


もちろん仲間の力を借りるのも自分の力のうちだ。


ギルドまで向かう道すがら、様々なものが目に飛び込んでくる。


食材店や、飲食店、武器道具屋に魔法屋とかいうのもある。


(え、魔法って売ってるんだ。)


何よりも目を引いたのが、人々の活気と笑顔である。


平和な時代なんだなと、シュンはホッコリした気分になる。


やがて、割と大きな建物の前で立ち止まる。


「着いたぞシュン、ここがこの街の冒険者ギルドだ。」


「あんまり混んでないんですね。」


シュンは中に入りながらポツリとこぼす。


もっとこう、雑多な顔振れが所狭しとガヤガヤやっていそうなイメージを持っていた。


「今は時間がまだ早い。」


ヴォルはそう言うが、もう昼だ。


「みんなお昼ゴハンですか?」


「そう言う意味じゃないわ、今みんな仕事中よ。」


「朝と夕方は混みあいます。」


シュンの疑問にリーリスとパティナが答える。


もちろんシュンも間違いではない。


ギルドにも食堂はあったがあまり評判が良くないのだ。


ほとんどは街の食堂で昼をすませる。


「普通は朝に依頼を受けて、夕方に報告に戻るんだ。」


これは日帰りの場合だが、数日ががりのクエストでも朝に依頼を受けるのが通常だし、


わざわざ早い時間に達成報告に来るものも少ない。


大抵は街の門限ギリギリまで粘るか、早く戻って来てから一休みして報告に来る者が多いのだ。


「じゃあ、ちょっと買い取りカウンターに行ってくるわ。」


リーリスはワクワクしているようだ。


「あ、リーリスさん、私も行きます。」


「俺も行こう。」


パティナとヴォル興味深々だ。


余程いい収入が見込めるのだろう……受付はルース一人に任せるのに。


そのルースはシュン達を空いている待合席に座らせ、自分は立って待つ。


紳士だ。


レイテスの目が輝きを増す。


「時間がかかるかもしれないから、シュンにざっと説明しておく。」


クエストを受ける時は掲示板に貼られた依頼書を持ってクエストカウンターに行くか、クエストカウンターに直接行き、カードを提示して自分に合ったクエストを見繕ってもらう方法があるらしい。


前者はカウンターでそのクエスト資格があるかの確認の為ステータスとスキルの提示を要求される。


ステータスが十分、つまりレベルが足りていればスキルの提示は拒否できる。


レベルが足りない場合にスキル申告をして資格を審査してもらうシステムのようだ。


後者の場合は、あくまでレベルのみの判断でクエストが提示されるが、探す為の時間がかかってしまうし、もちろん気に入らなければ断る事もできる。


クエストが完了したら報告カウンターに行き、証拠を提示して終了証をもらい、これが報奨金の引換券となるのだが、あまり高額の依頼だと後日になる事もある。


また、失敗した時もキチンと報告カウンターに届けなければならないと念を押された。


「別に失敗する事は恥ずかしい事じゃないからな。」


今のうちからシュン達にプレッシャーがかからないように気を使っているのだ。


「ただ、依頼っていうのは、困っている人達がいるって事だから軽い気持ちで受けてはいけない、どんな些細なものでも依頼人にとっては大事な事なんだからな。」


身の丈にあった依頼を受けるべきだと釘をさす。


「だから、最初はカウンターで選んでもらった方がいいだろう。」


ルース先生。


「それとルーセリーナ……さんもカードを作りますか?」


「シュン兄ちゃんとお揃いがいいのじゃ。」


「でも、ルーセリーナさんはギルドの重鎮みたいですからちょっと騒ぎになるかもしれませんね。」


そう言えばルーセリーナは名誉顧問とかだった。


「何か問題でもあるんじゃろうか。」


「問題というか……まともに依頼をもらえるかどうかの心配はありますね。」


ギルド初期の名誉顧問で世界最高の魔導士で最高齢エルフ。


これらを隠せないとなれば確かにそうかも知れない。


「多少デメリットはありますが、シュンが依頼を受けてルーセリーナさんはシュンの被保護者という形にした方が面倒はないかも知れません。」


「お兄ちゃんが保護者……」


なんか嬉しそうなルーセリーナ。


「デメリットとして、パーティー限定依頼が受けられない、クエスト保険には入れないとかがあるけど、一緒にクエストに出るのは大丈夫だし、ルーセリーナさんなら余程危険なクエストでもない限り保険に入る必要はないだろう。」


その他、宿もシュンのカードでギルド提携の格安宿に泊まれるし、買い物もギルド提携店は結構あるから、カードの提示で足元を見られる事もないとか、街の入退場の門限を考慮しなければいけないとか、冒険者は身体が資本だからちゃんと食事は取る事とか、身なりが汚いと侮られやすいから、洗濯と入浴は多少値が張ってもなるべくやるべきだとか……


お母さんみたいである。


ルース自身も子供に指導している気分になってきていた。

今回も拙著を読んで頂きありがとうございます。


少しでも楽しんでもらえたら幸いです。

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