表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/19

米坂の画廊(c)

どうやらとびらの向こう側のめんに、

棒状の金属がぶつかり合って鳴る仕組みのドアベルが取りつけてあったらしい。


りんごんと大きな音で鳴るドアベルの音を聞きながら、ぼくは違和感に気がついた。

ひとつひとつの音の高さが似通っていて、ふつうのドアベルよりも音の幅がせまいように感じたのだ。


さすがにドアベルが用意されているとは思っていなかったようで、白河くんがおどろいて身を引いた。

そこへ、すぐに受付のお姉さんが駆けつけてきた。


「お客さま、どうかされましたか? そちらは立ち入り禁止となっております」

「すみません、お手洗いに行こうと思ったら、まちがえちゃって……」


白河くんがとっさに言いわけをした。

そのあととつぜん、「あ!」と大きな声をあげた。


「お姉さんの顔、ようやく思い出した! 前にペットショップで働いていませんでした?」


言われてお姉さんはじっと白河くんのことを見ると、思い出したように笑顔を作った。


「ああ、あのときの……! たしか、腰を抜かしてしまった女性をむかえにいらした……」


……それ、どんなシチュエーションなんだろ。


しかし、白河くんのひとみが一瞬だけ、きらりと光った。

どうやらお姉さんの気をそらす糸口を見いだしたようだった。


「やっぱり! あっれー、すごい偶然だなー! お姉さん、転職したんですか?」

「私はいろんな仕事をしてみたくて、あちこちふらふらしているんです。

あ、でもないしょですよ? 職場が長続きしないって、大きなマイナスポイントですから」

「そんなこと言ったって、お姉さんみたいな美人ならどこでもやとってもらえるだろー?」


白河くんはここぞとばかりに、ぐいぐいとお姉さんに話しかけていく。

知らない人とも平気で話を広げられるのは、白河くんのすごいところのひとつだ。


ぼくはというと、その会話にはまったく入りこめないし、このまま立っているのもなんだか決まりがわるい。

ふたりの会話が終わるまで、ぼくは休憩用の椅子に座って待つことにした。


あの三つ編みの女の子は、この騒動にもまったく動じずに、黙々(もくもく)と本を読み続けていた。

しかし、ぼくが女の子のとなりに腰をおろすと、女の子はまるでひとりごとのように、ぼそりとつぶやいた。


「……どうして、本邸へ行こうと?」


ずばり聞かれて、ぼくはとまどった。

女の子は続ける。


「だれにも言わないから、理由を教えて」


ぼくは女の子を見た。

女の子も今度はきちんと顔をあげると、ぼくと目を合わせて、うすくほほえんだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ