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第50輪「大飛燕草」

 酒場の扉を開けばアルコールの匂いが鼻を突く。中を見渡すと、既にレジスタンスのメンバーや、貴族の面々、ヴィンスにユアンまでが揃っていた。


「主役のご登場かな」


「主役は貴方でしょう。ヴィンス」


 クツクツと喉で笑う彼に、ふわりと笑みを象る。猛々しい獣の如く瞳を研ぎ澄ませた面々は、ベルナールの言葉を待っていた。


「さてと、ついにこの日がやってきた。俺達は城を囲み一気に責め立てる。作戦に関しては耳タコだろうから心得を一つ。

 『なるべく殺すな。でも、お前達が生き抜くことが優先だ』

 王を落とせば戦は終わる。背中は預けたぞ」


 密輸した武器を掲げ、咆哮が上がる。士気は十分だ。


「貴族殿、武器の調達感謝するよ。

 彼らには此処で待ってもらう。俺達が失敗したら無理矢理協力させられた、とでも言っておけ。ただし、成功した暁には足で使うから、そこんとこよろしくね」


 ま、失敗なんてしないけど。と続き笑いが起こる。戦直前だというのに、おかしな雰囲気だ。思わず口元を緩める私も、緊張を通り越して高揚を覚えていた。


「準備はいいかな。それじゃあ各自、城を取り囲んでおけ。決行は明日の早朝。日の出と共に」


 ベルナールの声を肯定する声が集約する。暫くすると一人、また一人と店を退出していった。


 *


「さてと、それじゃあ話してもらうよ」


「ベルナールの信用は未だに勝ち取れていないのね。悲しいわ」


「そんなことないさ。皆の信用を勝ち得たからこそ俺は警戒してるんだよ」


「そう」


 彼の声に曖昧に笑み、薄暗い酒場を見渡す。貴族は二階で一夜を明かすらしい。〝汚い〟と溜息を零す面々に、ロビンの怒号が飛んだのは二時間ほど前の話だ。

 彼らが寝静まったのを見計らって私達は店に降りてきた。


 フィン、ヴィンス、ユアンがカウンターに座り、ロビンが忙しなくグラスを磨いている。ベルナールと私はテーブル席に座り、怪しい笑みを交わし合っていた。


「新しいシュプギーの手紙は、皆、読んだわよね」


「勿論。君が隠していた3つの蕾に1本の薔薇の意味、教えてくれる?」


「私が隠していることに気付いてたのね」


「気付かれてないと思ってたんだ。まさか花言葉だったなんてねぇ。教養も何もない俺達には分からなかったよ」


「あれの花言葉は〝あのことは永遠に秘密〟」


「君が変わったことに関係あるのかな?」


「ええ。でも疑わないで聞いて欲しいの。私は貴方達を騙すつもりも、いなすつもりもないわ。だからシュプギーとの約束を破るの」


 私の言葉に静かに耳を傾けるシュプギー。これから何をしようとしているか分からないわけではないというのに、あまりにも涼しい顔をしているものだから此方が錯覚してしまいそうになる。


 間違っているのは自身かもしれない、と。


「ごめんなさいね。シュプギー。私はいつもダメな姫で……なのに守ってくれて……守ろうとしてくれてありがとう」


 少しでも彼の心を揺さぶれているだろうか。私は弱めそうな語気を叱咤し言葉を紡いだ。


「シュプギーは貴方でしょう。ユアン」

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