表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/76

第49輪「夢百合草」

「エレアノーラ・ヴェーン=テンペスト=ステュアート。反逆の罪で拘束させて頂きます」


 羊紙を胸元に掲げた男が衛兵を引き連れ私に罪を突き付ける。吃驚に目を瞠っていれば、フィンが私を庇うように間に割り込んだ。


「そんなものは冤罪だ」


「しかし令状が下っています」


「レイニー様は、そんなことしていない」


「これは任意ではありません。そしてフィンレイ・ミルウッド。貴方にも容疑が掛かっています。此れより、お二方を拘束後、護送致します。抵抗はなさいませんよう」


「嫌よ。そんなもの身に覚えはないわ」


「やれ」


「触らないでちょうだい! 無礼者!」


 私の抵抗などものともせず、両手に枷が付けられる。フィンも早々に取り押さえられ私は唇を噛んだ。


「すみません。お嬢様は一人で身の回りの世話が出来ません。無実が証明されるまで私が傍仕えをしても構わないでしょうか?」


「お前は誰だ?」


「ヴェーン家の従僕をしております」


「勝手にしろ」


「乱暴な人達ね……」


 数多の足音に囁きが掻き消される。「お嬢様は無実ですよ」と使用人を励ますロビンの声が背中越しに響いていた。






















「どうだった? 中々の演技だったろう?」


「ベルナール。もう少し優しくてもよかったと思うわ」


「いやぁ、早くしないとフィンが暴れ出すんじゃないかと思ってね。実際あの状況ならエレアノーラ嬢を連れて逃げるでしょ?」


「作戦中にそんなことはしない」


「そう? にしても、美少年の機転には恐れ入ったよ。あの屋敷から、どうやって連れ出そうか、いい案が無かったからねぇ」


「とか言って。ベルは、あの屋敷に俺を置いてくつもりだったくせに」


 馬車に乗り込むやいなや言葉の応酬が始まる。付けられた枷はロビンの手によって素早く外され、いつしかフィンの両手も自由になっていた。


「書状は書いたかしら?」


「いや。やはり俺達は俺達のやり方でやろうと思う。全面戦争だ」


「犠牲は最小限に抑えるつもりと言っていたじゃない!」


 走り出した馬車が振動する。感情に身を任せて叫び散らせば嘆息するベルナールがいた。


「だから誰も殺させない。それよりエレアノーラ嬢、あの屋敷から連れ出す条件、忘れたわけじゃないよね?」


「勿論。約束は守るわ。ただし全員揃ってからよ」


 衛兵に扮した彼らが私を罪人として連れ出し拐す。嘘はすぐにばれるだろう。だが、それでいいのだ。


 私が加担していたことを明かすのは終戦後。貴族は襲撃の的となるし、最悪の状況になった際、私は人質として利用される。侯爵令嬢に、どれほどの価値があるかは測り兼ねるが悪い案ではないだろう。


 私は最後まで奇襲をよしとしなかった。開戦を露わにしない諍いでは無駄に犠牲者が出るからだ。しかしベルナールは頑として首を縦に振らなかった。


 リーダーは彼である。ならば従う以外あるまい。蜂起の準備は整った。あと一つ解くべきは、あのことだけである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ