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第28輪「山吹」

〝睡蓮の君へ



 君からの返事は受け取らないと言っているのに本当に勝手な人だ。


 甘い君は男を転がせていると思っているかもしれないけれど、実際はそうじゃないことを自覚するべきだよ。


 結局、女は誰かの下でないと生きられないのだから。


 私の正体にはそろそろ気付いたかな? 聡い君のことだ。色々模索してるんだろうね。けれど、無い証拠を探ったところで何も出てはこないよ。


 身近な人に気を付けて。これから近付いてくるような人間には細心の注意を払うこと。


 桜色の花びらが似合う君は、これから何色の花を咲かせてくれるかな? いっそネリネなんて似合うと思うんだけど、箱入り娘で忍耐のない君は嫌いかもしれないね〟












「この手紙に意味なんてあるの?」


「分からない。けれど一通めの時は俺の目を掻い潜って差出人に会いに行っていた」


「これで四通目だけど相変わらず少しの忠告と世間話でよく分かんないね」


「他の手紙は?」


「全てレイニー様が持ってる。俺達にも読んでいいと言ってくれるけど、意味までは教えてくれない」


「正確には隠してるってことだよぉ」


「隠してる?」


 ベルナールの言葉をロビンが反芻する。意味を紐解くべく口を開けば、鋭い瞳のベルナールと目が合った。


「訊けば答えてはくれるんだよ。でも核心は、いつもはぐらかされて終わり。

 一通めの時も、時間と場所が分かった理由を訊ねたんだけど〝なんとなく〟だからね。

 只管、貴方は誰なの? って返事を書いてる。手紙が無くならないところを見ると向こうは読んですらいないのに……色々と、よく分からないんだ」


「その場で読んでる、とか」


「糊付けしてあるから開けたら分かる。綺麗なまま残ってるからそれはない」


「それに手紙はいつも店のどこかにあるんだ。カウンターだったりテーブルだったりね。

 そういうところから推察すると、常連客かレジスタンスのメンバーということになる」


 俺の言葉に添えるようにベルナールが後付けする。遠くから聞こえる人の声が、だいぶ日が高くなったことを告げていた。


「成る程ね……でも、だとしたらどうして名乗り出ないんだろう。普通にフィンを通じてレイニーと連絡を取ればいいのに」


「そこはやっぱり〝何者も介したくない理由〟があるんでしょう。そう思わない? 美少年」


「だったら何故レイニーは手紙を見せてくれるの?」


「そう! そこだよ! よく気付いたね。つまり、この手紙は暗喩で成り立っているんだ。二人にしか分からない暗号を使って本当に伝えたいことを隠してる。

 まるで軍の機密事項を交換する時のようにね。けれど軍のモノとも違うし、よく分からない。それにどうしてエレアノーラ嬢が〝睡蓮の君〟なんだ?」


「さあ……誕生花でも無ければ共通点も見当たらない。睡蓮が好きなんて話も聞いたことないし……元々あの人は花が嫌いだったから」


「え? レイニーって花が嫌いだったの?」


「ああ」


「でも花に詳しかったよ? しおれてた花を元気にしてくれたし」


「突然、様子がおかしく……いや、あれは性格が変わったと言った方が正しいかもしれない。三年前それがあってから少し嗜好が変わった」


「そのあたりだよね。エレアノーラ嬢を貴族側の代表にしようって話が出たのは」


「ああ」


「……それおかしくない?」


「確かに、おかしくないとは言えない」


 訝しむ声に相槌を打つ。険しい顔をしたロビンは畳みかけるように続けた。


「いや、おかしいよね? なんで全部タイミングよく噛み合ってるの? 入れ替わった可能性だってあるよね?」


「それはない」


「どうして?」


「ちゃんとレイニー様の記憶を持ってるからだ」


「そんなの……」


「訓練すればなんとかなるよ。でもね、それはない」


「なんで?」


「全てが同じ替え玉なんて無理でしょ? それこそ双子でもいない限りね」


「貴族なんだから替え玉くらい……」


「だったら護衛係にそれを隠す理由……待って……一通目の手紙に〝私は君の秘密を知ってる〟的なこと書いてあったよね?」


「ああ」


「それがもしレジスタンスに加担してることじゃなくて〝三年前の性格が変わったこと〟に関してだったら?」


「何が言いたい?」


「ヴェーン家が何かに関わっていたら?」


「何かって?」


「さぁ?」


 真面目な顔から一転、からからと笑い出すベルナール。

 ロビンと顔を見合わせていれば、彼は手紙に目を落として首を捻った。

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