表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

子宮移植のおはなしー 追記あり

作者: 片桐ゆーな

臓器移植のお話のため、ややグロい表現などもあります。

そういうのが苦手な方は、ぜひともブラウザバックをお願いいたします。

また作者としてはR18とは思っていませんが、医療技術を扱うため、いささか刺激がある場合があります。

大丈夫! 興味あると思っていただけたのなら、さぁ本編にお進みくださいませ。

 私が加入している学会の大会が今月にあるので。

 なにをやるんだろうねってことで、チェックしたのだけど。


 そこで、子宮移植って単語をみて、 ??? となりました。

 参加する予定なのはGID学会です。

 ええ、私がこよなく愛している二次元の男の娘ではない(、、、、)、リアル系なところでございます。


 えー、だってぇー二次元の男の娘とか、謎穴あるはずだしぃー、清廉潔白だしぃー、なにより「疎まれる」ことなどない存在のはずですからー。

 なんとなーくふわーっと、生きられるはずでー。学会とかで研究・サポートしなくても存在がもう神です。いいえ、天使です!


 リアルだとまぁ。これが。会場全体「もやっとしたような」錯覚うけるレベルでなぁ……

 もちろん私の先入観もあるし、GIDの人間は不幸で当たり前! みたいな思い込みによる錯覚ともいえましょうが。


 ま、研究者のみなさんはお楽しみで、私もお楽しみでいくわけですので、実際は「陰鬱な空気」ってのは十年も前の景色で、今はきっと、皆様未来に向けての議論をしているに違いありません。きっと。


 学会の内容だって、「今いる患者どうすんべ」から「これから育つ人たちへ」とか、「それこそ今回のような生殖医療」ネタにシフトしてきているわけで、それなりにはなんとか「いま」はどうにかなったって話なんでしょうさ、きっとね。

 国内での手術の保険適応とかもなりましたし、次のステージというようなところには来たのでしょうが。


 でも、反対に誤診問題なんてのもでて。

 ほんとままならないなぁとしみじみ痛感してるところです。

 いちおー、擁護をしますが。GIDの診断っていうか「心の診断」ってちょむずです。

 

 っていうか、「それらしい」演技してれば、診断は通るなんてうそぶかれた頃もあります。

 ネタでやるひとはあっさり判別できても、本人もガチで信じてるようなケースは、判別ほんと難しいところです。


 認定医制度が始まったのですが、ほんとに知識あるのかなー、どうなのかなー、なんて感じです。

 少なくとも、精神科に受診しているのにそれがストレスになって別の精神科にかからねばならない、なんていうアホな状況にならないことを祈るばかりっす。まあ、GIDのための精神療法なんて治療行為じゃないしな……と、止まらなくなるから、ストップ!



 さて、そんな中で。

 本エッセイは「子宮移植についての講演やるよ! まじで! やばーい」となります。

 がっちがちの臓器移植の話なので、R18はつけません。いちおうグロいのでR15はつけました。

 

 ここ数年確かに生殖医療系のネタもぽろぽろあったのですが、ここにきて、いきなり「これかい」と思ったわけなのです。

 ちなみにそれにでると、精神神経学会の単位と、産科婦人科学会の研修単位がもらえるらしいよ! 医者じゃないからもらっても意味がないけれど!


 そもそも学会なんてものは、最先端(ちんみょう)なネタを扱うので、そういうのもありだとは思うのだけど、さすがに「ここ」で「これ」をやるのかい、と私は錯乱しました。

 ええ、戸惑うほどに「それ」の可能性について考えきれなかった私をさぁ、笑っていただきたい!

 そして、半分でも「それを汲み取って本能的に気持ち悪い」と思ったのを、さぁほめて!

 え、何を言っているのかわからない……ですよなぁ。それはエッセイを最後まで読んでいただければわかる仕組みでございます。


 あまりに錯乱してしまって、同僚に「これなんなん?」って意見を聞くほどでした。

 聞いた相手は、冷静に物事を見る、「理系女子」のみなさまです。

 返ってきた言葉は結構「そぼく」でありました。

 冷静になりゃ、私だって同じ考えにたどり着くのだけど。


「技術の革新があって、幸せになれる可能性があるなら、ぜんぜんやればいいんじゃないかな?」

 なるほど、技術革新という意味合いでは、是、か。なんて話になったわけなのでした。

 そこらへんに関しては、宗教的倫理がどうとか、価値観がどうか、よりは「治るならそのほうがいいじゃない」というのが先にくる。


 立派である。


 さて。私も普段ならばそう考えるだろうし、一般論的に「技術が存在すること」「選択肢が増えること」は良いことだと思いはするのです。

 まったくやれない、よりは、「お金をかければやれる」というのは、価値がある。


 可能性が0ではなく1%のほうが絶対にいい。

 医療従事者としては、それは絶対的価値基準で正論だと思う。


 その技術で誰かが助かるのならば、まあ、いいのだろう。

 


 でも、私をもやもやさせたのは、やっぱりこの技術の前提部分としていわれている、「これは子宮だけが欠損した人に対して行われている=卵巣は無事」という点なのでした。

 卵巣ないとだめなの? がびーん、である。


 そして、GID患者には「切り裂いて捨てるほど子宮はある=ドナーとしての資源はある」けれど、「卵巣はあって子宮はない状態」の患者は一人も存在しえません。だってそういう分類の症例なので。卵巣あるならISになるのさ。

 

 なら、「GID学会」として、この場でその技術を考える人たちが求めるのは、その「毎年捨てられる子宮」にあるのではないか、と私は考えます。

 というか、とある筋のブログで「その可能性」を示唆しちゃってるので、あたりです。


「さぁ、てめぇら、いらねぇ革袋を提供しな! それで新たな命がうまれるぜ! おだい? そんなのはてめぇらの自己満足さ!」

 ってな具合でしょうかね。


 いらない人からいる人に、臓器移植をするのはいいことじゃないの? という話はとりあえず、どんな術式なのか概要を説明してからにしていただこうかと思う。

 


 さて「子宮移植」という単語を持ってくると、卵も? とか、ごっそり乗せ替えるのか? など誤解もありましょうからまずは、女性の生殖器について語りましょう。

 これは医学的なことであって、「他意」はかけらもなく。それこそ中高保健体育レベルのお話です。

 最初18禁にとも思ったのですが、そっちだとそれこそ場違いになるので、ある程度言葉を選別してR15で公開させてもらっています。

  

 生殖器とは、女性の場合大まかに、「卵」と「受け皿」の二つがあります。

 卵巣は卵を熟成させて、月に一回放つ役割。そしてその受け皿として、子宮があります。

 今回の場合は、「受け皿のほうだけ」の移植となります。

 なので。

 この技術の恩恵を受けられるのは、「子宮などに先天的・後天的欠損」がある場合で、卵巣機能が生きているケースに限ると、現状は言われています。


 え、いまいちわからない? ならたとえ話ですが。

 近くに湖はあるけど、水路がないからコメが育たないとか。……だめか。

 おぉ、これかっ。

 金属のインゴットはあるけど、鍛冶スキルがないから武器にできない! どう!?

 強大な魔力はあるけど、それを流す魔術回路(パス)がないから魔法が使えないとかは!?

 

 そんな例に対して、「鍛冶スキルを他人から引っぺがして移植」したり「魔術回路(パス)をぶんどって移植」したりするイメージでしょうか。補足としては「引退した鍛冶師から受け継ぐ」とか「魔力が枯渇してもう魔術回路不要な人からもらう」とかになるでしょうが。



 では、実際どんな風に治療をしていくのかさらっと紹介します。

 ちょっとグロいから気を付けてね! なるべくさらっと書くけれど。

 

 「ドナーから子宮を受け取り、移植」→「一年間免疫抑制剤」→「減薬してから最初に保管しておいた凍結受精卵を子宮に移植」→「育ってきたら帝王切開で出産」→「子宮は取り外して廃棄」。

 こんな流れになります。そして世界で十例くらいはもうそれで子供ができています。


 通常の臓器移植というものは、やったあとも拒絶反応を抑えるために免疫抑制剤を使い続けます。割と高額です。

 「移植した臓器である子宮をとってしまえば」免疫抑制剤も必要ないという話になり、ほかの移植よりもいいですよ! みたいなことが参考にしたホームページに載っていました。

 使い捨て子宮ってやつっすね。


 最初に感じたのは、この「使い捨て感」というやつでした。

 臓器を消耗品として割り切って考えるのは、医療者にはありがちなことではあるし、さらに子宮は「あってもなくても大丈夫な臓器」なので、わりと提供もしやすいわけです。


 ただ、まあ。

 なんと贅沢な使い方か! なんて、私はちょっと思ってしまった。


 そりゃ子供産むための袋なので、用が済んだら切り取って廃棄っていうのは間違いじゃないのだろうけど。すごくもやっとする。

 まあリサイクルだといわれればソウデスネといいますが……


 免疫抑制剤の常時使用というのは正直かなり面倒くさい。

 というか、薬のむことって、「めんどい」ことなんだよ、ほんと。

 だったら、「目的」が終わった臓器は切除して廃棄してしまったほうがいい、というわけだね。

 本来なら無いはずの子宮を使って出産ができるんだから、それだけで満足しなさいって言われそうなのだけど、やっぱりもやっとしてしまう。


 というか、子供産むためなら、人工子宮じゃダメなんだろうか?

 以前ポスター発表で人工子宮の話がでていたけれど、これができれば、それこそ真に男女平等な時代が来るのではないかと思うほどです。

 なんせ、産休がいりません。

 そして、育休は両親両方ともがうまくとっていけばいいんじゃないかな。

 そうすれば「パパのと一緒に洗濯物あらわないで!」とかせつないこと言われないで済むようになるんじゃなかろうか。どうですか、世の中のパパさんたち!



 さて。GID学会でこの発表をやるのは、年間に大量に廃棄される子宮の資源確保が狙いではないか、ということを書きましたが、みなさん。毎年どれくらいの人が性別変えてるかご存知でしょうか?


 ここ数年のデータだと、戸籍の変更手続きをしているのが年間800くらいです。

 そして、戸籍を変えるということは「手術をしていること」が条件の一つとなります。

 その半数がFTMだと仮定して、年間400の子宮が闇に葬られてきたわけです。

 しかも多数が海外で、です。国内でオペできる施設も、技術力も日本にはろくにないのです。


 いや「そんな珍妙な治療うちの病院ではやらない。既にやってる機関があるのだから、そこにかかればいい」と新規参入があまりないのですよ。保険診療になる四月からはどうだかわかりませんけどね。(ただ、実際始めるとしたら、精神科、産婦人科、泌尿器科、形成外科、内分泌科と、チーム医療体制をつくるというめんどいことをしなければならず……)



 さて、ここで、先にのべておいた件に戻ります。

 子宮移植の是非とは、どうなのか、という点です。

 まずは子供を持ちたい障害もちの方にとっては、年間400もの中から適合しやすいのを選べるのは朗報です。

 そして、医師にとってもリスクが減り、数もこなせるという好条件。素晴らしい。


 では、提供するドナーとしてはどうなのか、というところです。

 現状は、近親者からの提供や、脳死の方からの移植が行われているそうです。(世界で十例程度ですが)

 つまりは、提供する側の「意思」は尊重される体制です。

 ならば、はたしてそれを確認した際、どういった反応がでるのか、というのはかなり興味があります。

 私からはFTMの人の手術したあとの子宮についての執着度というか、意識ってのがどうなのかをはかることができませんし。

 なので、当日は「当事者の意見」というやつをアンケートとかでもいいから取っておいて発表してくれると嬉しいなと思っています。


 ようは、「どうぞ、おすきにリサイクルしてください」なのか「リサイクルするのだから、ちょっとは便宜をはかってくれ」なのか。

 それとも「子宮など、灰燼となるがいいっ!!」なのか。

 

 ちなみに「臓器提供」での金銭のやりとりはNGです。ダメです絶対。

 臓器売買になっちまう。


 ただ、ここも私がもやもやしている部分で。

 無料で回収した臓器を、他者にそれなりの金額で売ることは、果たして正しいのか? ということ。

 それを言っちゃえば、献血とかだってそうじゃん! ってなっちゃうのですが。


 さて、どれくらい費用にそれをかぶせてくるのだろうか、と思ってしまうわけです。

 自費診療の場合、医療費は言い値です。


 ある程度の数がある、現状のART、生殖医療で競争原理が働いていてですら「高い」のです。40歳を超えると、一人子供つくるのに1000万かかるなんていう話もあるくらいに。


 なら、それ以上の技術を使う「これ」にどれだけの値段がつけられるのか。

 そして、「ぎりぎり手に入るのなら無理をしよう」とする人たちがそれなりの数現れる。


 技術を提供する側の理論として「0より1%でも」と言ったけれど。

 技術を享受する側の意見として「0ならば諦められたのに」ともいえるわけで。

 希望の欠片って、ほんと、毒にもなるなぁとしみじみ思うばかりです。

 こと、子作りにおいては、かなり威力のある毒なのです。本人たちが心底望むならいいのですが、世間体やら、親族からの重圧やら、あまつさえ「普通ではない生き方はしたくない」とかいう理由でなんとか子供を作らねば、なんて話になっては、とっても苦しいと思うのです。

 ま、子供をあきらめる生き方というやつもまた、苦しいものではあるのですけれどね。


 そして、提供する側のメリットってのが、やっぱり見えてこないのですよね。

 どうせ捨てるものだ、という大前提があるにしても、なんかGIDの人たちから搾取してる感がはんぱないです。

 そも、臓器提供とは、無償の善意からなるものではあるのですが……。

 なんていうか「そもそも、臓器をむやみやたら捨てるって発想が通常あり得ない」ことなので、倫理問題とかは本当に未知の領域ってことになるというか、誰も考えたことがない展開というやつなのです。

 生体肝移植とかって、血縁関係で6親等以内か3親等以内の姻族とかに限られるそうで。


 まあ、その。本人たちが納得済みなら別にそりゃ、外野が口を挟む問題ではないのですが。一方的搾取にならないように配慮していただきたいところです。


 

 さて。それで話はがらっとかわりまして。

 現状は「卵巣あり」で子宮欠損例に行われてるこれですが、よくよく考えると卵巣なくても、卵子バンクとかつかって受精卵さえ作れれば、いけるんじゃね? なんていう妄想がありまして。

 つまりはGID学会で話す理由は、MTFの妊娠の可能性。これもあるからだ、という意見を耳にしました。

 これが私が最初気づけなかった部分です。

 これができるなら「一方的な提供」ではなく、同疾患内で循環ができるので、嫌悪感がいくらか減ります。

(っていっても、一方的であることにはかわりないし、物々交換とはいかないのが悩ましいですが)


 ただ、着床すんのかね? とか、腹の中にスペースはあるのかね? とか、そういうのは疑問ではあります。

 出産自体は、帝王切開しちゃうのでまあ、問題は着床と栄養系と、母子免疫関連はうまくいくのかってところです。

 性ホルモンの厳密管理などを行えばいけるものなのでしょうか? そこら辺の話題もでるのかどうかチェックしたいところです。

 これが実現可能ということになれば、人はまた一歩、性別という神の領域を犯すことに成功したことになります。

 

 ま、あくまでも近未来のお話という感じでしょうか。

 正直先述した「卵巣ありパターン」からもう一段技術革新が必要になるかと思います。


 

 私としてはやはり、人工子宮で、培養層とかで子供がずらーっとできるーっていうほうを推したいのですけどね。

 それによって少子化の問題もクリアされるし、女性のキャリアの停滞もクリアされます。

 それこそパラダイムシフトというやつです。

 え、母体の心音が子供の心を穏やかにー、ですか? なら母体のモニタリングして心音を遠隔で伝えてあげるとかでどうでしょうか。

(こっちもこっちで母子免疫、栄養の提供、そして血流管理などがネックとなります。胎児っていうのは母親の心臓からの血液で生きますから、それも人工で再現しなければ)


 これ、うまくいけば人の生き方そのものがかわるので、こういうの開発すると巨万の富が得られたりとかするのですよね。

 パソコンの開発みたいなもんといいますか?

 

 ただま、私には研究者としての才能はないので。

 そういうバイオベンチャーとかに投資しておけばいいんですかね?

 そしてそのためにお金稼ごう! みたいな風にすれば、頑張って働けるだろうか。


 ちなみに、現状の人工子宮の開発というやつは「あくまで早産の子を救うため」っぽいです。

 四細胞期とか、そこらへんから育てられるわけではないっぽい。保育器の高性能版という感じですね。

 それはそれで価値あることなのだけれども。そっちは話がでたのがちょうど一年前です。


 となると、まだまだ技術的には近未来って感じでしょうか。

 でもこの手のネタってたいてい、「倫理観の問題」というやつで締め付けられて、ほぼほぼ人類滅亡の極致でやっと踏み切るみたいな技術って印象はありますけどねー!


 なろう民としては、もっとSFの夢を見たいのです。

 移植もいいけど、人体ってやつはどんどんアウトソーシングしてるんだから、胎生からさらに一歩進化しないかい? といったところです。


 まあ、技術ができること自体に否やはないのです。

 ただ、願わくば。子供ができるのは当たり前なことではなく、望んだり願ったりしたうえで子供はできるものだ、という形になってほしい。

 そして子供がたとえいなくとも、変な目で見られない世の中であってほしいと切に願うばかりです。


3.27 追記

 25日に学会当日を迎えました。

 そこで、「子宮移植の話」を聞いてきたので追記をします。

 私が目をつけていた講演以外にもう一つ、そのチームから別の講演者を出して、その話題をやっていたので、実質2講演となります。


 まずは、興味深いお話を聞かせていただいて感謝を。

 そして生殖医療の専門家でありながら、「子供がいない生き方も選択肢としてあるべき」ということにちらりと触れてもらえたのは、ありがたかったものです。


 さて、話としてはおおむねホームページから読み取っている部分だったので、上述していることに大きな間違いはありません。

 まあ「新技術としてこれからやられていくかも」ということが一つ。

 そしてもう一つは、「配偶子もiPS細胞から作れるよ」「実験の許可おりました」というような話が新情報といったところでしょうか。

 理論上は、身体的男性から卵子を作ることも、身体的女性から精子を作ることも「できちまう!」そうで、なんかもう生物の範疇超えるわー、まじやばいわー、とテンションあげあげでした。


 ただ、現状は「子宮移植をする」目的は「卵巣あるけどもともと子宮欠損がある例」をメインに考えていくということでした。国際的に研究会を作って共同研究やるみたいな感じですね。

 上述してた、GID内での循環の話は、「まあ将来的にできるようになるかもね」レベルでした。

(あ、GIDって言葉、そういや世界基準だと存在しなくなるのですが便宜上使いますね!)


 日本ではカニクイザルの子宮移植の実験がされていて、動物実験では成功しているそうです。

 手術風景とか普通に動画ででるんすわ。おさるさん、かわゆかったが……


 それと、GID当事者FTMさんの意見というのがちらりと紹介されましたが、9割以上は肯定的に「どうせすてる子宮さ、もっていくがいい」という意見でした。

 ただ、「ドナーになるといろいろ負担も増えまっせ」と話をしたらがくんと5割くらいに肯定が下がりました。

 手術のリスクの詳細を伝えたわけではない、ということだったので、「会場で示されたリスク」を知ったうえで、「けれどもやります!」と手を上げるのか、それとも「ちょ、むりげ」というのか、っていうのを「会場の声」としてぜひ当事者さんから聞きたかったです。


 でも、残念ながら会場にはFTMさんあんまりいなかったのか、その感想は聞けず。

 ま、会場の興味としては「レシピエントになりうる可能性」があるトランス女性と他研究者ばかりが集まったという印象でしょうか。会場広かったのでほとんど把握できなかったですが。


 こういう会では珍しく「みなさんの意見を聞かせてください!!」みたいな、ウェルカムな演者様で、ちょっと驚きました。まあ実際本気で「意見聞きたい」んでしょうけどね。

 でも、あの場で質問に出れる人ってよっぽど「それを望んでいる」か、慣れてるかじゃないとムリゲな気がするのですよ。

 ホームページ紹介して、ぜひ、意見はこっちにね! くらいじゃないと、いろいろ言えないのだぜ。


 質問で上がったのは、午前の部の短いほうのやつで一点。

 レシピエントのほうで、ドナー側の費用負担をするかどうかって話、だったかな。

 子宮移植すればメリットもありますよ! みたいな質問だったと思います。(違ってたらすまね)


 午後の方では、動物実験でようは、雄個体に子宮つっこんだりはしてないの? って話と、ねえねえ、せんせぇ、どうせその術式、お高いんでしょ? というような内容でありました。


 さて、でも私はその講演を聞いて、費用負担メリットか……うむ……と深く考え込む羽目になりました。 

 はたして「ドナーに対してのオペ時間10時間以上+出血900cc」っていうデータは、提供する側

にどれだけの負担になるのかなぁ、というお話です。

 だからこそ「脳死ドナー」か「親族」がドナーになってんじゃないかな。


 気楽に「捨てるからあげますよ」と言えるような術式ではないように思いました。 

 じゃあ手術費用200万もおいます、といわれても……10時間の手術て……

 普通に子宮摘出だけなら一時間とかいってたし、ほかのもろもろいれても三時間半なのよ?

 腹腔鏡で、新鮮な子宮はとれるの? 入院期間どれだけ伸びるの?

 てか、腹腔鏡下でのSRSって三泊四日かよ、と私はちょっと技術の進歩に愕然としているのだけれどね。

 

 さて。出血900ccって、どうなのさ? っていうといわゆる多めの献血2回ちょっとです。

 人の血液は体重の13分の1といわれていますから、成人男性の標準60kgをベースと考えても血液量は4.6リットル程度です。FTMさんは小柄だったりもしますから、もちっと少ないかも。

 男性ホルモン投与で、赤血球数は増えてるでしょうけれどもね!


 それで、一般的には1.5リットルくらい血を流すと失血死だそうですよ、奥さん。

 900って数字はどう判断すべきなんでしょうか。

 私には「けっこうおおいな」という感じです。ま、手術室で仕事する経験とかないですし、実際「どこから輸血の判断がでるのか」とかわかりませんけれど。


 足りなきゃ輸血するし、今の血液C肝ウイルス入ってる率少ないし、HIVは……うん。きっとダイジョウブだとオモウヨ。てか、献血でHIV検査するんじゃなくて、みんな保健所いってやろうな! 無記名でやれるからさ!


 でも、輸血するかどうかも同意書とか取られたような気がするんだよね。

 このリスクを、果たして是とできるんだろうか。 


 あと、移植の現場は私も詳しくはないので存じ上げなかったのですが、臓器をもらう側(レシピエント)が、ドナー側の処置代などを払う、というようなこともあるという話もでてました。(朝の部の方の質問ででてた件です)

 GIDの人間というのは一般的に金がねぇのです。今財布の中にある金でホルモンを買えるだけ買う、って話を聞いたときは、うるっときてしまった。

 なら、手術代をかんぱしてくれるなら、子宮は提供しましょうと、なるのか?


 でも、それって、結局は臓器売買となんか違うの? と思ってしまう。

 最初に書いた方で「FTMにもメリットないとだめじゃない?」とは言ったけど、なんかやっぱ足元見られてる感があるようにしか思えないのです。


 ちなみにFTMの子宮の切除は、150-200万くらいです。


 節約しながらきちんと働けさえすればたまる額だと私は思ってます。「まぁ、GIDもってると、そもそも職探しに難航する」わけなんですが。 

 

 そして……子宮移植による挙児の出産にかかる費用はなんと「2000万」。

 払う側からすれば、2000万も2200万も誤差だよねって友人ともはなしてしまった。


 けれども、上に挙げたような「リスク」が200万に相当するのか? といわれると、なんかもうプライスレスっていう感じで。


 ああ、私がなんか、「すげぇーヤ」なのは、GIDの人間の価格がすごく安く買いたたかれるってことなのかもしれない。


 人の命は2憶とか3憶とかいうじゃない。

 それを危険にさらして、200マンぽっちでいいのか? っていう風に思うわけですよ。

 

 もちろん、提供する側と、受け取る側で「合意がなされれば」それでいいとは思うのですが。

 手術うけるGIDの人って、追い詰められてるわけでしょ?


 なんだろな。ぽんと「2000万出せる人」と、「必死になって200万かせぐ人」と、金銭感覚の違いというか、まあ「安く買いたたかれてないか」と思ってしまうのです。

 術式が安易で、「まじで、普通にオペして、捨てたものを劇的再利用!」ってんならこんなことは言わないのだけど。ドナーへの負担は上述の通り。


 これは確実に偏見なわけだけれど、2000万って額を、ぽんと「こどもを作るため」に使える人は、金持ちだと思う。


 だって、普通は「育てる金額」とかも頭に描くもの。

 しかも、これ本人が払うの? 被験者22歳とかだけど、それでその額もってたら、勝ち組ってか、よっぽどの人になる。

 じゃあ、親が払うのか?

 

 ちなみにスウェーデンの場合は、10例分、とある人物が技術革新のためにと、パトロンってくれたらしい。

 会場に、パトロンもとむーというような冗談が飛びましたが、まあ、よっぽど金持ちで、娘を溺愛しているとかならば、可能性はあるのかもしれないけれど、2000万って額、それこそ仮想通貨で一発あててたり、宝くじあたったり、株でなんとかなったりしないと無理っぽい。

 あとは、一部もうかってるしゃちょーさんたちでしょうか。


 そして、まあ私の場合は「卵子の形成っていうところから」なのでさらにかかりますね♪

 むりげーやん!

 まあ、自分でやる気ってのは、まったくもってなくいったのだけれどね。



 20年後はできてる技術だ、とは思いますが。

 まあ、今、障害を持ってる子供がいるということであれば、それは、可能性を信じてご自愛をしてみるのもいいのではないかと思います。子供を実際に産んだ経験のある子宮は、信頼性高いらしいですよ(苦笑)

 

 さて、最後にさらっと触れられていた、「人工胎盤、人工子宮」の話を私は見落としませんでした。

 まあ、「胎盤が大切」という言い方をしていたので、演者様の頭の中で描かれている絵としては、「腹の中で育てるの前提」なのだとは思うのですよ。

 ようは、母子の間をつなぐ胎盤が人工的に作れれば、子宮は入れ物にすぎないくらいな勢いでの発言っぽいと私は感じまして。


 え、胎盤ってなんだよって話はな……母体と子供をつなぐ道。栄養とか送ったりするわけさ。

 あえて家電で例えるとしたら、「コンセント」の役割かな。

 電気を送る送電版とかが母体で、コンセントの先の炊飯器とかが胎児ね。

 つながってさえいれば、それは洗面所でも、居間でもトイレですらいい! と、まあ一回繋げたら、はずしたら=死だけどさ。


 子宮ももちろん、「胎児の宮」として大切だけれど、研究者としては「パス」のほうが大事なんだと思う。

 私も、「栄養素がー」とか「母子免疫がー」とかいってましたけど、それに加えて腎機能、心臓、肝臓。全部未熟な胎児にたいして、母体がフォローしているところを、丸ごと代替するのは大変だと思います。

 だから、「せめて接続するためのソケットを作ろう」というようになるのは、とてもよくわかります。


 それができ、さらにiPS細胞から子宮ができるのであれば、すべて上述した技術は、ご破算と、演者様自身がいっていましたが、今はまだ。


 そう、今はまだ。「今」のために、子宮移植っていう方法もありなのでは、という話でした。

 

 おそらく、400以上のうちの、一部でも研究に回せれば、うれしいってのが本音なんじゃね? っていうように私なんかはうがった考えをしてしまいますが。


 まあ、「当事者同士の、話し合いの上にされること」なので、治験をうけるのもうけないのも、本人たち次第です。


 実際、学会でも話がでたけど「FTMは子宮を差し出して当たり前」っていう風潮にならないといいなと、それは切に思っています。



 ちなみに、子宮欠損の人、六万人以上いるんだって。400-500の革袋が手に入って、なにか、こう、あるのかな? 金持ちがとってくだけじゃね?


 っていう皮肉を込めて。追記を終わります。


 IPSがんばってー! もー 姫でも 王子でもなんでもいいからさーー!

 


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] FtMさんの場合は最後までSRSしない人も結構いるかもです。SRS第一段階の時点でも戸籍を変えることが出来るし、形成手術しても機能的に不十分でパートナーとの性行為に補助器具が必要になったりす…
[一言] 前にリンク貼った記事はちょっと分かりにくいけれど、ノンホルFtMさんの乳腺撤去+SRS第一段階手術です。 高額医療費の事も書かれてないけれど、FtMさんの場合はMtFと違って2回目の手術が必…
[良い点] すっごく勉強になりました! 特に現在の技術の状態とか、どのくらいの出血があるとか金額的にどのくらいなのか?等が書かれており、やっぱり小市民にはまだまだ実現的に難しいんだなぁと理解できました…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ