序章 事件
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ユーザー名→@AMAKUSARIKI
世界最強の冒険者。
そんなとんでもないことを言ったのは、目の前にいる吸血鬼の女…グランヒルデだ。
横では、ハルがキラキラした目でグランヒルデを見ている。
そんなハルを見ながら俺はずっと思っていた。
この人…誰?
そんな俺の気持ちが伝わったのか、ハルが説明を始める。
「彼女は、この国の冒険者ランキング1位の人だよ。確かレベルは…100は超えてたはず。」
「100越え!?それはおかしいだろ!?人の種族限界レベルが99だよな?100越えって………あ!」
「分かった?彼女は吸血鬼。人間じゃないの。冒険者ランキングトップ3の他は、エルフと狐人で、二人ともレベル100越えだしね。」
「…なんでそんな化け物がこんな所にいる?」
ここは、レベル60のミノタウロスが一番危険な森だ。レベル100越えの人からしたら怖くもなんともないと思うんだけど…
「それは、妾が教えてやろう。実はな…」
グランヒルデさんが教えてくれた内容は、こんな感じだ。
この南の森近辺に、上級悪魔が出現したらしい。それを、グランヒルデさんが討伐したのだが、悪魔の影響でこの森の魔物が増えて、氾濫しそうになってしまったらしい。
初めは見て見ぬふりをしていたらしいのだが、俺達が森に入って行くのを見て、もし死なれたら後味が悪いとこっそり付いてきたらしい。
そしたら、あることに気づいたらしいのだ。
それが…
「…どうして知っているんですか?俺が地球からきたって。。」
「妾クラスになると、神様とも何回か会ったことがあるんじゃ。その時に言われたんじゃよ。次会ったらこれを渡してとな。」
そう言って、鞄の中から一つの短剣を出した。
「ほら。貰え。」
「…これは?」
「説明は面倒じゃ。これを読め。」
手紙にはこう書いてあった。
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一条葉月へ。
いや~スマン!お前に造形魔法なんかあげちまって!あとから知ったんだけど、造形魔法ってそっちの世界では弱いだってな。
グランヒルデに渡した短剣は、造形魔導師専用の武器だ。好きに形や大きさにでき、さらに好きな属性を付与できるんだ。かなりの代物だから無くすなよ?
最後に。
これは俺の座右の銘だ。ちゃんと覚えろよ。
【守ると決めたものがあるのなら、それは死んでも守りぬけ】
それじゃあな!死んだらまた会おう!
神より
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なんて良い神様なんだ…
俺は、もらった短剣を握りしめながら本気で感謝してた。
「…ありがとうございました。グランヒルデさん。短剣、大事に使わせてもらいます。」
「妾が感謝されてものぉ。まあ、大事に使うのじゃよ。」
グランヒルデさんは、そう言って笑う。
こうして見ると、やはり彼女は凄い美人だ。長い黒髪はツヤツヤで、顔も整ってる。プロポーションも素晴らしく、いくら貧乳派の俺でもついつい目が行ってしまうようなレベルだ。
そんな俺の目線に気づいたのか、グランヒルデさんがニヤリと笑い…
「おや?お主は妾の体がそんなに好きか?なんなら、触らせてやらんこともの無いぞ?」
「!?まっマジですか!!!???」
「冗談じゃ。それじゃあ、妾はもう行くぞ。…あ、最後一つだけ。」
「え?」
「妾は強いぞ?この事を、ちゃんと覚えいろ。判断はお主に任せるがのう。最悪、妾の眷属にしてやらんでもないがなぉ。」
「眷属?」
「人間は、吸血鬼の血を飲むことで半吸血鬼になるのじゃよ。まあ、特に気にするでない。」
そう言って、彼女は行ってしまった。最後のはどういう意味なんだろう。
さてと…こっちはこっちでなんとかしないとな…
「あのー。ハルさん。痛いです。」
「うるさい。」
さっきから、ずっとハルが俺の左手をつねっていた。かなり本気で。いや、マジで痛い。
「理由…」
「が、分からないって言うんだったら、私は本気でハズキを凍らせるよ。」
辺りの温度が一気に下がる。それに、ハルから魔力が溢れだしてきて…
これはマズイ!!
「ストップ!落ち着けハル!一旦この森から出よう!ここじゃ危ないし!続きは帰ってから!」
「そうだね。私としてもハッキリさせたいことがある。とりあえず、今はやめてあげる。」
…帰ったら何されるんだろう。
♢
街に着いた後、俺達は銭湯に向かった。一日中森にいたせいで、体がドロドロだったからだ。
帰り道は普通にハルと話せたが、ハルはスイッチが入ると一気に怖くなる。とりあえず、家に帰るまでは安全だと思うが…
先に銭湯から出た俺は、待合室でハルを待つ。五分程待つとハルが来た。
「それじゃあ行こ?」
「あぁ。…夕飯どうする?どっかで食べるか?」
「今日は家で食べよ?…話もあるし。」
「!!」
「とりあえず食品店で夕飯とお酒買って今日は帰ろ?ギルドに報告するのは明日でいいから。」
♢
着いた。着いてしまった我が家に。
食品店で適当なお酒と夕飯を買い、そのまま直行で着いてしまった。
ハルはいつも通り入っていき、俺も少し遅れて入る。
俺はキッチンに買ったものを置いて、ハルの方に向かう。
10畳ほどの部屋には、小テーブルが置かれ、端にはベットが置いてある。二人ようのベットで、そこそこ大きい。
ホントは、小さいベットを二つ買おうと思っていたのだが、このベットのほうが安いからとハルが決めたのだ。
後は小さな収納タンスとがあるだけの、シンプルな部屋だ。
ハルは布団の端に座り、横をポンポンしている。…座れってことか。
俺は、ハルの言う通りに横に座る。
「ハズキ。」
「な、なに?」
「ずっと気にしてたんだけど、今の私達ってどんな関係なの?」
「え?いきなり?そりゃあ……」
仲間…か?それとも恋人?確かに、分からないな。
どんな関係…か。Hはしたけど、恋人関係ではない。けど、唯の仲間でもない。うーん
「友達以上恋人未満…みたいな?」
「…恋人未満。確かに今はそうだね。それじゃあ、私に怒る権利はないか…」
「怒る権利?」
「ハズキが、他の女の人をHな目で見る事に怒る権利。」
「もしかして…ヤキモチやいてんのか?」
俺が軽い驚きを含んでハルに言うと、ハルはムスッとした顔になり、
「悪い?ヤキモチしちゃ。」
そう言いながらハルは顔を赤し…
「少なくとも、私はハズキのことが好きだからさ…」
「!!!」
そう言いながら、ハルは耳まで真っ赤になり…
それを見た俺は、もうガマンできなくなりハルを押し倒した。
「キャ!は、ハズキ!?」
「たく…俺もハルが好きだ!今本心から自覚した!俺はお前が好きだ。」
それを聞いたハルは、一瞬驚いた顔になり…
「…でも、ハズキ今日、グランヒルデさんのおっぱいガン見してたじゃん。凄い触りたそうだったじゃん!あそこも勃ってたし!」
「それは、1週間も禁欲してたら男ならそうなるのも当然だろ!あれは生理現象なんだ!」
別に、俺は禁欲してたわけではないのだが、勢いで言ってしまった。まあ、しょうがないな。
「だから、このあと…平気か?」
「…うん」
そう言って、ハルは腕を俺の首にからませてくる。そしてそのまま長いキスをし…俺はハルの服を脱がしにかかる。
ハルは風呂上がりだったので、ワンピースに着替えており、脱がしやすい。
ワンピースを脱がし、ブラを取り、いよいよ下へ…と、思った時だった。
「…あっ!えと、ハズキ。」
「…どうした?」
するとハルは、とんでもないことを言った。
「私…今日女の子の日だから、H出来ない…今思いだした…」
…は?
「…え?え?俺の高ぶった気持ち…え?」
「あ~…また今度ね?」
そう言って、ハルはニコッと笑う。
くそ、可愛いじゃねえか…
そのあとは普通にご飯を食べて、少しお酒を飲んで、寝た。
ハルはいつも通りだったが、俺は違う。あれだけ期待させといて、お預けはないよ…
その夜、俺はもんもんと過ごすのだが…
その次の日に、事件は起きた。
♢
《冒険者の皆さん!冒険者の皆さん!至急、ギルドに集まってください!繰り返します!冒険者の皆さん!至急、ギルドに集まってください!》
「…なんだ?おい、ハルおきろ。」
「う~?なに~?」
「緊急招集がかかった。すぐに装備を整えろ。ギルドに行くぞ。」
♢
装備を整えてギルドに着くと、そこには既に沢山の冒険者が集まっていた。
とりあえず俺は、近くの人に事情を聞いた。
「南の森が氾濫!?え?それはホントか!?」
「あ、あぁ。さっき、ギルドの人が言っていた。」
「…なん…で?南の森は、グランヒルデさんが…」
「ハズキ。一旦職員のとこに行こ。なにかしら分かるかもしれない。」
「そ、そうだな。」
ギルド職員の方に行くと、職員がすぐに話かけて来た。
「ハズキさん!ハルさん!マスター!二人が来ました!」
「分かった!すぐに部屋に連れてこい!」
俺達は、ギルド職員のあとを付いていく。すると、すぐに目的地についたらしく、部屋に入る。
「とりあえず座れ。」
「失礼します。」
俺達の前にいる人が、ギルドマスターだ。
エドワード・アンビシャス 56歳。
見た目はムキムキのおじいちゃんだ。
「単刀直入に聞くが、君達はグランヒルデ・L・スカーレットに会ったか?」
「!?…何で知ってるんですか?」
「やはりか会っていたか…奴は、どんな話をしていた?」
俺は、言える範囲のことをマスターに話す。さすがに、地球のことは言わなかったが。
すると、マスターは深く溜め息を吐き…驚くべきことを言った。
「実はな、南の森を氾濫させたのはグランヒルデなんだよ。あいつは裏切ったんだ。」
「…え?」
その事実に、俺とハルは戦慄する。
世界最強の冒険者が…世界を裏切る。それは、本当にやばいことだ。
「その事実…いつから分かってたんですか?」
「今朝だ。王都から、いきなり連絡がきてな?グランヒルデは、この街を陥して新しい国を作るらしいんだ。南の森の魔物は、既にグランヒルデの支配下にある。あと2時間程で到着だろう。ミノタウロスが10体近くもいるらしい。」
「王都から、援軍は来るんですか?」
「来るには来るが…到着予定は4時間後。つまり、化け物相手に2時間耐える必要があるんだ。」
そこでやっと俺は、グランヒルデさんが最後に言った言葉の意味が分かった。
つまり、妾は強いから、敵対するならちゃんと考えて行動しろって意味だろう。眷属化云々は良く分からないが。
………判断をミスれば即死亡…
マジですか…うん。無理ゲー。