序章 南の森
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ユーザー名→@AMAKUSARIKI
俺達がアパートに引っ越してから、1週間がたった。
※引っ越しのシーンが無かったのは突っ込まないで!思いつかなかったんだ!
俺とハルが初めて寝たのも、1週間前のことだが、あれ以来まだ一度もやってない。別に、気まずくなったとかではないのだが、あれ以来、中々性欲が沸かないのだ。
…嘘です。実際、ハルが二人ようのベットを買ったせいで毎日一緒に寝ているのだが、それはもうムラムラする。ハルがいるせいで賢者モードになれないし、仮になってもすぐに終わってしまう。
ハルはハルで、あのあとからは誘ってこなくなったし。
…ちなみに、俺達はあの時、避妊せずに全て中に出していた。やはり酔っていたのだろう。けど、ハル曰く妊娠しても、早く気づけば魔法でなんとかできるらしい。幸い、ハルは妊娠しなかったらしいのだが。
俺達が引っ越したのは、あの4人が住んでいたアパートなのだが、思ったのと少し違った。
言ってしまえば、少し大きめの1Kだった。これには少しびっくりしたが、ほとんどの冒険者はこんな部屋にごろ寝らしい。それか、ハルみたいな小屋か。
けど部屋は綺麗で、風呂も小さいがちゃんと付いている。
…この異世界の家とか風呂って日本みたいなんだよな。キャンプ場のログハウスみたいだ。
さすがに、水道やガスは無かったけど、俺の魔法でなんとかなった。
この1週間の間は、基本クエストをこなしてレベルを上げていた。
今のレベルは俺が45、ハルが42だ。さすがにレベルは上がりにくくはなったが、その分強いモンスターを倒せるから、収入はいい。
最近では自炊も始めた。
日本では、料理をするのが好きだったしな。異世界の食材もおいしい物が多かったし、料理のしがいあったね。
最後に、俺とハルの関係。
正直これは、俺にも良くわからん。俺が、ハルのことを好きかと聞かれても、正直分からないしな。
めちゃくちゃ好みだし、かなりの美人だけど、まだ会ってから1週間ちょっとだしね。
ただ1つ言えるのは…
「少なくとも、失いたくは無いな。」
「…え?いきなりどうしたの?」
おっと、つい言葉に出てしまった。
俺は、ハルに何でもないよ。と、答えながら、意識を現実に戻す。
俺達は今、クエストを受けての移動中だ。クエストの内容は、南の森の偵察。
南の森とは、フリージアの町から2時間程の場所にある、大きな森だ。全体的にモンスターが強く、レベル40を超えてないと、偵察さえままならない所だ。
そんな森で、モンスターが増えてきているらしいのだ。ギルドの人の話によると、推薦レベル40越えの魔物がかなりの頻度で出没するのだと言う。
もしかしたら、南の森が氾濫する可能性があるとのことで、俺達が偵察に向かっているのだ。
氾濫とは、モンスターが大量発生し、森などから溢れてしまう現象のことで、氾濫のたびに、町が大きな被害を負う。氾濫の原因は未だ不明だが、自然発生説や、悪魔の陰謀説などがあるらしい。
しかも、今回氾濫する恐れがある場所が、町の周囲で一番危険な場所のこともあり、すぐに偵察が送られたのだ。
それが俺達である。
レベルは40を超えており、中級冒険者の街であるフリージアの中では上位に入る強さで、なおかつ造形魔法といった、(戦闘以外では)いろいろと便利な魔法を使う俺と、パーティであるハルが向かうことになったのだ。
俺がさっき感慨深い感じで、1週間を振り返っていたのは、死ぬかもしれないという感情を誤魔化すためだったのだ。
南の森は、それ程までに危険なのだ。
推薦レベル30越え以上しかいないような場所で、オーガだって南の森ではそこそこといった所なのだ。
オーガ以上の化け物なんてウヨウヨしている。特にミノタウロスがヤバい。ギルドの人からも、会ったら全力で逃げろと言われている。推薦レベルは60。南の森でも、一線をなす魔物だ。
さっきの俺の言葉の意味が分からず俺の顔を見ていたハルが、なにかを察したように喋りだした。
「…そんなに不安?」
「…そりゃあな。いくら偵察とはいえ、あんな危険な所に行くんだ。不安なのは当たり前だろ?」
俺が軽い感じで答えると、ハルはクスリと笑い…
「そうだね。…だったら、無事に偵察を終えて家に帰ったら…久しぶりにやろ?」
「…帰ったらやるとは、一体どのようなことか、詳しく説明してください。」
「…察して。」
「詳しく説明を。」
「///!」
俺のSっ気に火がつき、ハルを追い詰める。しかし、ハルもハルでS気質なため、ここで屈するのは悔しいのか、断固として言おうとしない。
「説明を。ハルさん。」
「/////////…。」
「んん~?」
「…調子のりすぎ。殴るよ?」
「すいません。」
少し調子に乗りすぎたが、ハルが恥じらう瞬間が見れたためよかったとしよう。
…これは、こんな所で死ぬ訳にはいかないな。
♢南の森
「ここが南の森か。」
「そうだね。少し緊張して行こう。」
「じゃあやるぞ。ウォーターメイク“雫”」
俺は、新しく考えた造形を、自身の周り50メートルに展開する。
この造形魔法は、小さな水の雫を造形し、それを展開することで、敵感知をすることができるのだ。消費魔力も少ないから、かなり便利だ。
「次は私ね。…氷の精霊よ。その力によりて、我らを隠したまえ。“ミラージュ”!!」
ハルの魔法によって、俺達の姿が消える。
これで、そうそう見つかることはない。
「そうだ。ちゃんと帰る時ように、マークを付けといて。」
「りょーかい。100メートルおきくらいにつけとくね。」
俺達は、無言でうなずきあうと、森の中に進んでいった。
「おいおい…なんだよこれ…」
「え?…そんなにヤバいの?」
「あぁ。俺の感知できるだけでも、10は軽く超えてるな。50メートル圏内に10越えか…」
これは、想像以上にヤバい。確か三日前、魔物の大量発生が確認された当時よりか、絶対に増えている。
…このペースだと、割と早く氾濫しそうだな。
「…少し奥に行こう。原因を知りたい。」
「分かった。行こう。」
森は奥に行く程強いモンスターが増えていくため、俺達は慎重に進んでいく。
モンスターの大量発生には理由が分かる場合もある。そのため、ある程度は奥に行って確認しなければいけないのだ。
「…ハル。ストップ。」
「…何?どうしたの?」
森を半分程来た所で、俺の感知に大きめな魔物が引っかかった。この大きさは…
「…オーガだな。それも2体。」
「オーガかぁ…どうする?このまま素通りしちゃう?」
「う~ん。けど、あいつ経験値多いんだよなぁ…」
「そーだよね。…一撃で倒して、すぐに離れれば平気じゃない?」
「そうだな。」
…この会話を聞けば、分かるだろうが、今の二人にとって、オーガは経験値の良いだけの魔物である。別に怖い相手ではない。
「俺が右。ハルが左な?」
「りょーかい。一撃で仕留めるね?」
「じゃあいくぞ…ファイアーメイク“爆裂”!」
「氷の精よ!我に力を!“フリーズダスト”!」
俺とハルの魔法により、オーガが吹き飛ぶ。
よし。一撃で倒せたな。
「それじゃあ、すぐに移動するか」
「りょーかい!」
すぐに移動した俺達は、また、奥を目指す。
「あ、レベル上がってる。やっぱり、狩っといてよかったね。」
「俺も上がった。オーガはやっぱりいいな~」
…たかが1週間で、オーガに対する認識は、ここまで変わるのか。
♢
俺達は、それからも奥に進んでいく。俺の索敵とハルのミラージュによって、俺達は強い敵と遭遇することなく、森を進めていた。
途中、オーガとも何体か遭遇し、それらを倒したこと以外は戦闘すらしてない。
「お腹すいたね~。ハズキ、お昼食べない?」
「そうだな。ここらで昼休憩でもするか。」
森に入ってから約4時間。現在昼の1時。お腹もすく時間だろう。
まあお昼ご飯といっても、非常に簡単な食事だが。
「はい。ハルの分」
「ありがとう。…やっぱりこれだよね…」
俺達が今食べてるのは、ソ◯ジョイの劣化版みたいなものだ。全然甘くなく、ソイ◯ョイから、砂糖とドライフルーツを抜いたらこんな味になるんだろうなって味だ。正直おいしくない。
「う~ハズキ。甘い物食べたい。飴がいい。」
「お前は子供か。…ほらよ。」
「ありがとう!ん~!おいしい!」
…ただのべっこう飴なのだが…まあ、おいしいらしいからいっか。
べっこう飴は、俺が作ったものだ。この街には甘味が少ない。そう思った俺が作ったのだが、これがハルに大うけしたのだ。そのため、いつも俺が持ち歩いている。
15分程休んで、俺達は出発した。予定ではあと1時間程探索したら帰る予定だ。
「ハル。マーク付けたか?」
「つけたよ。ピッタリ100メートルおきに。」
「分かった。ちゃんと頼むな?」
「分かってるって!」
♢
このまま、さらに30分程探索したが、魔物の大量発生の原因は、分からなかった。
しかし、俺にはそれ以外に、もっと気になることがあった。それは…
「…なぁハル。気づいてるか?この辺り…なんか魔力を感じる。」
「なんとなく…ね。詳しくは分からないけど…」
どうやら、ハルも気づいていたようだ。なんだか10分程前から、微量だが魔力を感じる。
「とりあえず、今日はもう帰ろう。嫌な予感がする。」
「そうだね。それじゃあ、マークを辿っ…え?」
後ろを見たハルが、言葉を失う。それを見た俺が気になって、後ろを向くと…
女がいた。
長い黒髪に、赤い目。そしてこの森では不自然すぎる赤いドレスを着て、肩に長い剣を担いでいる、美人すぎる女だった。それだけならまだよかったのだが、その女には明らかに人と違う場所があった。…八重歯だ。口から見えるそれにより、俺の頭にある仮説が浮かんだ。そして、その仮説は証明される。
「どーした?人間。いきなり固まりおって。まあ、人間如きが我を見たら、その美しさに固まってしまうのは当然か。」
人間。俺達のことを、奴はそう呼んだ。これだけそろえば馬鹿でも女の正体が分かるだろう。
こいつは…!
「吸血…鬼?」
「おお。ばれてしまったか。確かに我は吸血鬼だ。名は…」
グランヒルデ・L・スカーレット
吸血鬼にして、世界最強の冒険者…と、彼女は言い放った。
吸血鬼って聞くと、真っ先に思い浮かぶのが金髪巨乳の僕はおかしいのだろうか?