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序章 初クエスト②

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ユーザー名→@AMAKUSARIKI

林から現れた化け物は、こちらを見ながら舌舐めずりをしている。完全に捕食者の目だ。

対してこちらはエサって所か?


そんな事を考えながら固まっていた俺を、ハルが揺らしてきた。


「ハズキ!早く逃げないと!オーガには勝てない!」


「…オーガ?」


「あいつの名前だよ!推薦レベル40!…この辺じゃ北の森にしかいないはずなのに、どうしてこんな平原に?…」


ハルの慌てっぷりから、コイツはかなり危険な魔物なんだろう。それに、推薦レベル40の魔物なんて俺達が勝てるはずがない。


「ハズキ!早く逃げよう!逃げなきゃ殺される!」


「逃げる?…そうだ、逃げなきゃ。」


勝てないなら逃げればいいだけの話だ。幸いまだ距離はある。今から全力で逃げれば助かるかもしれない。それは分かっている。分かっているのだ。なのに…


体が…恐怖で動かない。


「…ハズキ?」


俺の様子が変な事に気ずいたハルが、名前を呼んでくる。しかし今の俺に、その声は届かない。


「ああぁ、あああぁ.」


体が震える。思考が安定しない。目が泳ぎ、口からは謎のうめき声が洩れる。


「あああああああああぁ!」


「ハズキ!?」


俺は頭を抱えてうずくまる。うめき声を上げながら、現実から逃げるように。


ハズキがこうなるのもしょうがないことなのだ。なんせハズキは、オーガに一度殺されている。しかも食い殺されて。

神の前でなんでもないようにこの事を話せていたのは、あまりにも現実離れしすぎていて、頭が追いついていなかったからだ。

しかし殺された元凶を見てしまうと、その時の事を思い出してしまう。それは人として当たり前のことなのだ。



「ハズキ!?」


突然、ハズキが頭を抱え込んでうずくまってしまった。

ハズキは、オーガを見た時から、なにかがおかしかったけど、こうなったのはかなり突然だった。

オーガは、ここから20メートル程の場所まで接近してきており、もう時間がない。


ハズキは、きっと前にオーガと遭遇している。その時に何かがあったのだろう。そのせいで、今こうなってしまっている。


…ハズキはもう駄目だ。この状態じゃ逃げる事もできない。戦闘なんてできるはずも無い。


自分だけでも逃げなきゃ…。


私の頭に、この考えが浮かんだ。

ハズキとは、会ってまだ2日程である。別に私だけ逃げても大丈夫だろう。

ハズキをここに置いていくことで、私の生還率も上がるかもしれない。

私はそう思い、すぐに逃げようと…


「…何考えてるんだろ。私。」


いくら出会って間もない仲間だからって、仲間を見捨てて逃げるなんて、そんなの最悪の手段に決まっている。それに…


「ハズキなんか、初対面で私を助けてくれだもんね。」


そう。ハズキは、初対面である私を、命がけで助けてくれたのだ。しかも、“そこにフラグがあったから”っていう変な理由で。それなら…


次は私が助ける番だ。


「ハズキ。」


私はハズキの肩に手を置き、そっと言った。


「今度は私が助けてあげる。」



「今度は私が助けてあげる。」


「え?」


ハルはそう言うと、オーガに向けて魔法を放つ。


「氷の精よ その力によりて 敵を拘束せよ!“エターナルフリーズ”!」


「グオ!?」


ハルの魔法により、オーガの体が一瞬氷つく。しかし、オーガはそれを軽く身ぶるいしただけではがしてしまう。

しかしハルは、そんな事は気にしないように、オーガに接近し、魔法を打ち込んでいく。


「ハル…」


ハルは果敢に魔法を打ち込んでいるが、オーガには、あまり効いている様子はない。なのにハルは、まるでオーガをこちらに近かせまいと、魔法を打ち込むのを辞めない。


「…俺は何をやってるんだよ。」


過去のトラウマを引きずって、敵の前でひざますいて、その敵を女と戦わせる。そんな奴は最低最悪のクソ雑魚野郎だ。

そんなクソ雑魚野郎に、今俺はなっている。


…そんな男に…成り下がってたまるかよ!


過去がなんだ!トラウマがなんだ!そんな事気にするほうが負けだ!過去のトラウマなんて、今無くせばいいだけの話だろうが!


俺は起き上がってハルを見る。

ハルは、なんとか直撃だけは喰らってないようだが、中々に傷だらけである。

そんなハルを見て、俺はさらに自分が嫌になる。


「サンダーメイク“ランス”!!!」


「グオ!?」


俺はオーガに一発打ち込み、ハルに駆けよる。


「ハル!ごめん!そしてありがと!」


「ハズキ!?…もう平気なの?」


「うん。ハルのおかげだ!助かった!」


「…そっか。よかった。」


「…それじゃあハル。やるぞ!!!」


「りょーかい!」


俺はそう言うと、手に剣を造形しオーガに切り掛かる。

オーガは突然の雷攻撃によって体が麻痺していたのか反応が遅く、躱すことがらできずに切られ、体から血飛沫が上がる。


「グガァァ!」


「チャンス!ウィンドメイク“鎌鼬”!」


「敵を穿て!“フリーズランス”!」


俺とハルの魔法もまともにくらい、オーガはたたらを踏んで、少し下がる。


「ハズキ!少し時間を稼いで!!大技を撃ち込むから!」


「りょーかい!」


今こそ、新造形魔法の出番だ!


「ファイヤーメイク“爆裂”!」


俺の、新・造形魔法を喰らったオーガはさらに2歩程後退する。爆裂は、俺の使える造形で、1番の威力を誇る魔法だ。

後ろでは、ハルが杖を前に突き出し、何やらブツブツと言っている。

もう少し時間を稼いだほうがいいだろう。


「ウッドメイク“プリズン”!」


俺は木の檻を作り、オーガを閉じこめる。しかしその檻は、オーガの一撃によって、すぐに壊された。

檻を壊したオーガは、その勢いのまま俺に近づき、思いっきり拳を振り落とす。


「ウガァァ!」


「ぐはぁ!」


なんとか剣を使って直撃はふせいだが、勢いは殺せず、吹っ飛ばれる。

数メートル吹っ飛ばれた俺は、ふらふらになりながらもなんとか立ち上がる。そんな俺の方に、オーガが確実に殺そうと近づいてきて…


「《氷の精霊よ 我が契約に従い力を》」


そんな言葉が、俺の耳に聞こえてきた。


恐らくハルが言ってた魔法の詠唱だろう。


ハルがそうつぶやくと、ハルの周りの魔力が一気に濃くなる。


「《哀れな者に終焉を》」


次に辺りの気温が一瞬で下がり、氷が浮かび始める。


オーガはこの魔法を、本能的に危険と判断したのか、ハルに向かって突っ込んでいき…


「させねーよ!アースメイク“ウォール”!」


突如出現した土の壁にブチ当たり、動きが止まる。

壁は一瞬で壊れたが、おそらくもう大丈夫だろう。何故なら…


「《穿て!》」


既にハルの魔法は完成していたからだ。


辺りに魔力の渦が巻き上がる。やがて、それがハルの前に集まっていき…


「“氷ノ終焉(アイス・オブ・エンド)”!!!」


全てを凍てつかせる氷の嵐が、オーガを包みこんだ。



「たく、なんだよさっきの魔法。あんなのが使えるなら氷魔法一つでも、入れてくれるパーティはあったんじゃないのか?」


「そうだね。威力はかなり強いし、私のレベルじゃ考えられない程強い魔法だけど、その分欠点も多いんだ。」


「欠点?」


「詠唱が凄い長かったでしょ?あんなの、仲間がいなきゃまず使えないし。それに、いくらあんな強力な魔法が使えても、私のレベルで行くクエストじゃ、確実にオーバーキルだからね。だったら必殺の威力が無くても、多様な属性が使える普通の魔法使いで十分でしょ?」


「な、なるほど」


現在俺達は、街に戻っている途中である。


あのあとオーガはどうなったのかというと、俺が叩き壊した。氷漬けのオーガはかなり脆く、俺が造形したハンマーで粉砕できたのだ。


それにより、俺とハルのレベルは跳ね上がった。俺が32から41に。ハルが27から38にだ。オーガは元々経験値が多いらしく、レベル差もあったため、こんなに上がったらしい。


「とりあえずありがとな?ハルのお陰で戦えた。」


「いいよいいよ!私も助けてもらってるしね!結果的に生きてるんだからそれでいいの。」


生き残った…か。そうだな。

過去の自分への仇打ちもできたんだから、もっと喜んでいいのかもしれないな。


「よし!今日はオーガ討伐記念で、ちょっと高い飯でも食いに行くか!」


「そうだね!クエスト報酬も入るんだし、パーっといっちゃおう!」


俺達はこんなテンションのまま、街への帰路についた。


このあとに、あんな事が起こるなんて想像もせずに…





クエスト報告を終え、俺達は夜の街へ繰り出していた。

報酬の10万Gを持ち、気分はとてもハイだ。


「ハズキハズキ!何食べよっか!」


「そうだな。…昨日はラーメンだったし、今日はガッツリといっとくか?」


「だったら私、ハンバーグがいい!おいしいお店知ってるんだ!」


「ハンバーグか。そうだな!じゃあ行こうぜ!」


俺は、ハルの案内に従い道を進む。

少したつと、居酒屋のような店に着いた。ハルは「ここだよ!」と言いながら店に入っていき、俺も続いて入って行く。


「いらっしゃいませー!お二人ですか~?適当な席へどうぞ~。」


非常にアバウトな接客の声を聞きながら、俺達は席へつく。

店の中は、とてもいいニオイがして、お腹が今にも鳴りそうだ。


「ハンバーグ定食でいいよね?」


「うん。いいぞ」


「お酒は何飲む?」


「…へ?」


今、酒って言ったか?凄いナチュラルに未成年の飲酒を進めたのか?


「あ、もしかしてお酒飲まない?でも、16才だよね?成人は超えてるのに…」


「いや。飲むぞ。そこまで飲まないけど、多少は飲む。…あんまり強くない、飲みやすいのを頼む。」


「分かった。すみませーん。ハンバーグ定食2つと、エールを2つください~!」

「あいよ~」


そんなハルの声を聞きながら、俺は頭を整理していた。

…つまりあれだよな?恐らくこの世界の成人は昔の日本みたいな、15才くらいなんだろう。考えてみれば、異世界物のラノベは15才成人が当たり前だったな。

俺も一応酒は嗜んだ事はあるし、結構好きだ。うん。堂々と飲めるなら文句はないな。

…ほろ◯いくらいしか飲まなかったけど。


そう判断した俺は、ハンバーグがくるまでの間、適当にハルと喋っていることにした。そして…


「お待たせしやした~ハンバーグ定食と、エールで~す。」


「おお…めちゃくちゃうまそう。」


「でしょ~!じゃあ、オーガ討伐を記念して、乾杯!」


「乾杯!」



どのくらいたっただろうか?


俺とハルが3杯目のエールと、適当なつまみを頼み、ぐだぐだとしている時だった。


「お?ハルちゃんじゃん!奇遇だねぇ。俺らと一緒に遊ばねーかい?」


「…いきなりなんです?」


数名の男達が、俺たちのいるテーブルに近いてくると、突然ハルに話しかけたのだ。

…ナンパか?ハルは美人だしな~


「いや、久しぶりにここに来たら、ハルちゃんがいたからね。どうだい?そんな男ほっといて俺達と遊ばねーかい?」


俺達はしばらく男達を見つめて───大声で笑った。


「いやです。あなた達みたいなおじさんと遊ぶような性癖を私は持っていませんから。」


「ぷっ!おい、ハル。おじさんは可哀想だから辞めてやれ!いくらホントのことでもな!」


「あ!ごめんおじさん!普通におじさんだったから、おじさんって言っちゃった!次からはおじちゃんって呼ぶよ!」


俺とハルの言葉により、次は店中が笑いに溢れる。

そんで、目の前の男達は、顔面を真っ赤にしながら、プルプル震えている。そして…


「お前…自分の実力分かって言ってんのかぁ?お前ら…表出ろや!」


「え?やだ。」


俺の答えに、また店中が笑いに溢れた。



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