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序章 少女との出会い


神様と別れた後、とりあえず俺達は冒険者ギルドに向かった。

冒険者ギルドには、さっき見た通り沢山の死体がある。それを埋葬しようと思ったからだ。


「うぅ…」


ハルの口から、そんな声が漏れた。

ギルドの前は、沢山の食い殺された冒険者の死体が散らばっている。

その中には勿論、俺達の知り合いだっているのだ。


「…ハル。キツいなら休んでていいよ?俺がやるから。」


「…大丈夫。やっぱり、知り合いの埋葬ぐらいちゃんとやりたいし。」


「分かった。」


その後、俺達は無言で冒険者達の死体を集めた。中には顔の判別ができないほど酷い死体や、もはや誰のものかわからない手首や足首などもあったが、それらも全て集めた。…ギルドマスターの死体もあった。


外の死体をあらかた集めた後、俺達は中に向かった。中には、外とは比べ物にならないレベルの酷い死体がある。それを見たハルが吐いてしまうレベルのだ。


「ハル。…ここは来なくていい。俺がやる。」


「…ありがと。私、外で待ってるね。」


ハルを遠ざけた後、俺は意を決して中に入る。

中は酷い匂いだった。部屋中から生臭い香りが漂ってくる。

その匂いの中心に、数人の女性がいる。まだ15歳にも届いてないような少女もいた。それらが全て、全裸で酷い状態で床に転がっている。恐らく死んでからも犯され続けたのだろう。その女性全員の表情は、絶望に諦めたようなものばかりだった。


それらを全て丁寧に運び出し、死体を集めているところに寝かせる。


「…ハル。今から燃やすな?」


「うん。分かった。」


いわゆる火葬みたいなものだ。俺は火の造形を行い、鬼火を多数出現させる。それらで一つずつ丁寧に火をつけ、燃やす。


パチパチパチパチ


火の燃える音だけが響いている。


俺とハルはお互い体を寄せ合い、その火を眺めていた。気ずけば既に日は暮れ、夜になっていた。



どのくらい火を眺めていただろうか。

ふと、右の方から足音のようなものが聞こえた気がした。


「…誰だ?」


しかし横を見ても誰もいない。


「…ハル。聞こえた?」


「え?何が?」


「右の方から足音が聞こえた気がしたんだけど…気のせいか?」


1度はそう納得したが、やはりまた聞こえた。

その時、俺は自分が吸血鬼であることを思いだした。吸血鬼は人より何倍も感覚が鋭い。勿論リッチーよりもだ。

…恐らく、誰かが近ずいて来ている。人間か?それとも魔物…?


足音は段々と大きくなってきて、ハルも気ずいたようだ。


「…この足音、人だよね?」


「多分な。」


俺達が足音が聞こえてくる方を注視してると、1人の人影が見えて来た。


「冒険者…ですか?」


人影が問いかけてくる。思ったより幼い。恐らく少女くらいの声だろう。


「そうだよ。あなたは誰?もしかして生き残りの人?」


「…はい。私はカエデです。この街で冒険者活動をやっています。」


その少女…カエデが近いできた。見た目は13歳程の少女で、盗賊風の格好だ。髪は黒のショート。かなり整った顔立ちをしていた。


「私はハル。冒険者だよ…って!カエデちゃん傷だらけじゃない!大丈夫!?」


「うわっ。こりゃ酷い。とりあえずポーション飲みな。」


俺は手持ちのポーションを渡す。それをカエデはゆっくりと飲みだした。


「とりあえず座って。傷も酷いし…」


「はい。ありがとうございます…」


カエデはふらつきながらもその場に腰をおろした。少したてば、ポーションの効果も効いてくるだろう。


「…カエデちゃん。あなたは、ここで戦った冒険者?それとも、避難した冒険者?」


「…私は、避難して方の冒険者です。」


「え?それじゃあなんでそんなに傷だらけなんだ?それに、どうしてフリージアに戻ってきた?」


「…実は………」


カエデの話はこうだった。


避難の途中に、ゴブリンやオークの襲撃があった。これらの魔物は、冒険者にとっては大したことのない魔物だが、民間人にとっては恐ろしい魔物である。

そんな魔物が度々襲撃してきたせいで、避難が遅れたらしい。

こうして避難が遅れているうちに、フリージアが陥落。高レベルの魔物に追いつかれたのだ。

そして、避難組の中では高レベルだったカエデたちがそれを向かい打って時間を稼いだらしい。


民間人の避難は成功したが、カエデ達残ったパーティは壊滅。


「…けど、私は盗賊というジョブのおかげで逃げ切ることが出来ました。」


カエデはそこまで話すうちに、少しずつ声が震えできた。目には涙が浮かんできてる。


「私が…私だけが生き残ったんです。」


カエデの目からは、大粒の涙が零れだした。


「皆が必死に戦って、1番弱かった私を逃がしてくれたんです…そのせいで…皆…死にました。」


カエデの独白は続く。


「命からがらフリージアに帰ってきたと思ったら、既にこの街は壊滅してました」


「沢山の魔物が街を跋扈していたんです」


「少し先で、何やら物音が聞こえました」


「…オーク達が女性冒険者を犯している音でした」


「それを…私は黙って見てたんです」


「するとその冒険者と目が会いました」


「その人は…必死に口を動かして」


「助けて…と言ったんです」


「するとオークもこちらに気ずきました」


「勿論襲ってきます」


「…私は逃げました」


「その人を見捨てて」


「街中では、それ以外の場所でもピンチの冒険者がいました」


「けど私は 逃げて 見捨てて 見て見ぬ振りをしていました」


「そんな事ばかりしていたからでしょうか?」


「気ずけば私は魔物に囲まれました」


「幸いそこにいたのがコボルトエリートの群れだっため、犯されることはありませんでしたが」


「けど、私は散々嬲られ おもちゃにされ 意識を失い…気ずけばあなた達の方に向かっていました」


「…私は、酷い人間でしょう?」


そういってカエデは儚く笑った。


「私は…私はっ…何十人もの人間を見捨てて…今ここにいるんです。」


泣きながら笑うカエデは、なおも自分を卑下しようと言葉を練るが、それは中断させられた。物理的に。


「…ハルさん?」


「大丈夫 じっとしてて。」


ハルはカエデのことを抱きしめていた。決して力強くでは無い。まるで、母親が子供を抱きしめているかのようだ。


「…カエデちゃん…いや、カエデでいい?」


「はい。」


ハルは、諭すかのように話し始める。


「大丈夫だよ。カエデ。そんなに自分を卑下しないの。誰だって怖い思いをしたら、そうなっちゃうから。」


「…けど」


「私もね…この街を守ろうと戦ったの。」


「…」


「けど、守れなかった。」


「 」


「それどころか、私の大事な人を危険に晒しちゃったんだよ。」


「…」


「けど、私はカエデみたいに自分を卑下しない。」


「…なんで?」


「…決まってるでしょ?」


ハルはカエデを自分から離し、カエデと目を合わせる。


「そんな事する暇があったら、私はもっと強くなろうって行動するしね。」


「…え?」


「自分が弱いせいで大事な人を危険に晒した。だったら、もっと強くなるしかないじゃない?」


カエデの目が大きく開かれた。まるで、自分に対しての答えが見つかったかのように。


「…どうやったら、強くなれる?」


カエデは真剣な眼差しでハルに問う。それに対するハルの答えは早かった。


「ハズキに頼みな。」


「…は!?」


…え?まさかの人頼り?あんだけいい話しといてのそれかよ!?

カエデは、こちらを真剣な目で見てくる。


あぁ~?えぇー?おいおいマジかよ…


「…とりあえず、俺達と行動するか?」


「行動?」


「あぁ。少なくとも、フリージアはもう駄目だろ?とりあえず俺はどっか別の街に行こうと思ってるんだ。そこに付いて来るか?」


「…分かりました。よろしくお願いします。」


「おう。」


とりあえずこれでOKか?そんな意味を込めてハルを見る。しかし、それに対するハルの答えは、なんだか辛辣だった。


「…私がいながらも別の女…しかも年下に手を出そうなんて…はっ!?もしかしてハズキはハーレムを作りたいの!?」


「違うからな!?」


その後も何やらごちゃごちゃあったが、結論はこれだ。


仲間が1人増えました。


これにて序章終了!!ここまでご愛読ありがとうございます!!

さて、次回からはやっとほのぼのとしてきますよ!…ここまで長かった?それはごめんなさい!思ったより序章が長くなっちゃいました!


では、第1章で会いましょう!

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