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序章 絶望の味

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ユーザー名→@AMAKUSARIKI

血飛沫が舞い、悲鳴が響き渡り、臓器が飛びちる。少し周りを見ただけで人や魔物の死体が目に入り、そしてまた悲鳴が鳴り響く。

そんな地獄絵図のような光景が、街の中に広がっていた。


冒険者の街でありながら、非常に綺麗な街並みが有名なこの街、フリージア。

それが、見るも無残な状態に陥ってることを気にするとができる者は、残念ながらここにはいない。

ここにいる者は全て、人を殺し、犯し、喰らうことだけが存在価値だと言わんばかりの大量の魔物と、そいつらを、何とかして食い止めようとする冒険者だけだからだ。

既に冒険者達は、魔物の街への侵入を許してしまい、壊滅的な状態だ。

生き残っている冒険者はわずか30名程で、何とかしようと必死に魔物を殺している。

しかし魔物は、殺しても殺しても途切れることなく襲いかかってくる。

その猛攻に、また一人の冒険者が倒れていく。


「イヤァァァ!!誰か…誰か助けて!!」


冒険者の一団から、少し離れた所から悲鳴があがった。

その悲鳴をあげた少女は、数匹のオークに囲まれている。既に服は破られ、その裸身が剥き出しだ。

少女は腕をつかんでいるオークを、何とかして倒そうとするが、すぐに別のオークに阻止される。


「リーナァ!!」


その少女の仲間か恋人だろうか。冒険者の一団から飛び出した男がいた。


「ロイ!!やめろ!!リーナはもう無理だ!お前も死ぬぞ!」


「うるせぇ!リーナを見捨てられるか!!」


男は静止を振り切ってオークの元に突っ込む。そして、手に持っている大剣を構え、オークに切りかかった。彼はそれなりのレベルだったのだろう。オークを一瞬で切り裂くと、すぐに少女を助けた。


「アンガス!!ちゃんと助けたぞ!俺は死んでない!」


彼はそう言って、少女を背負ってこちらに向かって走りだすが…


「ロイ!!後ろだ!!」


「…え?」


後ろから接近してきていたオーガに潰された。

あっけなく、また冒険者が死んだ。


魔障壁が解けてから、まだ20分。

既に街は、壊滅していた。



「氷の精霊よ!我が呼びかけに答え、その力、解き放て!“アイストルネード”!」


ハルの放った魔法により、大量の魔物が吹き飛ばされる。吹き飛ばされた魔物達は、その質量のせいで隕石のような役割を果たし、遠くにいた魔物達にも被害を与える。


「サンダーメイク“落雷”!」


次に、空から大量の雷が降り注ぎ、また多数の魔物に被害を与えた。


現在、俺とハルは街の外で戦っていた。なぜなら、孤立してしまったからだ。

俺達がそこそこ優勢で戦っている間にも、周りの冒険者は劣勢で、いつのまにか街に撤退してしまっていたのだ。

それでも俺達が、たった二人でこの大量の魔物と戦えているのには、俺の作戦のお陰だ。

まあ作戦といゆうか、単純にバリケードを作って一気に魔物が押し寄せてこないようにしてるだけだが。


それにしても…


「…ハル。なんかやけに魔物が少なくないか?」


「そういえばそうだね。…ってあぁ!?ハズキ!街見て!」


「え?街?…はぁ!?」


ハルに言われて街を見てみると、なんだか凄い状態になっていた。

街には防護壁という4メートルくらいの壁があるのだが、まずそれが崩れていた。

続いて、その崩れた防護壁の内側…つまり街の中のことだが、完璧に崩壊していた。黒煙があがり、家は崩れ、時々爆発音が聞こえてくる。


「おいおい!マジでか!?街に撤退したのは知ってたけど、まだ魔障壁が消えてから30分くらいだぞ!?もっとがんばれよ!!」


「私達よりレベルの高い冒険者は何をしてるの…?」


余談だが、既にレベル40強越えの冒険者は、ハルとハズキ以外全員死んでいた。その殆どが味方をかばって死んだのだ。そのせいで、今街で戦かっている冒険者の殆どが、レベル35~40弱。簡単にやられて当然である。しかも、既にこの時生き残っていた冒険者は20名程だ。


しかし、そんな事は知らないハズキ達はここで戦うのか、街に戻るかの選択に迫られていた。

街の生き残りが20人しかいないと分かっていたら、一目散に街へ戻るのだが…


それから、さらに10分程戦っていると、魔物の数がかなり減ってきた。

街の方を見てみても、もう爆発音は聞こえてこない。………さてと。


「ハズキ。どうする?」


「そうだな…とりあえず俺達も後方に下がるか。あと20分もすれば援軍が来るんだ。それまで撤退を繰り返して、時間を稼いでいこう。」


「そっか。あと20分耐えれば…うん。一旦退却しよっか。街の様子も気にな………え?」


ハルの言葉はそこで止まり、声が漏れた。そして、それがどうしてなのか、俺にもすぐに分かった。分かってしまった。


足音が…聞こえるのだ。


姿はまだ見えない。それでも、しっかりと聞こえる。

足音は、止まることなくこちらに向かって徐々に大きくなっていく。


「オーガ…じゃないよな?」


ハルは、そうやって一応確認してくるが、その表情は硬い。


「…この足音の大きさでオーガだったら、もう姿が見えてるはず。でも、周りにオーガはいない…つまり、オーガを超える大きさの魔物………」


俺は、背筋が凍るのを感じた。だって、分かってしまったのだ。この足音の正体を。

きっと、ハルも気ずいた。だって、さっきの言葉以降、一言も発していない。


今回の氾濫の中で、オーガより大きな魔物はあいつしかいない。

やがて、そいつの姿が見えてくる。


南の森の主にして、一体でフリージアの街を大混乱に落としいれる、推薦レベル60オーバーの化け物。しかも、推薦()()()()レベルだ。つまり、レベル60の冒険者が、四人から六人で討伐するモンスター。

二足歩行の牛のような見た目で、その体長は6メートルを優に超える。手には巨大な斧を持ち、ゲームでは序盤から中盤にかけてのボスで登場することが多いいモンスター。

…ギルドでは、出会ったらすぐに尻尾まいて逃げろとまで言われるあいつ………


ミノタウロスの登場だ。


距離にして、まだ100メートルはある。

…まだ、逃げれる。


そう判断した俺は、すぐにハルと目配せする。

ハルはすぐに分かったと首肯し、次の瞬間全力で街へと走った。

ハルが走りだしたと同時に俺も走りだす。

これでもレベル40越えの冒険者だ。今なら100メートルを5秒で走れそうなスピードで、俺達は走る。

途中、突っ込んでくる魔物を吹き飛ばしながら全力で街に向かって走る。


街に戻ればまだ冒険者がいるはず。その人達と協力すればなんとか……

俺はそう判断し、街に向かった。

向かって………しまった…………。





崩れた防護壁から中に入る。

いつのまにか魔物はいなくなっていた。なんだか、ミノタウロスが現れてから急に魔物が減ったのだ。つまり、それ程ミノタウロスは恐れられているのだろう。


………それならなぜ冒険者までいないんだ?


あちこち崩れた街の中には、冒険者の姿が無いのだ。


「…あれ?何でいないんだ?」


「とりあえず、冒険者ギルドに行こ?。そこに皆いるかもしれないし。それに、早くしないとミノタウロスが…」


「うん。そうだな。」


冒険者ギルドは街の中央にあり、もし魔物が侵入してきたら、ギルドで向かい撃つとなっていたはずだ。

だったら、皆ギルドにいるはず。

同じはそう思って、ギルドに向かった。



「うっ……な、何これ………」


「嘘…だろ。」


ギルドは酷い有様だった。

既に建物は半壊し、完璧に建物としての機能を失なっている。しかもそこからは酷い死臭が漂ってきていて、思わず吐きそうになった。


恐る恐る近ずいていくと、もっと酷いことが分かった。

あちこちに魔物の死体が転がっているのは分かるのだが、なんだか、人の手のような物も沢山転がってる。

手だけじゃない。足首や、下半身だけの死体もある。それらを避けながら、俺達はギルドの中に入っていった。


中は、外とは比べ物にならないくらい酷いものだった。あちこちに生首が転がっていて、床には、死んでからも犯し続けたのだろう。酷い状態の女性の死体がいくつも転がっていた。


「うっ…うぉぇぇ!」


「ハル!」


我慢の限界だったのか、横でハルが思いっきり吐いた。

目には涙が浮かんでいて、今も嗚咽を何度も繰り返している。


「ハル。とりあえず移動しよう。」


俺はハルを背負って、もっとマシな場所に移動した。正確には、ギルドの三階にだ。


「とりあえず、これで口を濯ぎな。」


「あ、ありがと。」


ハルが水で口をすすいでる間に、俺は手早くポーションを飲んできおく。このあとに必要だからな。


「…ハズキ。どうする…」


ハルが、とてもか細い声で聞いてくる。…


「逃げる。と、言いたい所だけど、それは無理そうだな。」


「え?」


軽く索敵したのだが、既にミノタウロスが街にかなり近いている。そして、その後ろには…


「グランヒルデがもう来てる。多分俺達に気ずいてるな。雫を通して、魔力を伝えてきた。こりゃあもう逃げれないな。」


「…そっか。」


ハルはそう言って、微かに笑う。そんなハルに俺は笑い返しながら、ある事を言った。


「けど、あと10分耐えれば、助かるかもしれない。」


「…え?」


驚いているハルに、俺は証拠を見せる。


「これは…?」


「王国からの連絡だ。多分ギルドマスターが最後に、連絡したんだろう。その返事だ。」


その紙には、こう書いてあった。


“10分後、剣神がそこにつく。それまで耐えよ。”



「潔いのお。まさかそちらから出てくるとは。」


「どうせ見つかってるなら、せめて正々堂々とやりたくてね。」


「それに、あんたに直接魔法ぶちこみたいからね。」


俺達は、グランヒルデと向かいあっている。

なぜこんな無謀な事をしたかというと、グランヒルデを街に入れちゃ駄目だからだ。

だから街の外にでて、正々堂々時間稼ぎにきたのだ。


「お主ら、まさか妾に勝てるとでも思っているのか?」


「そんな訳あるか。これは唯の格好い自殺だよ。」


「格好い自殺…なるほどのう。面白い事を言うではないか。」


そう言って奴は笑う。それはもう高らかに。口を開けては、大きな声で。


「それで、本命はなんじゃ?」


「…本命?」


「お主の狙いのことじゃよ。まさか本当に、只の自殺ではあるまいしな。」


「…」


冷や汗がしたたり落ちる。けど、ここで真実を言えば、一瞬で殺されて終わりだろう。

しかし、奴はこちらが何か言う前に喋りだしてしまった。


「まあ、大方時間稼ぎだろうがのう。しても無駄なのじゃが。」


「…は?」


こいつ…今なんて……無駄?


グランヒルデは、俺を見ながらニヤニヤと笑う。


「実は、お主らの為に派遣されてきた王国軍と、それを率いてもいた剣神とやらは…」


あ、もう察した。これはあれだ。


「既に殺しておるからのぉ。」


俺、死ぬな。



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