「朝」
朝。
僕はいつもの電車に乗り、いつもの通学路を歩き、いつもの教室に入る。
でも、いつもとは確実に違うものがあった。
マリの存在。
マリのおかげでポジティブになれた。マリのおかげでモブをやめる覚悟が出来た。そんなマリの事を、誰よりも近くで見ていたいとも思った。
今日は、また雑談程度で終わっておこう。前回のような失敗をしないように、話題は三つ持ってきた。これをうまく組み立てて話すことが出来れば、楽に会話が進められるはず---
「あっ、おはよう!カズマ君!」
「っ!?あっ、ぉ、おはようマリ」
心臓が止まるかと思った。いや、一瞬止まった自信がある。
まさかマリの方から話しかけてくれるなんて、思ってもいなかった。ここですかさず、僕は雑談用の話題の一つ目を提示する。
「この街、どう思った?」
一番無難な質問だと思う。昨日考え込んだ結果、一番に持ってくるべきがこれだと思った。それに対してマリは、
「そうだね、とってもいい街だと思うよ!人も優しいし、みんなフレンドリーに接してくれるの!」
「へぇ...ちなみに、マリが前にいた場所はどうだったの?」
「私が前いた場所はねぇ...田舎すぎて人があまりいなかったから...で、でもね!いい人ばっかりだったんだよ!人は少なかったけど...」
「へ、へぇ...」
田舎出身という事実は初耳なので驚いた。なるほど田舎出身と聞くとこの性格の良さは納得できる。
僕は、これ以上話を広げるとこちらの会話が続かなさそうだったので、急いで次の話題に切り替えようとした。
その時。
「おはよう、マリちゃん」
佐藤が会話に割り込むように強引に入ってきたが、僕は抵抗できない。この人は、喧嘩になるととても怖いと聞いたことがある。
「おっ、おはよう、佐藤君...」
少し歯切れが悪い挨拶だった。昨日、何かがあったのだろうか。いや、いくら佐藤でもそんなことはしないだろう。きっと気のせいだ。
「そ、それでねマリ」
「マリちゃんは、この学校にはもう慣れた?」
佐藤が割り込んだままマリとの会話を始める。マリも少し戸惑いつつ、会話に応じていた。
当然だ。まだ彼氏になったわけでもないのに、主人公様になんて敵うはずがなかった。
「ちょっと...ちょっとカズマ!こっちこっち!」
と、少し落ち込んでいたところに奈留が腕を引っ張ってきた。
「何やってるの、昨日の威勢は何処へ行ったの!?」
「お空の上...かな」
「もっとガンガン攻めたらいいのに、なに佐藤なんかに負けてるのよ!バーンと行け!バーンと!」
「バーンってなんだバーンって!大体交友関係には順序ってものがあるだろ!それを一段ずつ踏んでるの!」
「順序、順序...あ、そうだ!」
とても明るい顔をしながら、奈留は突然こう言った。
「作戦、中止しよ!」
どうも、齋藤和馬です。
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