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渡リ烏のオカルト日誌  作者: 黒木京也
第二章 D校舎の秘密
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旧校舎にて待ちいたり

「お久しぶりです。吉川先生」


 挨拶と共に職員室に入ると、酷く懐かしい顔が僕とメリーを出迎えた。

 ノッポな体躯と天然パーマ。お洒落な眼鏡から知的な印象を受ける……と、見せ掛けて、タレ目のせいで、いまいち威厳がない男性。

 僕が五年生から卒業までお世話になった、吉川(よしかわ)飛鳥(あすか)先生だった。


「ああ、滝沢君。懐かしいね。放浪癖は治ったかな?」

「残念ながら、今も。寧ろ行ける場所が広がった分、悪化したかもしれません」

「おやまぁ」


 独特のゆったりしたテンポ。卒業して結構経つというのに、彼は僕の所業を忘れてはいなかったらしい。「そんなに僕、フラフラしてましたか?」と問うと、先生はそりゃあもう。と言わんばかりに頷いた。


「因みに、君が放課後に寄り道した回数の記録は、まだ破られていませんよ。私としては破られない事を望みますけどね」

「お恥ずかしい限りです。一応、昔ほどやんちゃではないつもりなんですが」

「まぁ、落ち着いたのは確かでしょう。君が恋人さんを作る日が来るなんて、私は想像もつきませんでしたよ」


 ばつが悪そうにそう返す僕。それに対して、先生は何処か懐かしさを瞳に滲ませながら、柔らかく微笑んだ。

 然り気無く変な勘違いをしているが、今はそれより重要な事があるので、軽く流すに留めておいた。


「それで……。本日の件ですが、了承していただけるでしょうか?」

「旧校舎の写真が撮りたいという?」

「はい。是非」

「君、一時期通いつめていましたからねぇ。まさか廃墟が好きだったとは思いませんでしたよ。写真部で個展を出すんでしたっけ?」

「ええ。偶然取り壊されるという話を聞いたら、いてもたってもいられなくて」


 罪悪感が少しわく。無論、この理由は真っ赤な嘘である。

 僕は写真部ではないし、個展など出す筈もない。

 そもそも、旧校舎は生徒の立ち入りが禁じられている場所だ。当然ながら、一般の人が入ることは叶わないだろう。

 ではどうするか。そこは少し独特の手を使うのである。

 田舎の小学校特有なユルさ。卒業生という自分と、母校が改装するからという細やかな後ろ盾。その辺を交渉に利用するのだ。

 廃墟マニアでその写真を撮るという建前と、とある先輩から借り受けた一眼レフを引っ提げてハリボテのキャメラマンと化した僕を、吉田先生はまじまじと見つめていた。


「廃墟に私のコレクションは入り用で?」

「いや、いらないです。というか、何で机にフィギアがそんなに飾ってあるんですか」

「いやぁ……ちょっとした切っ掛けで嵌まってしまいまして。机は唯一の自由空間なもので」


 肩を竦めながら先生は悪戯っぽく笑う。他の先生の机を見ると、成る程。確かに個性あるものばかりだった。

 サンリオ。ディズニー。アンティーク風。鉄道系の雑誌等。これでいいのか小学校とは思ったが、先生曰く、「うちの校長は寛容だから」とのこと。


「まぁともかく。中道先生からもOKは出てますので。器物損壊やモラルに反した事をしない限りは、好きに散策してくれて構わないですよ。あ、幾ら美人さんな彼女だからって、神聖なる学舎でヌード写真は……」

「先生、セクハラって知ってます?」

「ハハッ、冗談。冗談ですよ」


 廃墟とヌードの調和は素晴らしいかも。何て思ってしまった事はさておき。どうにかOKは貰えたらしい。

 その最中、然り気無く視線を中道先生の席へ向ける。

 四面、六面、八面、十面、二十面。緑と黒という見にくそうな色合いのサイコロが、積まれた本の周りに無造作に転がっていた。

 その前に腰掛けながら、中道先生は読書に勤しんでいる。見た目は完全な体育会系故に、アンバランスな感じが否めなかった。

 ふと、視線が合う。読んでいた本を閉じて、中道先生は屈託なく笑った。

 それは、もうやんちゃするなよ。といった、教え子を見守る姿にも。変なことはしてくれるなよ。といった、警告の意のようにも取れるようだった。

 強張った肩を億劫そうに動かして、中道先生は読書に戻る。よく見ると、首からは革紐で授業等に使うには少し難儀しそうな、石笛らしきものがぶら下げられていた。


 ※


「どう思う?」


 旧校舎の入り口にて、メリーが問い掛けてくる。


「……ブライアン・ラムレイ。『タイタス・クロウの帰還』『地を穿つ魔』『幻夢の時計』……他にもまぁ、〝肩のアレ〟とか色々。嫌な予感しかしないね」


 そう答えながら、メリーを横目で見る。彼女もまた、僕を見ていた。

 どちらからともなく手を繋ぎ、離れないよう指をしっかり組む。


 とある事件をきっかけに、僕らは非日常と対峙するときは決まってこうしている。

 手を組む。指を結ぶ。迷信と侮ることなかれ。こうした事で窮地を脱した事が、そこそこあったりもした。

 あと、こうして触れ合っていると、僕の干渉と相互作用を起こすのか、メリーの幻視(ヴィジョン)がより鋭敏に作用するという、隠れた特性も有している。どちらかといえば、此方が本命だ。

 つまるところ、これは僕らなりの探索スタイルという訳である。


「これは……」

「怪しいわね」


 そんな形でD校舎に入り込み、目的地へと進む僕らを待ち受けていたのは、相変わらず埃っぽい床と、いつかのようなねっとりとした視線。そして……。入り口を封鎖していたあらゆる物品が取り払われ、傷だらけながらも光沢を放つ床と踊り場を晒した、〝三階への階段〟だった。


 進む道すがら、僕ら無言を貫いた。ホラーやオカルト好きなら幽霊や超常現象は平気になる。それは偏見だ。

 戦場に慣れはしても、緊張は欠かさぬ兵士のように。僕らもまた、未知なるものへの畏れと興味で、身が適度に強張っていた。


「辰、見て……」

 

 階段を上がり、廊下へ。そこには見るからに不気味な模様が、赤いペンキによっていくつも描かれていた。

 円の中に、歪な五芒星。中心は目だろうか。それを見た時、僕は頭の中にチリチリとした疼きが走った。

 まるでフラッシュバックのように、映像が浮かび上がる。幽霊と、逃げる僕。扉にはつい今しがた見た、赤い歪な星マークが。


「これだったのか」

「……え?」


 僕の呟きに、床の模様を眺めていたメリーが怪訝な顔で僕を見る。唾を飲む音を他人事のように感じながら、僕は床の魔方陣に手を伸ばす。

 埃被った床とは対照的に、それらは塗装が剥げた様子はない。最近塗られたものにしか見えなかった。


「ねぇ、見て」


 メリーが更に前方を指差す。奥の教室。その扉に、またしても床と同じマークが刻まれていた。

 頷き合い、そこへと歩み寄ると僕は扉に手をかける。音を立てては入り口は開かれて。


『…………ヒヒッ』


 何もない教室の真ん中に嗤い声が響いた。そこにはポツンと置かれた木製の学習机があり、その上に体育座りする影がある。

 髪も。肌も。服も。何もかもを血に染めた不気味な出で立ち。

 いつかの少年の幽霊が、薄ら笑いを浮かべながら、僕らを出迎えた。


「――ッ!」

「――ぅ!」


 息を飲む僕とメリー。突然の遭遇は、僕らの背筋を凍らせるには充分すぎた。

 手を強く握り合う。すると幽霊は虚ろな瞳のまま、僕らを見つめて……。


『ヒヒッ……ヒヒッ……ヒヒヒッ……ウラ』


 そう言いながら少年はゆっくりと血塗れの指を動かし、教室の一角を指差した。劣化し、色の剥げた黒板だ。かなり古い型らしく、壁に嵌め込まれたタイプではなく、木の骨組みの上に立て掛けるものらしい。

 訳も分からずに少年と黒板を見比べる。見ろ。そういう事なのか。


「……行ってみましょう」


 メリーがそう促す。僕は何かあればすぐ動けるように、少年から目を離さぬまま、黒板に近づいた。

 メリーが受信で、僕が干渉。つまり、こういう事態の場合は僕が頑張るのだ。

 具体的にと言われると返答に困る。取り敢えず叩く、押さえるといった原始的な方法が一つ。少年の霊ならば、何とかなる……かもしれない。本当に見た目通りならだけど。


「どう? 何かある? あるいは何か感じる?」


 メリーが黒板が動かす音を耳にしながら、少年を睨み付けたままで僕が問う。息を飲む気配がしたところを見ると、何かあったのは間違いなく……。


「……骨よ」

「……へ?」


 不意に飛び出した脈絡のない単語に、目を白黒させると、メリーはもう一度、「骨だわ」と、答える。何が? と、聞くのも野暮だろう。想像ができた僕は、覚悟を決めてそれを見る。


 黒板をどかした壁には、少し大きめの裂け目があった。

 そこから……。

 何本か髪の毛がへばりついた頭蓋骨が、こちらを覗いていたのだ。


「…………なんで」


 白骨死体なんて、どんな過程を経て出来るのか。その理屈は分からない。いつかのホテルでの騒動は、夢の中で分かりやすい死体としてセラが用意したもの。だが、ここにあるのは紛れもない本物だった。

 汗ばんだ指が絡むのもお構いなしに僕らは更に手を握り合い、息を止めて死体を凝視していた。

 この骨は、僕があの日このD校舎に入り込んだ時もここに置かれていたのだろうか。


「ぐ……うっ……」

「メリー!?」


 その時だ。メリーがこめかみを抑えながらよろめいた。咄嗟に身体を支えてやると、彼女は少しだけ震えながら、荒い息をついている。見覚えのある反応だった。


「よりにもよって……」


 苛立たしげに、悪態をつくメリー。無差別かつ唐突に幽霊やオカルト現象を感じ、視界に収めうるメリーは、この場に来たことによって、死体の念を受け取ってしまったのだろう。

 活動中には度々起こりうる事態。故に僕は彼女の手を離さぬまま、白骨死体と少年の幽霊を交互に見る。

 死体は、既に目玉などない筈なのに、まっすぐ僕達を――。今を生きる者共をにらんでいる。そんな気がした。


「これは、君なのか? あの時も、僕にこれを見つけて欲しかったの? ……いや、そもそも」


 霊に語りかける。血塗れの少年は、相変わらず薄ら笑いを浮かべながら、僕とメリーを眺めていた。


「……君は、何がしたいんだ? どんな未練があって、ここに留まっている?」


 D校舎には白骨死体と、血染めの少年霊がいた。これが何を意味するかは分からない。取り壊される寸前に僕の元へ話が舞い込んで来たのも、ただの偶然というより、死者からのメッセージのように思えてならなくて。

 僕は少年にそう問い掛けた。すると……。


『出ラレナイ。囲マレテイル。……出タイ』


 少年は悲しげな表情で、そう呟いた。


 ※


 その後僕らは、直ぐに警察へ通報した。あの後幽霊はただ沈黙し、忌々しげに扉や廊下に描かれていた魔方陣を睨み付けているだけ。僕らに干渉してくる事はなかった。

 僕らはというと、警察から簡単な事情聴取を受け、特にお咎めなくリリースされた。

 事件性の高い現場の第一発見者とはいえ、僕らは完全な流れ者だと分かったからかもしれない。

 また、中道先生も警察に任意同行されていったらしい。一応あのD校舎を管理する立場故にだろう。

 何を聞かれ、何を話しているのかは僕らには確かめようがない。だから、これからどうなるかも、分からなかった。


「……この件からは、一旦手を引いた方がいいと思うわ」


 その日の夜。宿に取った安ホテルのベットの上で、メリーはそう呟いた。

 薄桃色のバスローブ姿に、お風呂上がりで上気した肌と湿った髪。正直物凄く目のやり場に困るのだが、それは言うまい。平常心に戻るべく僕はブラインドの下ろされた窓から外の景色を覗き見る。

 田舎の少し栄えた繁華街は、既に照明が落とされ、暗い夜の帷を成していた。何年たってもここは変わらなそう。なんて思いながら、僕は「一旦?」と、首を傾げてみた。言わんとしている事は分かるので、その確認だ。


「現場検証だとか、身元確認だとかあるでしょう? 新しい情報が集まるまでは、私たちに何か出来る事はない。もう旧校舎にも入れなそうだし」

「……情報が出揃うまで、待つ。と?」

「あの幽霊だって黙りだったじゃない。しかもあの旧校舎に縛られているみたいだし」

「……そうだね」


 確かにメリーの言う通り、僕らに出来る事はなくなってしまった。オカルト的事情を見つけても、死体があるならそこは警察の仕事だ。だが……。


「誰がやった。とか、わかると思う?」

「無理でしょうね。まず証拠がないわ。どんなに中道先生が怪しくても……ね。私たちがD校舎に入るのを止めようともしなかったし、そもそも取り壊すって通達が出てても、何のアクションも起こしてないときてる。幽霊関係は警察に言っても無駄でしょうし」


 つまり、何も出来ない。ならば学生たる僕らが、長い間ここに留まる事は出来ないだろう。

 流石に何日も大学をサボるのは不味いのだ。

 くぁ……と、欠伸を手で抑えるメリー。もう寝ようか。という空気になり、部屋の照明を落として僕らはベットに潜り込む。経済的事情からツインではなくセミダブルルームにしたお陰で、二人で一つのベッドに入ると少し狭い。

 背中合わせで感じるメリーの体温が、肌を伝う。夏場という事もあり、少し暑いが、かといってタオルケットをはね退ける気にはなれなかった。


「そういえば、あの幽霊と対峙した時、何が視えたんだい?」

「……ああ、あれね。事情聴取とかでドタバタしてたから、すっかり忘れていたわ。結構重要そうだったのに」


 そう言って、メリーは後ろからバスローブの袖を引っ張ってきた。もう少し話を。という合図だった。

 背中合わせから向かい合う形になる。メリーの瞳は再び点けられたスタンドライトの光を浴びて、不思議な輝きを放っていた。


「見えたのは……女の子だったわ」

「女、の子?」


 あまりにも脈絡もなく、予測できなかった内容に、僕は思わず彼女へもう一度問い掛けてしまう。戸惑う僕を神妙に見つめながら、メリーは頷いた。


「女の子よ。両目を潰されて。魔方陣……模様はD校舎のものとは違ってたけど、ともかくその上に全裸で寝かされていた。もう既に事切れていたわ」

「それって……」


 あの猟奇殺人事件と同じ手口だ。けど、女の子? あの白骨死体は、少年霊のものではなかったのか。

 ここに来て関係ないものを受信した? いや、それはあり得ない。現場にいるならば、彼女は十中八九そこに関連するものを視る筈。つまり……。


「ええ。見えた女の子は、D校舎の床に倒れていたわ。だから間違いなくあの場では女の子が殺されている。あるいは、殺された後に運び込まれているわ」

「犯人は? 犯人は見なかったの?」


 僕が少しだけ興奮気味に問い掛けると、メリーは目を伏せ、静かに首を横に振る。そして……。


「犯人だとは断定できないけど、見えたのはもう一人。今日見た顔よりだいぶ若かったけど……中道先生。彼を見たわ。教室の入り口に、唖然として立っていた」


 少しづつ。僕の頭の中である仮説が組み上がってくる。

 それは歪な立体パズルのように、酷く脆い出来映えだった。

 当然だ。これはあくまで、僕の想像なのだから。

 推理なんて芸当は、一介のオカルトサークルには荷が重い。

 僕らが出来るのは調査と探索。そこで何かを成しえる事もあれば、何も得ず逃げ帰ってくることもしばしばだ。

 だから、僕に出来るのは想像。悪く言えば妄想だ。あれやこれやと考えて。違うか違わないかも分からないまま、勝手に一人で……否、メリーと二人であるかもしれない真実の恐怖に震え上がる。


「ねぇ、メリー。僕の妄想、聞いてくれるかい? 君が見たのも踏まえて、色々議論したいんだ」


 僕の言葉に、メリーは嬉しそうに目を細めた。


「いいわ。今夜は私を……寝かさないで」


 そう悪戯っぽく笑いながら、色々と誤解を招きかねない発言と共に彼女は頷いた。



 キーワードはたくさんある。


「何を見た?」と問う先生。それに正直に答えた僕。

 僕が入り込んでから、封鎖された三階。

 昔の僕を執拗に止め、怒りを露にした中道先生。

 幽霊の発言。

 白骨死体は女の子。

 猟奇殺人事件の顛末と、捕まっていない犯人。

 D校舎の至るところに存在する、魔方陣。

 中道先生の机。

 床と踊り場。


 さぁ、妄想を膨らませよう。


 ※


 明け方近くまで議論しつくした僕らが目を覚ましたのは、日がだいぶ高くなってからだった。

 メリーとは背中合わせで寝入った筈なのに、朝起きたら抱き締め合って寝ていた。なんてベタベタな展開があったりしたが、それに関しては今更どうこう言う必要は無いだろう。わりと色々な所に出張する僕ら。一緒に一夜を明かしたのも、一度や二度ではない。

 だからメリーよ。ドキマギしながら目を反らすのは止めて欲しい。僕も反応に困る。


「私、メリーさん。昨夜は激しくて……彼に寝かせて貰えなかったの」

「議論がね。あとメリー。恥ずかしいならそんな事口走らなくていいから」


 照れを誤魔化そうとして、余計どつぼに嵌まる例が目の前にある。色白だから赤くなれば目立つこと。

 微妙に脈が早くなってる僕も人の事は言えないけれど。


 それと小学校で白骨死体が見つかったという事件は、翌日にはニュースになっていた。

 警察が犯人を追っている。といった話をしている辺り、中道先生も釈放されたのだろう。メリーの幻視(ヴィジョン)による情報が警察側にない以上、十年前の猟奇殺人事件と関連付けられるのはいつになるだろうか。


「意外とすぐかも知れないわ。こういう身元不明の遺体が出た時って、まず届け出がある行方不明者から当たるって聞いたことがあるもの」

「そうなの?」

「親戚に警察関係者がいるの。鑑識でね。お世話になってるお姉ちゃんの、兄貴分」


 取って付けたように「おじさん元気かしら?」と言うメリーを尻目に、僕は手早く準備を進める。さっさとチェックアウトして、大学に戻らねばならないのだ。


「じゃあ、もう少し動向を見守ろうか。死体が本当に十年前の猟奇殺人事件の行方不明者だったら……また動こう」



 そうして、僕らは暫し日常に戻る。

 数週間後、追加のニュースによって事件の進展が語られた。


 白骨死体は十年前、猟奇殺人事件が起きていた頃の行方不明者、横山(よこやま)由美(ゆみ)ちゃん。当時九才のものと分かった。

 やはり事件の犠牲者か? という話でテレビが沸き立つ中。それを見た『渡リ烏倶楽部』はひっそりと行動を再開した。

 目指すは再び、僕の故郷。中道先生の所へだ。

解答編は、本日夜八時に

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