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アンジェ・ドロワーズ

「よお。蛇目の旦那」

「……なんだダンジか」

「久しぶりですな。半月前のフローレンスの舞台以来ですか。今日は何しに?」

「仕事だ」

蛇目と呼ばれる爬虫類を思わせる背の高い痩せた男と、ダンジと呼ばれる初老の太ったタヌキみたいな男がヨシワラの関所で出会った。

彼等の職業は女衒――つまり人買いである。

この世界の人身売買は違法だ。しかし、農村などは娘を売らなければならない非常事態な時もある。国の偉い人達はこの問題を解決する為に行政から許可を取った女衒屋を苦肉の策に生み出した。

そうしないと売られた娼館が劣悪な所で娘達が死んだり、犯罪組織の資金源になったりするからだ。


女衒屋の収入は女達を売った娼館(国公認)の紹介料なのだ。(因みに娘の親達に払う金はまた別の料金なので、彼等の懐は痛まない)

だから彼等は紹介料を多く払ってくれる所を選ぶし、基本彼等は善人なので、娘達が幸せになれる所に売りたい。その二つの思いが叶えられるのがヨシワラである。

余談であるが、全員フローレンスを抱いており、その素晴らしい性技に見事嵌り、全員フローレンスのファンとなった。


「仕事ですかな。そう言えば最近シャレーンが重税し始めて、子供の身売りが多くなったと聞きやすが……で、子供は何処に?」

「あそこで遊ばしている」

蛇目がキセル煙草で示した先には二人の女の子が花冠を作っている姿だ。


一人の女の子はまだ十歳位で儚げな印象を持つ整った顔だ。育て方次第では花魁クラスに化けるかもしれない逸材だ。将来が楽しみである。

もう一人は……


「……旦那」

「何だ」

「あっしの目にはまだ四歳位の幼児にしか見えませんが」


ダンジの言うとおり、もう一人の女の子はまだ幼児と言っても良い程にあまりにも幼い子供だ。もう一人の女の子に花冠を頭に被らせてもらって大喜びで笑っている。


「一昨日五歳になったばかりだ」

「いやいやいやいや」

と、然と答える蛇目にダンジは思わず立ち上がる。

「そんな問題じゃあないですよ旦那。いくらなんでもアレは幼すぎでしょうが」

女衒屋に売られる子供の年齢は特に決まってない。だが、彼等の良心により『最低でも七歳から』と言う暗黙の了解がある。売る親もつい最近まで赤子だった自分達の子を売るなんて出来ない筈だ。

「まさか、あの子の親が相当の屑だったんですか?」

「いや。そもそもアンジェ――あの子供の名前だ――から身売りしたいと言ってきたんだ」

「はあ!?」

思わず声を荒げるダンジ。

そこから蛇目は語りだした。











オラが生まれ育った村は小さな村でした。

そのせいかそこに住んでいた村人全員が家族の様なものでのんびりと仲良く暮らしていました。


オラはその村の一農家の三番目に産まれました。

オラはどんくさく、年子の妹の方が早く物事を覚える事が良くありました。

それでもおっとうもおっかあも兄ちゃんも姉ちゃんも嫌な顔一つせずオラの事を大切にしてくれたし、妹も優しく可愛がった。村の人も庄屋様も皆良い人だった。


その平和が崩れたのは突然の事だった。……と言う訳ではない。

子供のオラには大人の難しい話は分からないけど、分かる範囲内だと偉い人がゼイを上げたせいで払う物がないって。

このままだとミウリしかないって言うけど、ミウリできるのが姉ちゃんしかいないって。でも姉ちゃんはイイナズケがいるから駄目だって。


『ミウリ』位は馬鹿なオラでも分かる。確か娼館に売られてそこで一生を過ごすって隣のじいちゃん、ばあちゃんが言っていた。

姉ちゃんはレイと言う庄屋様の息子と来月結婚する予定だ。レイ兄ちゃんはオラにも優しくしてくれる優しい人です。姉ちゃんはレイ兄ちゃんの事が大好きでした。それはレイ兄ちゃんも同じです。

どうすれば良いのか悩んだオラですが、あるグッドアイデアを思い浮かびました。


そうだオラが売られれば良いんだ!

 

一生おっとう達に会えなくなるのは悲しいけど、それでもお馬鹿なオラにはせめてもの恩返しと思えたからだ。

そんな時にやってきたゼゲンヤの蛇目さん。その名の通り蛇みたいな顔の恐い感じのお兄さんで最初声を掛ける時はとても度胸が言ったけど、話してみたらそう悪い人ではなかった。

自分からミウリすると言った途端、飛び上がる様に驚いて、畑に落っこちてしまったのだ。

人買いの癖に何度も止めるよう説得されたり、子供がそんな事言うなと説教されたりしたけど、オラの意思が強いと知ると結局あきらめてくれました。


その後、両親や他の村人達にもこの事を言うと、それはもう反対の声一色でした。蛇目のお兄さんも責められて申し訳なかったけど、蛇目さんが庄屋様達を説得してくれて売られる事が決まった。

村から出る時はおっとう達に何度も泣きながら謝られた時は本当に胸が張り裂けそうな思いだったけど、姉ちゃんの幸せの為、村人達の幸せの為にオラは笑顔で村から出て行った。


ヨシワラに行く道中でシャーロットお姉ちゃんと出会いました。

シャーロットお姉ちゃんはオラと同じ様に自分からミウリしたいと蛇目さんに近づいたのです。何でも小さい頃からシャーロットお姉ちゃんの見た目によって来る害虫が多いので、いっその事自分から娼婦になって売れっ子になりたいと言うのです。

蛇目さんもオラの時とは違ってすんなりと連れて行った。本当ならシャーロットお姉ちゃん位の年頃が本来なら売られても良い年頃だって。


そんなこんなでヨシワラにやってきたのだ。関所で色々手続きがあるので待っている間シャーロットお姉ちゃんが花冠を作ってくれた。スラムには花なんてない筈なのに、一回オラが教えただけで一発で作るなんて凄い人だ。

手続きが終わって早速ヨシワラに入ろうとした時にタヌキみたいなまん丸お腹のダンジさんに飴玉をくれた。良い人だ。

ヨシワラは煌びやかで初めて見るものばかりだ。思わず周りを見回していたらシャーロットお姉ちゃんに「田舎者みたいだから止めなさい」と怒られた。オラ田舎者だから良いもん。


何だが大きなお城みたいな屋敷に入って、長い廊下を歩いていた。

「良いかお前等。今から会う人はこの国の女王様だ。普通の国ならお前等の様な庶民には滅多にお目にかかれない凄い人だ。だが、あの人は慈悲深く、懐がデカイ、美しい人だ。粗相のない様にしろよ。俺はあの人に嫌われたくないからな」

蛇目さんがうっとりした様な眼で空を見る。よっぽど美しい人だろう。シャーロットお姉ちゃんは呆れた様な眼見てる。

一番奥の部屋に一人の女性が立っていた。お尻とおっぱいが大きい綺麗なお姉さんだ。(隣のじっちゃん曰く、安産型らしい)

「其方の方々が新しい子ですか?」

「そうだ」

お姉さんはちらりと私を見た。

「……まあ、小さい子の方が色々と仕込めて、長くいさせる事が出来ると言うけど……そこまで酷いの?」

「俺が見た限りは、城下町は皆疲れた様な顔をしていたな。その内農村だけじゃなくて街からも身売りする子が出るぞ」

「無許可の女衒屋が出回るわね。農村だとある程度の繋がりがあるけど、城下町とかはそんな繋がりがないから危ないわね」

「そこは俺達がなんとかする。フローレンスは優しいからな」

「ええそうね。さあ、待たせているから早くお入りなさい。……フローレンス様。蛇目が新しい子をお連れしましたよ」

お姉さんがノックすると「入っていいわよ」と中から声がした。部屋に入ると……



目の前が真っ白になった。



「そう。その子達が新しい子? 分かったわ、何時も通り私はこの子達とお話をするから二人はお外で待っててね。確かロルフェさんが美味しいお菓子を持ってきてくれたからそれを出してちょうだい。蛇目。色々お話をしたいけど、今はこれだけで許してね?」

「いえ! 光栄の極みです!!」

フローレンス様が蛇目の額にキスを一つ落とすと蛇目の目はハートマーク一色で、ルンルンとスキップして部屋から出て行った。秘書さんはその姿に呆れたように溜息を吐いて部屋から出た。


「こんにちわお嬢さん達。遠い所から来たから疲れたでしょう? 美味しいお菓子を食べて元気出してね?」

フローレンス様は後から来たメイドさんから受け取ったお菓子と紅茶を持ってきた。

俗に言うアフタヌーン・ティーでティースタンドにサンドイッチやらスコーン・ケーキやら見た事もない様な美味しそうな食べ物を見て思わずお腹の音がグーっと鳴り始めた。それはシャーロットお姉ちゃんも同じの様で思わず真っ赤になっていた。

オラ達の様子にフローレンス様は微笑んだ。

「いっぱいあるからおかわりしても良いのよ。さあ、召し上がれ」

フローレンス様のお言葉に甘えてオラ達はお菓子を食べ始めた。

初めて口にした食べ物は、それはそれは美味しい物で、産まれて初めてこんなに美味しい物を食べて感動のあまり泣きそうになった。後、村の皆にも食べさせたいなーとちょっぴり思った。

シャーロットお姉ちゃんもお菓子や紅茶の美味しさに目から涙が溢れてきた。「美味しい、美味しい」と、譫言うわごとの様に言い続けている。

フローレンス様は私達の様子に笑いながらお茶を飲んでいた。




オラ達のお腹も大分落ち着いた所でフローレンス様から話を始めた。

「さて、二人共。貴女達の前世の記憶を信じる?」

突然の言葉にオラは飲んでいた紅茶を拭きだした。それはシャーロットお姉ちゃんも同じだった。

「その様子は前世の記憶があるようね」

特に驚きもしないフローレンス様は紅茶を一飲みするとスリットの入ったドレスから艶めかしい足を大胆に組んでいる。

「……フローレンス様も転生者ですか」

「えっ!? シャーロットお姉ちゃんも!?」

「私はこの部屋に入って、フローレンス様のお顔を拝見して直ぐに」

「オラもだよ。オラも部屋には行ったら大人になったあのフローレンがいたから吃驚しちゃった」

「……何だか良く分からないけど、詳しくお話をお願いできる?」

「……フローレンス様は乙女ゲームと言うのをご存じで?」

「おとめげーむ? ……ごめんなさい。私、昭和生まれだから良く分からないの」

フローレンス様が昭和生まれなのに驚いて思わずずっこけそうになったオラ達であった。


そこからシャーロットお姉ちゃんが詳しく話してくれた。

とある乙女ゲームがこの世界、住人に酷似している事。

そのゲームは大人気でアニメ化や漫画化などメディア進出した事。

そしてフローレンス、本名フローレン・メイリス・シフォンズはそのゲームの王子の婚約者候補・・として登場する事を。




「婚約者『候補』? どう言う事なの?」

「ゲームでは王子の最有力婚約者候補として主人公の前に現れます。立場としては婚約者候補として平民育ちの主人公に真っ正面から衝突します。しかし主人公の直向きな姿に徐々に認めて、最後には王子と結婚できるように影から手助けをします。ライバルキャラからお助けキャラに転身するわけです」

「ゲームではそこまでしか書かれていないけど、アニメや漫画では『フローレン』は最後に他国の貴族の好青年に見染められる場面シーンがありますだ」

「ふ~ん。結構ご都合的な所もあるわね」

「全年齢ですからそれ位がちょうど良いのですよ」

「だけど……フローレンス様の人生はゲームと大分違うようですね」

確かに、記憶を思い出してからフローレンス様のお姿はゲームとは……どう考えてもR表記が必要なお姿だ。

「まあ、聞いても面白くないけど私の話を聞く?」

オラ達は頷いた。



フローレンス様の人生は壮絶だった。

ゲームでは婚約者『候補』なのに『婚約者』と決定済みだし、どこかの小説サイトの人気ジャンルみたいな事件があって、だけど小説の様なご都合的な展開はならず、娼婦に売られてしまったとか、本来のゲーム内容と明らかに変わっている。


オラも十分ショックだけど、オラ以上にシャーロットお姉ちゃんは頭を抱えて蹲る程のダメージを受けていた。

「何でよ……嫌われは地雷なのに……地雷なのに……キャラヘイトとか意味分かんない……しかもコレが現実とか……」

「はっ? 嫌われ? キャラヘイト?」

「ええっと、嫌われと言うのは特殊嗜好の一つで、特定のキャラが周辺から嫌悪される・いじめられる設定や表現の事を指します。キャラヘイトは確か……自分の嫌いなキャラを自分の作品内――つまり二次創作――でバッシングしたり徹底的に虐めたりする事だったかな? オラもあんまり好きじゃないジャンルです」

「……良く分からない世界ね」

そこまで言うとフローレンス様は大きな溜息と一緒にキセル煙草の煙を吐いた。


オラはアニメとか漫画を読んだだけで、ゲームをしていない。悪く言えばにわかファンだ。対するシャーロットお姉ちゃんはオラと違ってゲーム所か関連グッズを買っている。彼女みたいなのがファンと言ってもだろう。

そんな人から見れば今の状況は大大大ショックな筈だ。……良く考えたらざまぁの元にされている乙女ゲームとか少女漫画は、その世界のファンから見れば『嫌われ』と見られても可笑しくないな。


ショックから立ち直った(それでも顔が真っ青なままだ)シャーロットお姉ちゃんはフローレンス様に聞きだした。

「何故、皇太子の婚約者に決定されたのですか?」

「ん~、多分釣り合うのが私位しかいなかったのも原因の一つね。他は幼すぎたり年を取っていたり、結婚していたり問題があったり。

後、お父様から聞いたのだけど私と結婚して膿を取り除くと言ってたわね。なんせ王族貴族は腐りに腐ってたから」

「……本編ではそんな話はなかった。つまりこの世界はアレと世界観・人物がそっくりの別の世界。つまりパラレルワールド。だから幻滅する必要はない」

どうやらこの世界はゲームとは違う、たまたま世界観・人物が似ているだけの別の物として納得しようとしている。まあ、分からなくもない。


何とか納得したシャーロットお姉ちゃんは紅茶を飲んで落ち着かせた。

「それよりも、これから私達はどうなるのですか?」

「早くオラ働いて庄屋様達やおっとう達に仕送りしたいだ」

「……庄屋様より、村長の方がこの世界観にあってない?」

フローレンス様は眉を顰める。

「でも、オラが生まれた頃からそう呼ばれてましただ」

「日本人の、あんまりそういった知識がない人が作ったら、多分ガバガバになると思います」

「ガバガバ過ぎない?……まあこれ以上は不毛でしょう」

それだけ言うとフローレンス様はベルを取りだすと、一回だけ鳴らした。


「お呼びですかフローレンス様」

呼び鈴の音を聞いて、秘書さんが来た。

「リジューナ。今日からこの子達は私の娘にするから」

「……はぁ? 申し訳ありませんが言っている意味が分かりません」

「この子達のどちらかを私の後継ぎにするわ。後を継がない子もきっと役に立てると思うから」

「…………分かりました。此方で手続きをしますので少々お待ち下さいませ」

こんなことは何度もあったのだろう。秘書さんは溜息も零さずに部屋から出て行く。


「あ、あの! 何であんな事!?」

「どうせなら同じ前世持ちの、しかも日本人だなんて早々出会えないからね」

「で、でもオラ、どんくさいし頭も悪いし……フローレンス様に迷惑かけるだけです」

「あら? そんな事はないわよ。蛇目から聞いたけど思い出す前から自分から身売りになのり出すなんて、偉いし、私情を挟まないで有名な蛇目をあそこまで心配させるなんてある意味凄いわよ。あ、でもその田舎くさい言葉を直させるからそのつもりで」

フローレンス様は何か思い出したように、ぽんっと手を叩いた。

「そう言えば自己紹介はまだだったわね。私は此処、ヨシワラの二代目フローレンス。貴女達は?」

短い間なのだが、この人に何を言っても駄目だと言う事は分かった。

諦めたオラ達はそれぞれ名乗り出した。


「アンジェ・ドロワーズです」

「シャーロット・ヴァルロードです」

「よろしくね、アンジェ、シャーロット」









フローレンスの次に有名なのはフローレンスの『愛娘』でもあるアンジェとシャーロットだ。

後に三代目フローレンスとなるシャーロットについては次の章で記載させているので此処では省略させてもらう。


アンジェはヨシワラとシャレーンの国境近い村に生まれた。

アンジェは幼い頃はあまり器用な子供ではなかったが、庄屋も村人も家族も温和な人が多く大切に育てられていたが、シャレーンの重税のせいでにっちもさっちもいかなくなり、アンジェの姉が売られそうになった時に自ら身売りに名乗り出したのだ。当時アンジェは四歳、ヨシワラに行く道中で五歳になったのだがそれでも幼すぎた。

無論、村人総出で止めたがアンジェの意思は強く、又『このまま誰も出さない選択すると、役人の厳しい取り立てされるだけだ。最悪赤子を口減らしで殺される羽目になるかさもなくば、劣悪な娼館に売られる場合がある。第一本人の意思を尊重してやれ』

女衒屋蛇目の冷酷な言葉で泣く泣くそれを受け入れた。


そして、シャーロットと共にヨシワラに来たアンジェ。その時にフローレンスに気にいられ跡取りとして養女となったのだ。

それから訛りが強い言葉を厳しく躾けて標準語に直されたり、厳しい勉強・マナー講座など普通の子供なら泣いて逃げるレベルの教育を受けた。

しかし、アンジェは泣き言一つも言わず、それどころか嬉々として勉強したのだ。

又、村に住む人達の特徴である温和な気質をアンジェに受け継いだ。

その性格のお陰でヨシワラの子供達と直ぐに仲良くなり、気難しい人とも仲良くなれた。

だが、国を統治する主にしてはあまりにも優し過ぎた。結果的にシャーロットが後を継ぐ事に決定したのはとても早かった。


こんな逸話がある。


フローレンス達と度々他の国に視察するのだが、どう言う訳が彼女が一人で行動する時に限って人買いに売られそうになった場面に遭遇したり、違法な人身売買オークションにいつの間にか参加したりしていた。(無論その後摘発されたが)

そして彼女のお人好しな性格のせいで親・兄弟と引き離されそうになる場面を見つける度に、買われた金額の倍のお金で買っていた。


そのお金はアンジェがフローレンスに借金したお金で、シャーロットも「後で摘発するんだから買わずに待ちなさい!!」と何度も説教した。

最終的な借金総額は推定1500億ルーベルと天文学的金額だと言われている。

無論、ほとんどのお金は摘発された時に全額回収したので、アンジェの借金は身売りされた時の金額+保護した被害者達の住居の提供した時掛かった金額だけだが、それでも相当な額なのは予想できる。


だが、アンジェの運の良さなのか、それとも被害者達がアンジェの人の良さに感動したのかは分からないが、全員恩を仇に反した者はおらず、それどころか利息付でお金を返却した。その利息の金額がアンジェの借金を完済する金額だった。

この時、アンジェは十五歳である。


自由になったアンジェはまず生まれ故郷に帰った。村人総出で彼女の帰宅を祝い二年程滞在した。その後はヨシワラ時代の夢を叶える旅に出た。


『『オラ』が『私』に成れたのはフローレンス様のお陰でもあります。フローレンス様が勉強する喜びを教えてくれたから今の私に成れたのです。だからその恩返しとして農村地域の子供達に勉強を教えてあげたいのです』

後に彼女は生徒達に語っていた。


それからアンジェは旅をしながら子供達に勉強を教えたり、寺小屋を作ったりした。その時のお金はアンジェが貯めていたお金もあるが、ヨシワラの義姉やその国の王族からいかに教育が大切か力説して資金提供してもらった。

コレを切っ掛けに大陸全土に学校が広まり、農村から役人や文学者などの著名人が生まれた。


そんなアンジェの志にラシュレヴァ王国の第四王子アーサー・ラシュレヴァは心から惚れてしまい、何と王位継承を破棄して押しかけ女房ならぬ押しかけ旦那となったのだ。

この時のアンジェは「私とんだ悪女じゃん!!」と叫んだとか。




その後、アーサーと結婚。三人の娘と息子を一人産んだ『教育の神様』アンジェ・ドロワーズは夫に見守られながら七十五歳で生涯を閉じた。


1ルーベルは日本円で100円です。つまり1500億ルーベルは1兆5000億円。現実ではありえない金額です。


一話でここまで長い気がしますが大丈夫ですかね?


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