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#4 交換殺人

▼交換殺人


 この掲示板は、レス仕様にはなってなく、一方的に書き込んで行く者が多い。その中で、朔夜がこのメッセージを残すのは異様かも知れないと想った。しかしだからこそ、こうする事で目に止まってくれる事が一番の得策だと想いたったのである。

 それは、次のようであった。


「天使の云った事とははどの様な事なのでしょうか?もし良ろしければ僕にも参加させて項けないでしょうか?交換条件にて」


 そんな書き込みをした後、朔夜は中島清美なる者との接点を見い出そうと考えた。まず引っ掛かってもらわないとしょうがない。そうなる為に何かをしなくてはならない。そのような中、時問が許す限りの書き込みを行った。 掲示板は何度もアクセスしてないと次から次に薪しく書き込みが行われ、自らの書き込み内容が消えて行く。その上変更が判らない。

 それを見越しながら時問を置いてはアクセスして行った。

 時間が刻々と過ぎて行く。流石の朔夜も落ち着いてはいられなかった。これが、雅樹との賭けだからというのではなく、今となっては、一つの事件を解決する者であるならばと云う想いの方が強かったからかも知れない。

 そんな時、携帯の着信音が鳴った。

「もしもし……朔夜さんですか?」

 それは今度こそ紛れもなく、昼問連絡が取れなかった神楽からのものであった。朔夜は複雑な思いを秘めながらこの声に安堵を覚えた。

「神楽さんですか……今日はどうなさったのです?」

「すみません。それが、わたくしにも何がどうしたのか分からなくて……今朝家を出ようとしていた所迄は覚えているのですがその後の記憶がないのです。気付いたら、ベッドの中で……」

 記憶の抹消を雅樹が行ったのかも知れないと朔夜は想ったが、

「こちらは気にしておりませんよ。それより、気になりますね……記憶がないとなると……」

 事態はだいたい掴める。だけど、それを神楽に悟られるとどれだけ悲しい想いをさせてしまうかと考えた朔夜は、なるべく話題を逸らせなければと想った。

「今日は、ゆっくり休んだ方が良いかも知れませんね。また体調が良い時にでもゆっくりお話しましょう……あ、お母さん今日は気分が良さそうでしたよ。早く良くなれば良いですね」

「お見舞いして頂いたのに、本当に申し訳ありません。そうですね、今日の所はお言葉に甘えさせて頂きそうさせて頂きます……あの……あ、いえ何でもありません……」

 一瞬何かを云いかけようとしたが、神楽はそれを否定するかのように言葉を切った。それが何であるのか気にはなったが、自分から話さないのならと朔夜は問い返さなかった。

 しかしこの時、聞いていたなら事の事態はもっと良かったかも知れない。そう、この時隠した神楽の言葦はこの後の全てを担っていたのである。

 そして時間はまた刻々と過ぎ去って行く。夕飯をとり摂り、敢えず緊張感を解いたそんな時、あの裏ホームページを覗いてみた。時問はもう夜と云って良い時間になっていた。

 すると、そこには待っていた自分宛の書き込みがあった。一か八かの賭けは成功したのである。


「文換とはどう云った事でしょう?具体的に聴いてみたいです。このホームベージのチャットで待ってます」


 簡潔に書かれた書き込みに、チャットの指示があった。その通り朔夜はチャットルームへと足を延ばした。基本酌にチャットは覗こうと思えぼ誰でも覗ける。しかし、このページは上手くプログラムを作っているらしく、その相手にしか覗けない。そこで、部屋に入っている人のHNを選びだし指定して朔夜はその相手、中島清美へとメッセージを率直に打ち込んだのである。


「『決行」とはもしかして殺人ですか?」

「そうです」

「ならば取り引きしませんか?僕と」

「取り引き?」

「交換殺人です」

「あなたも誰か殺したい人がいるの?」

「そうです」

「誰?そしてそのメリットは?」

「誰とはここでは詳しく云えません。邪魔な人を消す事。メリットは、警察に疑われない事」

「なら私、もそう。疑われないと言う保証はある?」

「ここでの事は、プログラムのため警察に知られないでしょう?それに僕とあなたは基本的に面識がない。あなたは下北沢に関係がある人ですね?」

「良く分かったわね……あなたは誰?」

「僕も下北沢に関係がある者なのですよ。どうです?話にのりませんか?」

「判ったわ。で、どうするつもり?」


 ここ迄話を進めて、朔夜は戸惑った。交換殺人を考えた迄は良い。自分がその人物を殺さないで、この中島清美と名乗る者を殺人者にしなければ良い訳だから……しかし、自分が殺したい相手はいないのだ。そこで考えた末、


「秋元総合病院を御存知ですか?」

「ええ。知っているわ。私が勤めている病院よ」

「そうですか奇過ですね。そこの202号室に入院している塚原叶と言う人物を殺して欲しいんですよ」

 叶なら事の次第を飲み込んでくれるだろうと想い咄嗟に申し訳ないとは想いつつ、そう書き込む。しかし、余りにも偶然である。勤め先がかぶるとは……これも、雅樹のシナリオの内なのか?

「そう、分かったわ……都合良く私が殺したい相手も秋元病院の関係者よ。こちらも全てを明かすわ。殺したい相手の名前は、沼淵佳子。看護師よ」

「ならば、その相手の住所を教えでいただけませんか?今夜の『決行』を確実に行います」

「判ったわ。住所は……」


 こうして、二人の間の密談は終わった。

 住所は、下北沢の南の方で先にファイリングしておいたデータの中にもその住所が載っている。

 つまり朔夜の範疇にある訳である。しかし、当の相手は今日は準夜勤で夜中の帰宅になるらしい。後は、叶に連絡しなくてはならない。中島清美は明日、病院の薬物を用いて叶を殺す算段を立てた。これは、医療関係者ならば誰であっても簡単になし得る。主治医となればいとも簡単に。

 しかし、一つの要求があった。沼淵佳子の死を確認できて初めてこの話はなし得るのだと云う事だった。

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