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#1 F=KN=24

▼F=KN=24


 全てが謎に包まれたまま、今の都住朔夜を支配していたのはこれからの身の振り方であった。

 先程迄の事を振り返り何をすべきなのか……まず反省すべき点は茫然とした朔夜の判断が堵けを承諾してしまったと云う事である。今更ながらに何故何も云い返せなかったのか?これから始まる、雅樹との賭け。

 しかしだからといって事件が引き起こされる事になる訳にいかない。それが、雅樹にとって何を目的しているかは図り知れないが……

 だけどこれこそが最優先しなければならないと理解した時、この後直ぐさま行動に出た事は図らずしも間違っていないと、そう納得できた。

 朔夜は朧げながらにも想い出せる事を想い返していた。

 キーワードは、『天使は全てを知っている』

 これは、自殺と、自殺未遂の現場に残されていた言葉である事は今迄の情報で分かってはいるものの、それ以外の共通する項目は皆無。

 そして、云い残された『F=KN=24』これらの二つの言葉だけである。

 ここから導き出される答えは一体何であろうか?全く想い当たる点は何一つない。全くのゼロからのスタートなのである。そして、今日を含め三日間。朔夜が勝てると云う見込みは今の所全くゼロに等しかった。

「……何やて?」

 叶は、興味深く朔夜の言葉を聴いていたが、一度確かめるかのようにそう宣った。

「今話した事が、全てですよ」

 今の時点の朔夜は、結局一人で考えていてもどうにも前に進まないと考え、眠りに就いていた叶を叩き起こそうと想い病室に戻った所、既に目を醒ました叶がべッドであくびをしていた矢先であった。そこで、朔夜はありのままの事情を話したのである。

「まさか……あのマサキがかあ……う〜ん。念の入った女装。恐るべしや……そっちでもいけるロか?」

 冗談はさておき、想い当たる事など何一つなく、接した事がほとんどと云って無い事は、敵を知らないのと同じと判断すべきであった。

「やけど、今回の全ての事件が陰陽師絡みとなれば、これは俺も参加せん事には拉致あかんなあ」

 叶は、左手で顎を掴むかのような仕種で考え事をしていた。

「真の陰陽師は、式神や呪術の類いが使えるし、俺には出来んが、夢さえも操る事ができるってのが相場や……朔夜、お前だけでこれを解決するっちゅうのは無謀やわ」

 確かに、叶のカは必要不可欠になって来ていた。

「そこで、叶には遠隔調査をしてもらいたいのですよ」

 こうして、簡単に叶に頼みたい事柄を朔夜のロから述べる事になる。

 それを聴き、事の次第を受け止めると、

「なるほどな……敵さんは、下北沢を中心に事件を起してとる。そこで俺が、その下北沢に式神を放ち、事の次第を少しでも把握するちゅうこっちゃな……分かったわ。それなら、そこの鞄取ってな」

 叶は、朔夜から渡されたその鞄の中からいつも持ち運んでいる自らの式神の札を摘み上げると、自由の効く足でベッドを離れた。

「琴音!今から、下北沢のに護衛につけ!」

 窓を開け、解き放つと、1羽の白い鳩となり羽ばたいていく。琴音は、叶が一番大切にしている式神である。でも、朔夜には只の鳩にしか見えないのだが。

「まあ、後は敵さんが下北沢に結界を張って無い事を祈るしか無いわ……しかし、呪術を使うとなると、それなりの覚悟がなきゃ、逆凪を食らう事になる。向こうさんもそこんとこ分かってやっとる節もあるやろし……天に祈るしかなかろ?」

「逆凪……ですか?」

「そう。術っちゅうもんは、かけた当事者に跳ね返ってくるもんなんや……やから、それぞれ陰陽師と云うもんは、それに対しての対策を考えとるもんや」

「叶もですか?」

「当然やろ。でも、それが何かと云うのは、例え朔夜であっても教えられんわな……」

 術者にとって、命に関わる事。だからそれがなんであるのかは、たとえ近しきものであってもロ外する訳には行かないのである。

「後は、妙ちきりんな暗号やな……」

『F=KN=24』

 そこで朔夜の手帳に今書き込まれた文宇の羅列を見ながら考えに入る。

「住所の暗号か何かか?ほら!住宅地図とかにこういうの書いてあるやん?」

 叶は、テンション高く話しを進める。こういう探偵気取りな所が子供じみて笑える。

「あり得そうですが、そう云う事では無いように想えるのですよ。まん中のKNがポイントですね」

 地図案内に二つ記号が連なる事は無い。

「三つ記号か……あり大抵にいくと、イニシャルが妥当やなあ」

 雅樹が云う、ハンデと云う名のもとに、ヒントと目されたそれは、非情に簡単なものであるのかも知れない。

「イニシャル……あり得ますね。しかし、KNなんてイニシャルの人が下此沢に一体どれだけいるのでしょうか……?」

 気が遠くなるほどの人数であろう。それに、調べるにしても、電話帳や住宅地図をあてにする事も出来やしない。とにかく東京の人の入れ代わりは激しい。

「ならFと24は?何かの付け加えとちゃうか?」

「付け加えですか……」

「24……番地か?」

 依然として、住所にこだわる叶。

「……24……いえ、年齢かもしれませんね?」

 ふと、朔夜の頭を過ぎる数字。確か、神楽は24歳では無かったか?そこで、ハッと気がついた。

「これは、神楽さんを守れるのか?という事なのかも知れません……いや、実際、神楽さんと云う訳では無く、標的を同じ女性に見立てて僕を試しているのかも知れませんよ……」


―姉、神楽との事も大目に見てやる―


 突如、あの時云った雅樹の一言が気に掛かった。

 結局は、雅樹の神楽に対する何かがそうさせているのかも知れない?

「どういうこっちゃ?」

 独り納得している朔夜の表情を不思議そうに見ていた叶であったが、

「叶、判かりましたよ。このFはFEMININE。つまり、女性の……と言う略語なんですよ」

何が気に食わなくて、事件まで起し、朔夜にこんな賭けを持ち掛けたかは判らないが、女性のイニシャルKNで、24歳をターゲットにしていると云う事なのだと理解した。これで少し的を絞る事が出来た気がした。

 後は、『天使は全て知っている』という言葉のみである。

「何か拍子抜けしたなあ〜あっさり解いちまうなんて……」

 叶にしてみれば、莫迦にされている感がある。こうやって解いてみれば子供でも解けそうな暗号であった。

「ハンデと云っただけに、思い返してみれば簡単なのが当たり前なのですよ。しかし、下北沢の住人を調べるのは一苦労ですね……ネットを利用してみるしか方法が有りませんよ」

 すると、

「不当アクセスでもするつもりかいな……」

「こういう時、利用出来るものはとことん利用してみるのも良しとしませんか?」

 つまりは、ネットで不当にアクセスしてハッカーとなり、個人情報を保持している企業から住所録を調べあげると云う事である。こんな事は、法律上に問題が有る事は知っている。

「はいはい、つくづく敵に回したく無い奴やなあ〜でも気張りいや?あてが有るだけみっけもんなんやさかい。式神の方も結界が有る訳で無く取り敢えず琴音も無事下北沢に入れたようやから安心せえや?」

 今入った情報だとでも云うかのように叶は朔夜には見えない遠くの方を見据えて云った。きっと叶にはその状況を透視できるのであろう。

「そうですね。では、また何かあったら連絡しますよ。実際、自由に叶が動けるのであれば、もっと効率良く事が進むのですがね?」

 そういうと、朔夜は椅子から立ち上り軽く手を振って病室から立ち去ったのである。

「この三日間は、寝る事も出来ませんね……」

 朔夜は覚悟を決めたかのように独り言を云いながら病院を後にした。


弐ノ巻・後編始動です。

ミステリーから始まり、サスペンスから、ちょっとだけオカルト。と云った感じです。宜しければ最後までお付き合い頂けると嬉しいです。


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