第二章 恐怖のオペレーション・ダンゴムシ
第1話 遭 遇
「あのさ、北斗……」
「何?」
「実は……俺さ…」
「私のこと好きって言っても無駄よ。今は重大な使命があるから。」
「………」
これが一昨日の出来事。
「あのさ、北斗……」
「何?」
「昨日言ってた重大な使命って何?」
「得体の知れない秘密結社と戦う事よ。」
「じゃあその使命が終われば告白の返事聞かせて貰えるかな?」
「いいけど……」
これが昨日の出来事。
そして今日。夜の7時、一昨日告白してきた鉄 鋼三郎はン・七十五とトレーニングしている。打倒オスギテイコクを手伝ってくれるのは一向に構わないが同時に家に居座られると、今度は自分が廊下で寝るハメになるのだ。
「私が独り暮らしだった時の食費は月に三万円弱、戦闘員の食費を含めると月に三十万。なんとかなんないかなぁ。」
こうなったらオスギテイコクの怪人を撃破してサイフをまさぐるしかテがない。
「鉄から金をせびるってテもあるわね。」
それは結局「貢がせる。」という事だ。現代の若者に見える良くない傾向である。
ゴソゴソ
「?何の音?」
ゴソゴソゴソ
「不安になるんだけど。」
ゴソゴソゴソゴソゴソゴソゴソゴソゴソゴソゴ
「何者?姿を見せなさい!」
「キシャアアアアアア!」
ダンゴムシが床を破って出現した。それもかなりでかい。ゆうに1メートルはあるだろう。
「キシャアアアアアアア!」
突進してくる。寸での所で躱すと手刀を振り下ろす。
バキ!
「い、痛いー。」
ダンゴムシは甲殻類だ。小さいと弱そうだが他の虫にしてみればその体は鎧そのもの。それに気付かない北斗も馬鹿っていったら馬鹿である。
「どうした!北斗!」
鉄が二階のトレーニングルームから出てくる。
「イーッ!」
ン・七十五は即座に走ってきてダンゴムシに怒りの一撃、得意のミドルスピンキックを叩き込んだ。これはそれなりに効いたらしくダンゴムシは丸まった。
「おいおい、何だよこれ。」
「知らないわよ。」
「イー?」
鉄は試しに野球ボールで自慢の150キロストレートを当ててみた。びくともしない。攻撃用バット「天上天下金剛爆砕剣」の一撃も無駄に終わった。
最後の手段とばかりにガソリンをかけて火をつけたがダイイングが焼けただけだった。
「フフフ、ハハハハハハハハハハハ!」
ダンゴムシが不意に不気味な笑い声を上げた。ビクっと震える三人。
「貴様只のダンゴムシではないな!」
鉄は言った。そんなのはじめっからわかっている事だ。
「そうとも!私は爆弾怪人ダンゴバグ!」
「安直な名前ね。」
「なにをー!」
北斗の一言にダンゴバグは激昂する。
「私を怒らせてしまったな。くらえ!ダンゴ爆弾!」
ダンゴバグの放った黒い球はそのまま爆発せず体を開いた。そう、その爆弾はダンゴムシさながらだった。
「キシェェェェェ!」
ダンゴ爆弾はのそのそとこっちに這ってくる。
鉄は天上天下金剛爆砕剣で一発殴ってみた。すると……
ドッガァ―――ン!
爆発が起きた。爆煙が晴れるとそこには変わり果てた鉄の姿が。
「ハハハハハ!見たか!ダンゴ爆弾の威力!」
「その性能を知られた時点でほぼ無意味な武器みたいだけど。」
「うるさいっ貴様らも消してやる!」
ダンゴバグはまるまると高速回転しながら向かってきた。轢き殺す気だ。
「イーッ!」
ン・七十五は北斗を抱え、逃亡した。鉄も抱えたかったのだが何分時間がなかった。とりあえず彼の冥福を祈り、黒戦闘員は家を飛び出た。
「イーッ!」
この叫びで家の二階に居た白戦闘員達も逃げ出す。
「イーッ」「イーッ」「イーッ」「イーッ」「イーッ」「イーッ」「イーッ」「イーッ」「イーッ」「イーッ」「ギャッ!」
最後の「ギャッ!」は鉄が轢かれた叫びに違いない。北斗は罪悪感に似たものを覚えたがなんせ彼は鉄 鋼三郎…鉄鋼なのだから大丈夫だろうと思い直しン・七十五の腕の中で無責任にも寝息をたてはじめた。
第2話 野 宿
北斗は目を覚ますと近所の公園のベンチに寝ていた。どこから持ってきたのか布団が掛っている。で、回りを十一人の男が目をギンギンしながら自分を取り囲んでいた。
「おはよう。」
とりあえず一晩守ってくれたらしい戦闘員達に声をかけた。
「イーッ。」
「野宿してたの?私は。」
「イーッ。」
戦闘員語がわからない彼女は適当に微笑んでから起き上がった。そして当然の疑問を口に出す。
「鉄は?」
「イーッ!」
聞いただけ無駄だった。
「家に戻ろうかしら。」
「………」
ン・七十五は思案した。
あそこは危険だ。我々ザコ11人で突破できるような場所ではない。まだ敵の打倒策も決まっていないのに、しかし……
ン・七十五は地面に文字を書いた。
<行くというなら止めはしない>
「ありがと。」
「イーッ。」
「何?」
ン・七十五は背中からマシンガンを取り出した。
「これ……本物よね。」
さらに腰のベルトからロシア拳銃トカレフを出す。
「これも持っていけと?」
ン・七十五はこくりと肯いた。
北斗は超複雑な笑顔を無理矢理作って(いかなる笑顔か、それは御想像にお任せします)言ったもんだ。
「ありがと。」
第3話 決 戦
北斗家は壮絶だった。鉄の状況なぞそれに輪をかけて壮絶だった。
「フフフ、小僧、貴様は我々オスギ帝国でDr.モンゲルに改造手術を受けるのだ。」
くもおじさんだ。一々相手の未来を説明していいのだろうか?ヒットラーユーゲントの生徒とかが実験用ラットに「お前は我々ナチスドイツで毒ガスの実験を受けるのだ。」等と説明した話は聞いたことがない。話がそれた。鉄は今十字架に張り付けにされていた。
どこからそんな木材を持ってきたのかは知る由も無いがわざわざこんなことをする必要もないと思う。やはり我々凡人にはない何かが彼等にはあるのだろう。
また話がそれてしまった。
「ふん、俺は生憎あんたらの好きにされるつもりはないぞ。」
どうやって。
「小僧、貴様がそんな事を言える身分だと思うな。」
「ふっふっふ、どうするというのだ。俺をSMプレイにでも使う気か?」
「………何故わかったのだ。」
「正解かよ、オイ。」
「大変です!くもおじさん様!」
「なんだ、ダンゴバグ。」
「この家の娘が精鋭戦闘員部隊を撃破、ドアの前まで来ております。」
「もう入っているけど。」
「ぎゃあ!出た!」
いきなりの北斗乱入で慌てるオスギ帝国部隊。
「ぬぅ、小娘、貴様に何が出来るというのだ。」
そう言われて北斗はトカレフを捨てた。
「警察を呼んだけど。」
「何だと!」
悪の秘密結社に対して警察を呼ぶのはヒーローモノの鉄則に違反する。
「反則だぞ!」
「戦いには反則も何もないのよ。それは歴代の悪人が教えてくれた事だわ。それに私は世渡りが上手いのよ。ショッカーの存在を警察に言わなかった仮面ライダーよりも頭の回転がいいんだわ。」
コラコラ、仮面ライダーファンが怒るぞ。
北斗はマシンガンを構えると無造作に引き金を引いた。
「答えなさい。ダンゴバグって一体何者?オスギ帝国の正体は?」
「こ、答える義務はない。」
また引き金を引く。
「わかった。言う。ダンゴバグは人間の細胞を培養してダンゴムシの細胞と繋ぎあわせたタイプの怪人だ。もうひとつ、人間そのものに改造手術を施す場合もある。」
「オスギ帝国の正体は?」
「それだけは死んでも言えない。」
「あっそ、じゃあ死ね。」
北斗は女子高生とは思えないような台詞を吐き捨てるとマシンガンの引き金をカチっと引いた。狙い目しっかりで、だ。
「ウギャアアアアアアアア。」
くもおじさんは気絶した。情けない奴め。北斗は十字架から鉄を引き摺り下ろすとキッと戦闘員を睨んだ。
「ウヒーッ!」
戦闘員は慌ててくもおじさんを抱えて逃げた。
するとダンゴバグはうろたえ、
「な、なんだ?警察呼んだからもういいんじゃないのか?」
「警察は呼んだわ、でもこの家を荒らした代償は払ってもらう。」
無茶苦茶だ。
「用心棒の先生、頼みます。」
「あいよ。」
北斗の声に鉄が答える。鉄は野球ボールを構えると思いっきり投げた。腕にダメージを負っていても超高校級の強肩は健在で145キロのストレートがダンゴバグの腹部に決まった。
「ぐおっ。」
「起きろ、糞野郎。」
女子高生がそんなこといっちゃいけません。
「うぅぅぅぅ。」
「起きろ、と言っているの。幼稚園児でも出来る事なんだからしっかりやりなさい!」
ダンゴバグは起立した。
10分後、警察が到着しダンゴバグを連行していった。11人の戦闘員達も連れて行こうとしたが北斗と鉄の必死の説明でなんとか捕まらないで済んだ。
かくしてオスギ帝国の日本ダンゴムシ作戦は幕を閉じた。いったいどんな作戦だったのかはいまだに謎のままである。
怪人紹介コーナー
爆弾怪人ダンゴバグ
身長:182cm 体重:80kg 鳴声:キシャアア「
ダンゴムシタイプの怪人で武器はダンゴ爆弾。
オスギ帝国十聖怪人騎士の内の一人くもおじさ
んの指揮下にある。
必殺技はダンゴ爆弾、高速回転タックルである。
次回予告
オスギ帝国が放った北斗、鉄、ン・七十五暗殺用の刺客。一角怪人ユニコーン。圧倒的な攻撃力、治癒能力を秘めた最強怪人を前に、我らの3人組はどう立ち向かうのか!
次回レッツゴー!アルシンド「白馬が来る。」




