表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ねぎとろのごった煮

彼のせい

作者: 葱野とろ

 例えば、今日の自分がどうしようも無く不幸だったとして、その原因が、たった一人の少年が原因だったとしたら、貴方はどうする? 

 私は、殺した。

 その日、一人の少年が私に言ったのだ。今日、貴方が学校に遅刻したのは、僕のせいだと。今日、貴女が弁当を忘れたのは僕のせいだと。

 もちろん、そんな事がある訳がない。

 だが、彼の嘲笑するような眼は。まるで、愉快な映画を見ているような笑顔を見た私は、無性に腹がたって彼を殺した。

 私が彼を目掛けて突き立てた鉛筆は、面白いように彼の目から、脳みそを突き破り、そのまま物を言わぬ塊に変えてしまったが、私の胸は全くすっきりせず、そのガラクタを蹴り飛ばして帰路についた。

 次の日、私の家が燃えた。

 私が置きっぱなしにしていたスプレーが、ストーブの熱で爆発したのが原因だった。

 ごうごうと音を立てて燃える家を両親とぼうっと見ていると、その横でまた、彼が笑っていた。

 今日この家が燃えたのは、僕のせいだと。

 家が燃えたのは、私の不注意が原因だった。それは誰が見ても間違いない事だった。

 だが、まるで捨てられた子犬を見るような眼と、それを見捨てる人間の目をしていた彼を見ていたら、ふつふつと怒りがわいてきたので、また殺した。

 実際に掴んだはずなのに、彼の体はまるで紙の様にふうわりと飛んでいき、ぼうぼうと燃えた。

 飛び交う彼だった灰は、熱風に吹かれて両親に降りかかっていた。

 家がアパートになって、紅葉が無残に枯葉になった頃に両親が首を吊った。

 電灯の横に太い釘を打ち込んで、そこからネクタイとゴムホースで二人はぶら下がっていた。

 こんな太い釘を、賃貸の家に打ち込んでしまっていいのかを考えていると、彼は私のご飯を食べながらいつものようにこう言った。

 君のお父さんとお母さんがテルテル坊主になったのは、僕のせいだと。

 二人が死んだのは、お金がもう無くなったからだと察していた。

 しかし、彼のたとえが無性に苛立ちを覚えるっものだったので、彼もテルテル坊主にしてあげた。

 三個のテルテル坊主が、明日の天気を案じてゆらゆらしているのを見ながら、私はご飯をすませた。

 それから一週間経った日、私は死んだ。

 電車を待っていたら、誰かに突き飛ばされたのだ。

 後ろは見えなかったし、誰が推したのかを確認なんてできなかったが、きっと彼なのだと思う。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ