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わがまま

作者: 葉月陸斗

「かってかってこれかってー!」

 ある時のとあるデパートのおもちゃ売り場にて。小さな男の子が母親におもちゃをねだっている、よく見かける光景が繰り広げられていた。

「はいはい。じゃあ、一個だけよ」

「うん! ありがとうおかあさん」

 幾ばくかのやり取りの後、母親の方が根負けして車のおもちゃを買っていった。男の子は嬉しそうにそれを抱えていた。


「かってかってこれかってよー!」

 ある時のとあるデパートのおもちゃ売り場にて。小さな女の子が父親におもちゃをねだっている、よく見かける光景が繰り広げられていた。

「わかったわかった。じゃあ、一個だけだよ」

「うん! ありがとうおとうさん」

 幾ばくかのやり取りの後、父親の方が根負けして動物のぬいぐるみを買っていった。女の子は嬉しそうにそれを抱えていた。


「かってかってー!」

「おねがーい。いっこだけー」

「やーだ! かってよー!」

「これかってー!」


 ある時のとある住宅街の道にて。一人の女性が段ボール箱を抱えていた。

「ふうっ。やっぱり重いわね」

 そう言ってたどり着いた場所は、ごみ捨て場所。そこに段ボール箱を置くと、ぐいぐいと肩を押しながら来た道を戻っていった。

 段ボールの中には、沢山のおもちゃやぬいぐるみが入っていた。車のおもちゃ、合体もののロボット、動物のぬいぐるみ、着せ替え人形、などなど。そこには役割を終えた――興味のなくなったものたちが収まっていた。

 それから少し経った後、空が黒い雲で覆われ始め、そしてすぐに雨が降り始めた。ぽつりぽつりと雨粒が落ちていき、そこから徐々に水の天幕へと変わっていった。

 当然のように、それはダンボールの中に入っているおもちゃたちに降り注がれていく。あっという間にびしょびしょに濡れてしまった。

 今はそれを拭いてくれる男の子も女の子もいない。そして、これからも。


 その頃、とある一軒の家にて。

「ぶーんぶーん」

「さあ、いっしょにおきがえしましょうねー」

 その家のリビングにて、男の子と女の子がそれぞれ、おもちゃを片手に楽しく遊んでいた。

 そのおもちゃは、つい最近、ちょっぴりのわがままによって買ってもらったものだった。


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