アタシと勇者の恋の話 Ⅸ
どうもこんにちは~。
今回はカザハに傷つけられ、自室に閉じ込められたルミアさん。始まる勇者と魔王の話し合い。このピンチをどう切り抜くのか?
では、ごゆるりと~
「う・・・」
窓から入ってくる光にアタシは目を覚ました。自分の部屋の天井が見える。
頭が徐々に覚醒してきたらしく、昨日の記憶が蘇ってくる。
ラウスの仲間のカザハ・ユズリハナに暴行されたこと。アイツの邪悪な顔。・・・思い出すだけでもゾッとするわ。
「あ、今、何時!? ・・・ッ」
起き上がろうと手を動かそうしたが無理だった。腕を見ると手錠型の術式で堅く拘束されていた。
カザハがアタシが気絶した隙に掛けたのね・・・。
アタシは焦った。仕方ないじゃない。だって、今日はラウスとお父様が会う日なのよ!? それに、カザハが言っていた、マインドコントロールの件も阻止しないと。
あぁ! 何もできない自分が嫌になるわ!
「ほんと、嫌になるわ・・・」
アタシは立ち上がることを諦めて、芋虫のように地面を這った。
時計はアタシのタンスの上に乗っかってるから、タンスに体当たりしたら落ちてくるはず。
「ん、ん、ん、くッ」
うぅ・・・胸が邪魔でなかなか前に進めないじゃない! この駄肉が! ・・・こんなこと言ったらレヴィに怒られるけど。・・・それに、カザハに暴行されたところも痛い。
「ん、ん、ん、つ、着いたぁ~」
聳え立つタンスの前に着いたアタシは、タンスに向かってローリングアタックをした。
「っ・・・まだまだ!」
痛いけど我慢して再チャレンジ。
ゴロゴロゴロ・・・ドンッ
これを何回も繰り返した。
そして、時計が落下してきた。で、アタシのおなかに着地。痛いんだけどね?
まぁ、放っておいて・・・。時計を見ると11:46ですって!? 絶対に始まってるじゃないの!
「っこんな、術式なんかぶっ壊してやる!」
アタシは術式で拘束されている手首に魔力を集中させる。
「っは!」
パリーン
力を入れると術式はガラスのように砕けて行った。
「よし」
気合いを入れて立ち上がると、殴られ蹴られ叩かれた部分が焼けるように痛い。
そう言えば、ラウスたちには光の加護が掛けられていたわね。忘れたわ・・。
でも、お父様を救うためにがんばらなきゃ。
痛む体にムチを打って、ドアに歩み寄る。
ドアを開けようとしたけど、カザハはドアにも魔法を掛けていたみたい。はぁ・・・嫌だけど壊すしかないわね。ごめん、お父様。
バァァァァン!
無理やりドアを壊し、城の廊下に出た。お父様とラウスが話し合う場所は玉座がある魔王の間だ。
魔王の間はアタシの部屋から東方面にあるのでアタシは悩まず右方向に走る。
お願い! 間に合って!
走る。全速力で走る。体は痛いけど走る。
近づいてきた。もうすぐだ。後、数m!
「着いたぁ!」
扉を思い切り開け放つ。
「お父様ぁ! ラウス!」
「魔王! 死ねぇぇぇぇ!」
リーニャの叫び声が嫌なくらい耳に響いた。お父様は目を閉じている。ラウスはお父様を助けようと走っている。
ぱぁーーーん
放たれた矢が軌跡を描き、お父様の胸を貫く。
「ぐっ」
お父様は小さくうめき、ゆっくりと後ろに倒れた。
「お、父様・・・? うそ・・・お父様!」
アタシはその場に座りこんだ。
「いやあああああああああ!」
魔王の間にはアタシの悲鳴だけが響いていた。
最後まで読んでくださってありがとうございます。
次回は土曜日更新です。




