初めてのデート
「ずるい」
「えぇ!?」
スフェラちゃんとのおつかいから帰ってきた後、シェアラちゃんは突然そう言った。
「ず、ずるいって何が?」
「惚けるの? レグはスフェラとおつかいに行った」
「う、うん」
「つまり、それは”デート”しに行ったと同じ」
「同じなの!?」
「スフェラとデートをして私とデートしないのは女のプライドとして許せない」
「小さなプライドだなぁ・・・」
どごっ
「ぶふっ」
「だから、レグも私とデートに行く。OK?」
「わ、分かりました・・・」
なぜ、ここの女の子は強いん、だ・・・・ごふ・・・。
次の日。俺はパーカーにズボンというラフな格好でシェアラちゃんを待つ。
「レグ、お待たせ」
「俺もさっき来たばっかだよ・・・って、その格好は・・・」
シェアラちゃんの格好は踊り子が着るような面積の少ないものだった。目のやり場がない。
「ダメ?」
「だ、ダメって言うか・・・刺激が強すぎるっていうか・・」
「じゃあ、普通のに着替える」
「う、うん」
5分後、シェアラちゃんは白色のシャツに赤と黒のチェックのスカートにブーツを履いてやってきた。今までと違う彼女にドキッとしてしまった。
「じゃあ、行く」
「う、うん」
「取り合えず、ぬいぐるみ屋に行く」
「う、うん?」
ぬいぐるみ屋?
「かわいいぬいぐるみがたくさんある」
「へえ」
シェアラちゃんでもそういうものに興味があるんだな・・・。
「今、失礼なこと考えた」
「ち、違う!」
「じゃあ、入る」
シェアラちゃんは俺の手をぎゅっと握り締め店の中に連れ込んだ。
店の中は俺みたいな男は1人もいず、女性ばかりがいた。すっげえ、気まずい。
「レグ、これかわいいと思う」
「え?」
シェアラちゃんが見せてくれたのはフェルト生地で作られた2つのネコのストラップだった。
「か、かわいい・・・」
「じゃあ、これ1つはレグの。もう1つは私の」
「うぇえ!?」
「嫌だった?」
店内の女性たちが「泣かせたら殺す」と言わんばかりの視線を送ってくる。怖い。
「いや、逆にすっげえ嬉しい」
「よかった。じゃあ、これを買う」
「お、俺がお金を出すから!」
男の意地を見せなければ!
「ありがとう」
「1050Gになりまーす」
店員の攻撃。魔王見習いレグは1050Gの損失と160のダメージを受けた。
そんな戦いの後、シェアラちゃんと昼食をとることにした。
「私の手作り」
「おぉ・・・」
お弁当の中はサンドイッチだった。美味しそうだ。
「ところでレグ」
「何?」
「私、今ノーパン」
ワタシ、イマノーパン?
「上もつけてない」
ウエモツケテナイ? 何それ美味しいの?
「と言う訳でホテルへレッツゴー」
「いや、何で!?」
「恋人はそうやって愛を確かめる」
「そうじゃなくて・・・」
「スフェラのことは奴隷と呼んで私のことは恋人って思ってくれないの?」
「いや、言ってないからね!?」
そこ、重要事項。
「じゃなくて、シェアラちゃんはもっと自分を大切にしなきゃ」
「どうして?」
「だって、シェアラちゃんはまだ20歳にもなってない女の子なんだぞ! そんなときから俺とそ、そいうことしたいだなんて・・・ダメだ!」
「ふふっ」
シェアラちゃんが突然ニッコリ笑う。
「レグはとても優しい」
「そんなこ、と・・・」
シェアラちゃんは泣いていた。
「私・・・幼い頃から人より魔法が使えたから魔女だって蔑まれてきた。だから、優しくされるのになれてない」
「あ・・・シェアラちゃん」
「ねえ、レグ。抱きしめて」
「うん」
俺はシェアラちゃんをぎゅっと抱きしめた。過去から連れ出すように。