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魔王に履歴書を送ろう

 ああああああ! どうしよう! 俺はつくづく運が悪い。どんな人間にも懐くウルフには吼えられるわ、今年一年の運勢は「とても最悪ですね(笑)」だし、好きな子と隣同士になりたいなーって思ったら食べることしか考えてない不思議ちゃんと隣同士になるし。極めつけは卒業試験で本物の魔王と戦うんだぞ!? 魔族の先生みたいに「あー、どうぞどうぞー」なんかじゃないんだぞ!? 俺にはラッキースケベどころか運すらない。どうしよう・・・まだ、死にたくないぞ・・・留年もしたくない・・・俺のベッドの下に隠してあるエロ本はどうなんだよぉぉぉ!

「レグ、うるさいわよ。静かにしなさい、全くせっかく魔王と戦えるんだから・・・」

「分かってるって・・・あぁ、代わりたい」

「あぁん?」

 俺の母、ルミア・ハーディアはいいとこのお嬢様らしいのだが・・・何を間違えたのか、たまに不良のような声を出す。つーか怖い。

「ったく・・・あんたはお兄ちゃんなんだからレノの期待に応えてあげなさい」

「う・・・」

 俺の弟、レノ・ハーディアは純粋すぎる良い弟だ。今だって俺たちは仲の良い兄弟だ。

「ま、逃げ出しても別にいいけどね」

「どっちだよ!」

 母の言うとおり、毎年卒業試験では俺のように魔王に当たった残念な生徒たちが敵前逃亡をしている。つまり、今回俺が魔王から逃げ出してもあまり恥ずかしいことではない。ん? 逃げ出す?

「あぁ、そうか! うん、母さんありがとう!」

「は?」

 戸惑う母を置いて俺は自室に走った。


「八八! そうかそうかー、俺は天才だ!」

 そう言いつつは俺は目の前の紙と対面する。履歴書である。今思えば俺はこの平和すぎる世界に飽き飽きしていた。つまり、俺が魔王見習いとなって魔王になり、この世界を滅亡の危機にすれば俺は悪の帝王=俺、モテモテ=ウハウハ、ハーレム。

 最高だ。まさしく完璧な人生計画☆ そう言えば、求人雑誌で《魔王後継者、求む》とか書いてあったな! 俺の住んでるところから近いのは淫欲の魔王・アスモデウスだ。きっと、エロイお姉さんがいるんだろうな・・・。

「うん、これで完璧!」

 後は送るだけ・・・でも、勇者見習いの俺を雇ってくれるかな?


二日後

 卒業試験まで5日前の今日、アスモデウスから返答がきた。とても大きい字で

「美女じゃなくて残念だけど、いいよ」

と書いてあった。

 一言言いたい。いや、もう言っちゃうよ?


「魔王、黙れよ!!!」


あぁ、すっきりした。取り合えず、明日、家出しよう。

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