魔女の一撃
前回の続きです。
「スフェラちゃーーーーーん!!!」
リオレさんの魔法をもろに喰らい宙を舞うスフェラちゃんを受け止めたのは俺でもなくおっさんでもなくシェアラちゃんだった。
「ぅ・・・ぁぁ・・・シェア、ラ・・・」
「スフェラはよくがんばった。いい子」
「ぅ、く・・ひっく」
「・・・・アウモデウス、スフェラをよろしく」
シェアラちゃんは真剣な眼差しでおっさんを見つめる。おっさんも応えるように頷く。
「リ、リオレ・・・やりすぎじゃないの?」
「圧倒的な勝利ですが」
「誰でもいい、次は私と戦う」
「まだ、するのね。分かったわ。デヴィット、行きなさい」
「はい、姫」
前に出てきたのは栗毛のメガネ少年だった。いかにも、魔法使いって感じだ。
「あなたが私の相手?」
「はい、そうです! ふ、まぁ、北勇者学校魔法学部主席の僕が負ける訳ないですけど?」
肩書き長ぇな。つーか、俺のシェアラちゃんだって変態だけど最強だよ? お前みたいなもやしに負けないよ?
「ふうん、・・・・レヴィアタン。号令して」
「なっ・・・呼び捨て!?」
「早く」
「分かってるわよ! レディ・・・ファイト!」
号令と同時に2人の足元に魔法陣が描かれた。シェアラちゃんは青、デヴィットは赤。青は水や氷系統の魔法、赤は炎系統の魔法だ。魔法陣の大きさから、シェアラちゃんは下位魔法、デヴィットは中位魔法だった。
「フレイムタワー!」
先に詠唱したのはデヴィット。炎の柱がシェアラちゃんの真下に現れる。
「遅い」
シェアラちゃんは涼しい顔でそれを避ける。そして、自らの魔法をデヴィットにかける。
「アイスボール」
氷の球がデヴィットに直撃・・・したと思いきやデヴィットは避けた。少し、にやっとして「思い知ったか」的な顔をしてる。しかし、すぐにその顔も恐怖に歪んだ。
「なっ・・・ひぃ!」
「読みが甘い」
シェアラちゃんの魔法は囮で、彼女の目的はデヴィットに足技を喰らわすことだったらしい。まぁ、魔術師って魔法以外の攻撃は苦手だからな。
「ぐ・・・がふっ・・・」
「降参したら?」
無表情の彼女のせいいっぱいの慈悲である。
「僕は・・・レヴィアタン姫の・・・誇り高き魔術師だ! 負けなんて、認めない!」
「デ、デヴィット・・・・」
「・・・そう、あなたの名前は何?」
「僕は・・・デヴィット・ウィット・・・ウィット一族の長男だ!」
ウィット一族。古来より今まで続いている由緒正しき魔法一族だ。ま、プライド高くても仕方ないかな。つーか、傲慢王のところ行けよ。
「私はシェアラ・アムバンドリー。誇り高きその勇気に敬意を表する」
そう言ってシェアラちゃんはデヴィットの腹を思い切り殴り気絶させた。そして、お姫様抱っこをして唖然としているレヴィアタンさんとリオレさんにデヴィットを預けた。
「勝った」
無表情で、でも声は喜びに満ちていた言葉。それを聞いていたのか、眠るスフェラちゃんは微笑んでいた。