レグがここに来る前のお話 Ⅰ
こんにちはー! 一週間ぶりですねー。
今回はスフェラがなぜ、あそこまでアスモデウスを愛しているのかに迫るお話です。
タイトル通り、レグくんはほぼ出てきません。
では、ごゆるりと~
これは、レグ・ハーディアがアスモデウスの弟子になる7,8年前のことである。
「スフェラ、食事が終わり次第、私の部屋に来なさい」
昼、ミュコス家のみんなで食卓を囲んでいる途中に、あたしはリィおばあ様にそう言われた。
リィおばあ様はプレイグの世界の全てのメイドを総べる女王であり、あたしにメイドの極意を教えてくれた師匠でもあった。
みんなの視線を浴びる中、あたしは小さな声で「はい」と答えた。
――――いったい、何の用事だろう。
おばあ様に命令されることは多々あったけど、今回みたいに女王の間に呼ばれることは今を合わせても3回しかない。
1回目はメイド試験の最高レベルを合格したとき。2回目は同僚であるレオとの婚約を聞かされた時だ。
不安を胸に抱きつつ、女王の間の扉を3回ノックし、部屋に入る。
「失礼いたします、リィ様。スフェラでございます」
日が落ちる時間までは、あくまで女王とその部下という関係だ。
あたしは恭しく礼をする。
「顔をあげてちょうだい、スフェラ。今は祖母と孫でいいのだから」
そう言われて顔を上げると、高級そうなイスに座り微笑んでいるおばあ様がいた。
「おばあ様、本日はどのようなご用件で・・・?」
ホッとしたあたしは、取り合えず疑問を口にする。
おばあ様はすぐには答えず、あたしに近くに来るよう命じた。
近くに来ると、おばあ様が指をパチンと鳴らし、どこからともなく1つの椅子を用意した。
「そこに座りなさい、スフェラ。これは、あなたに関する大切なお話なのだから」
「!!」
微笑んでいた祖母の顔が急に真剣なものに変わったので、あたしは無言でうなずき腰をおろす。
そして、口を開いたおばあ様が言ったことはあたしに大きな衝撃を与えた。
「スフェラ・ミュコス。あなたを《七つの大罪》が1人淫乱王アスモデウスの専属メイドに任命します」
「え・・・!?」
本来10歳を過ぎたメイドや執事一族の少年少女が貴族の家で働くことは珍しいことじゃない。
けど、それはあたしのように突然ではなく数回、主と会ってからだ。
じゃないと本当に主従関係が成り立つかを見極めることができないから。
それは、おばあ様も何百回、何千回と行ってきているから承知しているはず。
「その返事ということは不服なのですね」
「そうではないのですが・・・」
おばあ様の声に若干の同情が含まれていたので、慌てて否定した。
「分かっています、スフェラ。確かに突然のことに驚きを隠せないでしょう。しかし、メイドの世界で生きて行けば、このようなイレギュラーなこととは何度も遭遇します。万が一、アスモデウス卿が大切な孫娘を傷つけるようなことがあれば・・・その時は、滅します」
「は、はい・・・・・・」
祖母の最後の言葉があまりにも本気すぎて少し引いてしまったのであった。
最後まで読んでくださってありがとうございます。