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エレンスーンの大空を舞う  作者: 葉桜つきみ
第1章 王都『クラカイル』
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第02話 「冒険者ギルドにて 其の一」

第02話 「冒険者ギルドにて 其の一」



 俺はアリスとともに、冒険者ギルドへと向かっていた。


「あ!王様!お久しぶりです。これ食べていきます?」


 出店のおばさんがたこ焼きらしきものを差し出してくる。


「あ、じゃあいただきます。えっとお代は200ゴールドでしたっけ?」

「いいですよ。お代は。王様に食べていただけるだけでも光栄ですから。はいっ。アリスさんも」

「私も頂けるのですか?どうも、ありがとうございます」


 アリスが目を輝かせる。この辺は年相応の女の子に見える。普段のとは全然違うな………。いつもは仕事第一だからな。

 だからギャップがすごい。

 こういうのを見ているとつい頬を緩めてしまう。

 いかんいかん。見惚れてしまうところだった。ふぅ危ない、危ない。


「へ?ああ、じゃあお言葉に甘えて……」


 とりあえず、誤魔化す。バレてないっぽい。よし、セーフ。おばさんがさっきよりニッコリしているのは気の所為か?まあいい。見間違いだ。少し自意識過剰になってたかな?


 俺もおばさんに甘えることしお金を取り出すことをやめる。

 別にこれぐらいはゲーム時代からの積み重ねてきたお金があるので全然出費にもならんのだが……。


「ありがとうございました。また来ますね」


 俺はそう告げ、アリスはたこ焼きっぽい物を持ったまま軽く会釈をし、その場を離れる。

 ここまでの道のり大分時間をかけてしまった。


 王様だと言うこともあって歩く度にいろんな人に声をかけられる。

 さっきからずっとこんな感じだ。

 ごめんよ~。これは≪変装≫使ってるから偽者の顔なんだ。くぅ、自分の我侭の所為でまだ一般市民には本当の顔見せられてないな。今度、変装解いて散歩する時になんか買って行こう。よし、店の名前と位置をメモメモ。


「また来ますね~」

「はい、また来て下さい」


 俺達はたこ焼きっぽいのを食べながら、冒険者ギルドへと向かう。


「そうだ、王様。王様はギルドをつくっていたといいましたね?」


 アリスはたこ焼きを頬張りながら質問してくる。


「ああ」

「そのギルドってまだ残ってるんですか?」

「う~ん。どうだろう。残ってると思うよ。ギルドの通信連絡も機能しているし」

「だとしたら変ですね……。どこかのギルドに所属しているなら、左の手首にギルドの紋章の描かれた腕輪が付くはずなんですが……。」


 この設定はゲーム時代からあった。だがしかし、これには実は腕輪を消す方法があったのだ。オプションモードの奥深くに潜んでいる≪ギルドの腕輪≫をOFFにすれば消えるのだが……。まあそこまでは知らなかったか……。まあ、確かめれるしな。久しぶりにONにしてみるか。


「よし、ちょっと待ってろよ……。今、出すから」

「?」


 やはりON、OFFができないと思っているアリスには意味がわからないようだ。


「あ!あった。よし、これをONにしてっと……。」


 ≪ギルドの腕輪≫のオプションをONにして、アリスに見せる。すると少し唸り出した。


「う~ん。この紋章はどこかで見たことありますね……。もしかしたら、今、発展して残っているギルドか、派生のギルドがあるかも知れませんね」

「そうか発展か……。どんなのになってんのかな?」

「さあ、ギルドハウスとかありますか?行って見ればわかるんじゃないんでしょうか」

「ふ~ん」


 ギルドの拠点のギルドハウスはあるっちゃある。だが、ここから遠いのだ……。あ、そうだ!今度、転移魔法使って行ってこよう。


「あ、着きましたよ。ここがこの街のギルドハウスです」


 着いたのはえらく横に長い2階建ての大きな建物だった。

 なんか見覚えが……。なんか記憶の端っこに引っ掛かってる漢字だ。

 あ、もしかしてこの建物建てたのは俺かも。

 通りで横に長くて2階建てな訳だ。家が田舎だったからな。こういう家の方が安心するんだよ。


「さあ、入りますよ」

「うん」


 入るとやっぱり見覚えのあるものがチラホラ。あ、あのシャンデリアって確か誰かが調子に乗って付けたんじゃなかったっけ。少し記憶に残ってたからそん時には、ちょっとだけ酔いが覚めてたのかも……。


『………………………………………………………』


 俺達が入ってきてから少し冒険者達がざわつき始めた。どうやら俺が王様だと気付いたようだ。まあ、そりゃあ気付くわな。王様だもの。


「ようこそいらっしゃいました。王様」


 奥から少女が出てきた。


「一応ここのギルドマスターを勤めさせていただいています。フィルリアです。では、こちらへどうぞ」


 彼女はそう言って俺達を部屋へと案内する。

 ん?なんか、フィルリアって聞いた事がある様な無いような………。

 よく見ればどっかで見たことがあるような………。

 んー。思い出せない……。まあいいか。重要な事ならばいずれ思い出すだろう。

 俺は思い出せなくてモヤモヤするのをどうにか押さえ込んだ。


「ここです。さあさあ、中にお入りください」


 彼女は目の前の部屋を指差しながらそう言った。ということはここが客室か?いや、ギルドマスター室と札が掛かっている。


「お掛け下さい」


 目の前にいすが差し出される。俺はそれに腰掛ける。

 アリスはいすには座らずに、部屋の角で待機している。座ればいいのに……。そういえばお偉いさんの傍付き(?)って立ってんのが普通なのかな?各国の王が集まって会談するときとかもそういうのをよく見るけど……。もしかしたら、常識なのかも知れないな。俺が知らないだけかも。あとで聞いておこう。


「どうぞ」


 目の前に紅茶らしきものが出される。


「ああ、ありがとう。えっといただきます」


 俺はそう言って紅茶もどきをすする。


「!」


 この味は飲んだことある。現実やこっちに来てからじゃない。おそらく、『エレンスーンオンライン』の中でだ。

 そうか!フィルリアってどこかで聞いた事あると思ったら、うちのギルドの家事をさせていたNPCじゃないか!!すっきりしたが、何でフィルが冒険者ギルド何かやってんだよ!びっくりするわ!!確かに思い出せないモヤモヤは解けたけども!よし≪変装≫を解こう。気付くかも知れない。


「なあ、フィルだろ?俺を覚えてるか?≪鮮やかな(クリア)ウイング≫だよ!」


 俺は≪変装≫を解除し、そう告げる。すると、フィルは驚いたように目を見開いた。


「え!?サイさん…ですか?なんで、え?王様?」


 やっぱりか!!いや………。でもおかしいな…。俺らと同じ時代からいるのであればもっと年をとっているはず……。ああ!そうか忘れてた!フィルって確かハーフエルフだったな!


「そうだ、サイだ。でもなんでだ?まさかここのギルドって、≪鮮やか(クリア)ウイング≫が発展したものなのか?」

「ちょっと違いますね。ここは、≪鮮やかな(クリア)ウイング≫の派生ギルドです。サイさんたちがいなくなったあの日私はここで留守番をしておりました。ですが何時まで経ってもサイさんたちは戻ってこず……。そうして数年が経ち、それでもまだサイさん達は戻ってきませんでした。他の皆さんも心配しておりましたよ?そしてその時、ギルド制度はほとんど無くなって来ていました。その頃には他のギルドも次々に無くなっていき、残ったのは発展していったギルドばかりでした。そこでせめてサイさんたちのつくったギルドだけは残そうと奮起し、ここまでのギルドとなったのです。凄いでしょ!!」


 踏ん反り返って胸を張るフィル。

 確かに凄いっちゃあ凄いけど、最後の最後でキャラが崩れてはいませんか?おい、敬語はどこ行った、敬語は………。あとほんとに60歳超えてる?俺にはそうは見えない。アリスと変わらない年に見える……。エルフって恐ろしい。


「でも本当に心配しました!!急にいなくなるから!でもご無事でよかった!!」


 そう言って俺に抱きついてくるフィル。うわ、泣いてる。女の子泣かせちゃった。え、何、俺が悪いの?こんなことになったのは誰の所為でもないよね!?しいてあげるとすればこんな世界に勝手に来させた神様が悪い!ほら、今すぐ現れて俺らに謝れ!!

 ………まあ、出てくるわけ無いか。こんなことが起きてんだからもしかして神様が居たり……なんて期待した自分が悪かったよ。


 二人が再開を喜んでいるその後ろでアリスが面白くも無いような顔で二人を見ていた。しかしそれを二人は気付かなかった。いやむしろサイはあえて気付こうともしなかった。なぜなら知ったほうが後々惨劇が待ち受けているのを知ってしまうから。多分知ってしまっていたのなら、サイはビクビク震えてしまっていただろう。

 まさにこれこそ≪知らぬが仏である≫。



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