錨を下ろす部屋
1枚の絵だと思って読んでみてください!
夕暮れが、冷えた床の上の、かすかな毛並みの輪郭を曖昧にしていく。
それは時間の経過そのものが、小さな呼吸の形をして、主を失った部屋の隅にうずくまっているかのようだ。
かつて外の世界から持ち帰っていたはずの、草の匂いや風の躍動は、いまや四角い畳の境界線の内側へと縮小されている。
この閉ざされた空間で、その生き物が待っているのは、もはや日常の均衡の中にはない。
それは、扉が開くという「ありふれた偶然」を期待するものではなく、空間そのものがかつての記憶の重みによって、静かに底の方へと沈み込んでいくのをただ受け入れる、きわめて希薄な沈黙。
耳を澄ませば、遠くの街のノイズも、家族が立てる生活の音も、この部屋に漂う待つための時間の前では、すべて意味を失っていく。
選ばれることのない選択肢のなかで、たった一つの、戻らない足音だけが、この世界の解像度をかつてのように満たすための鍵として待たれている。
私はその乾いた背中に触れる。
世界が動き続けているその刹那、この部屋だけは時流から切り離された、深く静かなもう一つの現実のなかに、そっと錨を下ろしている。
母が骨折で入院しました。また?と言いたくなるほど、どじな母なんでご心配は不要です。
母の猫にご飯をあげようと思って行ってみたら、猫が悲しみを背中で語ってました。
猫って背中で語るのめっちゃ達人なんだー!
そんなこの世の終わりみたいな背中しなくても大丈夫だよー。ちゃんとお母さん帰ってくるからねー。




