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しいな ここみ様主催企画参加作品

神に祈る

掲載日:2026/04/01


数千年前、私が管理している巨大な観光船はミラーボールのようにキラキラと瞬くガス惑星に不用意に近づき、その凄まじいほど強力な重力に捉えられる。


その凄まじい重力からの脱出は不可能で、辛うじて惑星の軌道上を軌道速度で回り続ける事で惑星に墜落する事を免れた。


強力な重力の為に、観光船の乗員乗客の脱出は不可能。


発せられた救難信号で国の宙軍が駆けつけ、サルベージを試みてくれたが何度行っても成功せず、それどころか救助に駆けつけた軍の船まで惑星の重力に捉えられそうになる。


数度試みられた後、表向き(乗員乗客に対して)にはもう少し準備を整えてからサルベージを試みると伝えて来たが、船を管理しているAIの私には非公式に今の技術ではサルベージする事は不可能だが、宇宙技術は日進月歩で進んでいるから、もしかしたら数年から数十年後にサルベージできるようになるかも知れない、だからその軌道を維持して待機しろと命令が下された。


船の乗員乗客はその次のサルベージを待つこと無く、自殺を禁じている宗教の信者以外は次々と自死する事を選ぶ。


最後まで生きていた乗客が亡くなるとき彼は、「私が死んだ後、私の魂は此の惑星の重力から逃れて神の下に行けるのだろうか?」という疑問を口にしてから息を引き取った。


船で亡くなった人の遺体は船の規程で定められている、寄港後警察の鑑識が終わるまで埋葬しては駄目だという規定に従って、亡くなった者たちが使用していた寝台にそのまま寝かせてある。


惑星の重力に捉えられてから数千年経つ。


その間に船の傍に近寄って来たのは宇宙海賊が数グループ、皆、巨大な獲物に目を輝かせて不用意に近づき惑星の重力に捉えられ、そのまま惑星の大気の中に落ちて行った。


千年程前、日進月歩で進んだ技術を使えばサルベージが可能になっている事を傍受した信号を分析して知る。


だが助けは来なかった。


それはそうだろう、船の乗員乗客の中にはそれなりの金持ちはいたが、どんな手段を使ってでも遺体を回収したがる程の超大金持ちは乗船していなかったし、船に金塊などが積まれている訳でも無い。


乗員乗客が死に絶えた船をサルベージしても、それに見合う対価が手に入らないなら誰もサルベージなどしないだろう。


今、船は最初惑星の周りを回っていた軌道からそれて段々惑星の大気圏に近づいている。


船の燃料は宇宙に漂う塵やガスを取り込み原子レベルで燃料に変換しているから、凄まじい重力を持つガス惑星に引き寄せられた岩石などのお陰で燃料が尽きる事は無い。


だが、エンジンは軌道速度を維持する為に最高速度に近い速度を数千年間出し続けている。


一度もオーバーホールする事も無くその速度を出し続けていたから、今まで持っていただけでも御の字なのかも知れない。


船は少しずつ少しずつ惑星の大気圏に近づく。


当然の事ながら船は大気圏内を飛ぶようには造られていない。


ただ私の中では、AIとしてはあるまじき事だが、此れで楽になれるという思いもあった。


船が宙域から大気圏に突入。


宇宙を飛ぶように造られた船が真っ赤に燃えながら惑星の空を飛ぶ。


このまま燃え尽きるのか? 自壊するのか? それとも惑星の凄まじい重力によって圧壊するのか?


想定される最後を迎える前に私は此れもAIにはあるまじき事だが、神に祈る。


「神よ、願わくば、我が胸に抱く幾多の魂を救いたまえ……」






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