ネオンと木枯らしと恋の温度
冬、街には木枯らしが吹いていた。
彼は冷たい男だった。名前は「クール・ガイ」。誰もがそう呼んだ。スーツの襟を立て、ポケットに手を突っ込み、感情を見せない。ビルのプリズムに映る彼の姿は、まるで氷の彫刻のようだった。
そんな彼の前に、彼女が現れた。
「ホット・ホット・レディ」と呼ばれる彼女は、真っ赤なコートに身を包み、街のネオンを背負って立っていた。彼女の瞳は、たそがれの空よりも熱く、オリオン座よりもきまぐれだった。
「あなた、冷たい男ね」と彼女は言った。
「そうかもな」と彼は答えた。
「じゃあ、あたしの愛で暖めてあげる」
彼は笑わなかった。でも、ほんの少しだけ、ポケットの中の手が震えた。
夜が来る。彼女は言う。
「ほっとかないでね。だってあたしは、ホット・ホット・レディよ」
彼は答えない。けれど、彼女の言葉は、彼の心の隙間に入り込んで、じわじわと熱を伝えていた。
二人は歩き出す。ネオンの下、木枯らしの中。彼女は彼の腕に手を添えた。
「ほんの少し、恋の炎にやかれてみない?」
彼は立ち止まり、空を見上げた。オリオンが瞬いていた。
「……少しだけなら」
夜が明ける。街はまだ眠っている。
彼女は微笑む。「あたしのお熱に、あたってみない?」
彼は、初めて笑った。
そして、街の冷たい空気の中で、ほんの少しだけ、春の匂いがした。
連載版もあります。
詩小説ショートショート集
わたしとAI君とのコラボレーションです。
このショートショートのもとになった詩は、連載版「われは詩人 でなければ死人 ーAIと詩を語るー」で読めます。
ショートショートタイトル「ネオンと木枯らしと恋の温度」の原詩は「Cool Guy Hot Lady」です。




