第12話「AI × 黒田、奇跡の共作!?〜社内プレゼン大会『最強タッグ』伝説〜」
社内プレゼン大会――年に一度、全社員が震え上がるイベントがやってきた。
普段は地味な部署も、この日だけはスポットライトを浴びる。
優勝者には、なんと「1年間の予算増額権」。
営業部にも当然出場枠が与えられていた。
「黒田さん、ついに来ましたよ……!」
ミナミがキラキラした目を向ける。
「何がだ。」
「“AIと黒田さんの共同プレゼン”ですよ!
ほら、前回の勝負で、AIも黒田さんの“魂”も大事って結論になったじゃないですか。」
「勝手に結論を作るな。」
「いやいや、あの空気は完全にそうでした。
なので、このプレゼンは――未来と過去の共演!
名付けて『ハイブリッド黒田システム』!」
「その名称はやめろ。」
とは言いつつ、黒田はまんざらでもない。
前回のプレゼン勝負で、ミナミの“AIの可能性”に対する真剣さを見た。
そして、自分が“人の心”を重んじる理由も、少しは伝わったはずだ。
今回は――その両方を見せればいい。
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■プレゼン準備:AIと人間の奇妙な共同作業
「じゃ、まずAIに提案書の骨子を作ってもらいましょう。
黒田さんは、その中に“魂”を入れてください。」
「魂という言葉を乱用するな。」
AIは、ものの数分で美しい構成案を出してきた。
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■タイトル
『市場を動かすのは“データ”と“情熱”だ』
■構成案
1.市場分析
2.顧客ニーズの可視化
3.具体的施策案
4.期待効果
5.エピローグ:ビジョン
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「……タイトルが、やけに熱いな。」
黒田は眉をひそめる。
「最近のAIは、ちょっと熱いワード入れると、すぐ情熱路線になるんですよね。」
「お前がそういう入力をしたからだろう。」
「まぁまぁ。ここに黒田さんの“人間ストーリー”を入れましょう。」
黒田は、顧客の言葉や、現場で見た様子を手書きメモで書き足していく。
ミナミはAIに指示して、ビジュアルと構成を整える。
「ほら、黒田さん。このページ、手書きの走り書きをAIがいい感じの“手書き風フォント”に変換してくれました!」
「手書きを手書き風フォントにするとは……本末転倒ではないか。」
「でも読めるじゃないですか。黒田さんの字、小学生みたいなんで。」
「黙れ。」
こんなやりとりを繰り返しながら、資料は少しずつ形になっていく。
黒田のアナログな情感と、AIの精密な分析。
それをミナミが組み合わせ、磨き上げていく。
気づけば夜。
「……よし、完成です!」
「ふむ。」
2人は完成した資料を見つめた。
そこには、どちらか一方だけでは決して作れないプレゼンが仕上がっていた。
「なぁ、ミナミ。」
「はい。」
「これは――悪くない。」
ミナミは笑った。
「ですよね。“ハイブリッド黒田システム”、最高じゃないですか!」
「だからその名称はやめろと言っている。」
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■プレゼン大会当日:緊張のステージ
大会は大ホールで行われ、全社員が見守る。
大企業の学会発表のような熱気だ。
司会が声を張る。
「次の発表者は、営業部!
テーマは――『市場を動かすのは“データ”と“情熱”だ』!」
照明が落ち、スポットが当たる。
ミナミがステージ中央に飛び出す。
「皆さま! 本日は“未来と過去の仲良しコラボレーション”をお届けします!」
「誰が仲良しだ。」
黒田が小声でツッコむ。
ミナミは笑顔でプレゼンを始めた。
「まず、こちらがAIによる市場分析です!」
スクリーンには、美しいグラフやトレンド図が映し出される。
会場がざわつく。
「すごい……」
「ここまで精密に分析できるのか……。」
続いて、黒田が歩み出る。
「だが、数字は――顧客の痛みを語らぬ。」
会場が再び静まり返る。
黒田は手書き風のページを映した。
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『在庫が積み上がっていく倉庫を見るたび、胃が痛む。』
『うちみたいな小さな店は、誰も見てくれない気がする。』
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「これは、私が実際に聞いた声だ。
数字には出ない悩みだが、売上より重い。」
会場の何人かが息をのむ。
ミナミがすかさず入る。
「だからこそ、AIで“考え”、人間で“感じる”――
その両方が必要なんです!」
スクリーンに、大きな一文が浮かび上がる。
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『データが未来を示し、
感情が未来を選ぶ。』
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場内から「おぉ……」とどよめきが起こる。
黒田は最後に一歩前に出て、静かに締めた。
「AIに任せるべきことは任せればよい。
だが――誰かの痛みに寄り添うのは、いつだって“人”だ。」
照明がふっと明るくなり、拍手が起こった。
小さな拍手から、次第に大きな喝采へ。
会場全体が揺れるような拍手に変わる。
ミナミはこっそり黒田の袖をつまんだ。
「黒田さん……これ、優勝じゃないですか?」
「まだ早い。」
だが、黒田の口元はわずかにほころんでいた。
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■結果発表:営業部の奇跡
司会が壇上で封筒を開く。
会場が息を飲む。
「……今年のプレゼン大会、優勝は――」
鼓動が高まる。
「営業部!!」
観客席が爆発した。
「やったぁあああああ!!」
ミナミが跳びはねる。
黒田は静かにうなずく。
「悪くない結果だ。」
「いや悪くないじゃなくて優勝ですよ!?
ねぇ黒田さん、ちょっとは喜んでくださいよ!」
「……お前の努力と、AIの力と、少しばかりの私の知恵の賜物だ。」
「“少しばかり”って言いました!?
めちゃくちゃ入ってましたよ!」
そのやりとりを聞いた周囲の社員がクスクス笑う。
「営業部、いいチームになってきたな。」
「AIと黒田さんのコラボ、もう伝説じゃん。」
ミナミは黒田の横顔を見て、ふっと笑った。
「黒田さん、やっぱり未来も過去も、両方必要ですね。」
黒田は目を閉じて言う。
「未来は、過去を越えていくものだ。
だが、過去があったからこそ――未来がある。」
「……名言っぽいですけど、意味はわかりません!」
「わからなくてよい。」
2人は笑い合った。
ステージの上では花火のような紙吹雪が舞い、
優勝トロフィーが照明に反射して輝いていた。
こうして、“AI × 黒田”の奇跡の共作プレゼンは、
社内の語り草となるのであった――。




