表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/24

第八話 七不思議狩り

今更ですが感想とかあると嬉しいです。今後の活動の励みになります。

 人と人とが出会うのは友達になる為だと誰かが言った。であれば喧嘩別れをするのは何故だろう。それはもう一度友達になる喜びを分かち合うためだ。ということで第一回仲直り作戦を実行する。

 まずはファーストアピールタイム、朝の登校時間。第一戦術、謝罪。そして第二戦術、貢物。


「真由ちゃん。昨日はごめん。本当に酷いことをしちゃったね。お詫びにこれ、あげる」

「べ、別にそこまで気にしてるわけじゃないけど。ってナニコレ?首輪?」


 良かった。そこまで気にしていないらしい。きっと普段から優しさ溢れる人だから器が広いんだろう。


「それはね、怪異【特別動物飼養許可証(首輪)】の残骸。元々相手に首輪を着けて名付けると服従させられる道具だったの。ただ一度壊しちゃって。でも直したら怪異としての機能も戻ったから。多分違法なとこで高く売れ」

「いらない」

「え?」


 ボチャン。


 よく見ると近くにあった川に首輪が投げ捨てられていた。途中までは良かったがやはり怪異では駄目なのだろう。希少価値とか高そうだったから気味が悪くても平気だと思ったが駄目らしい。だが危険物を放置するわけにはいかない為黒口腔(くろこうこう)に回収させておく。






 セカンドフェーズ、休み時間。また口を聞いてくれなくなった為、割愛。

 サードアタックチャンス、昼休み。第三戦術、盟約。


「真由ちゃんせめて放課後に埋め合わせさせてくれないかな。デートみたいに」

「そ、そこまで言うなら行ってあげてもいいケド」


 よし、このまま学校の七不思議で好感度を上げれば完璧だ。

 頼むぞ、つり橋効果。


「じゃぁ学校の七不思議を探索しに行こう。大丈夫、怪異が居てもやっつけられるから」


 何故か真由ちゃんがスンと真顔になったが問題ないだろう。拒否はされていない。






 放課後、深夜一時。校門前の集合場所には四人の男女が居た。

 あの後、真由ちゃんがメンバーを増やそうと言って聞かなかった為、急遽増員した。

 一人目、初めて【十二時の十二人】に襲われた時、最初に出会った二人組の片割れ。通称メガネ。


「ああ来たんですね。にしてもこんなこと普通考えないですよ。わざわざ怪異に会いに行こうなんて。陰陽道を極めた僕が居なければ危ういですよ」

「でも【十二時の十二人】の時何の役にも立てなかったじゃないですか」

「それはそれ、これはこれ。道具とか持ってなかったんで」


 二人目、昨日黒口腔(くろこうこう)に学校敷地外まで運ばれた人。通称脳筋。


「よぉ!俺が来たからにはもう安心だぜ!俺は肉体派霊能力者の息子、山田(やまだ) (たけし)!よろしくな!」

「よろしくジャイアン!」

「誰がジャイアンだ!」


 三人目、こちらは初めて出会う女の子だ。全身を黒のゴスロリで身に纏った色白な子。日焼けをしていない真っ白な素肌な分、目の隈やゴスロリの黒が目立って見える。同じ色白属性だし仲良くなりたい。


「わたくしは今まで学校には登校しなかった。それはかなり凶悪な怪異が出ると占いに出たから。でもそれはあなたのことだったのね。キヒッ」

「私人間何だけど」

「そうね、そう見えるわ。でもあなたよく見るとアルビノじゃない。キヒヒッ。知ってるアルビノって呪術的価値が物凄いの。あなたを媒体にしたらきっと凄い儀式が出来るわ」


 前言撤回。あれはヤバイ。仲間と言うより敵。今回の敵第一候補だろ。


「ごめーん!お待たせ!いっぱいお守り持ったら遅れちゃって」

「真由ちゃん私今日バラバラ素材にされちゃうかも」

「え!?そんなに強い怪異がいるの!?もっとお守り持ってくれば良かったかなぁ」


 違う。そっちじゃない。真由ちゃんが呼んできた子の方。


「とりあえずみんなにお守り配ってくね」

「いや僕は既に持ってるから大丈夫だ」

「俺も素手で十分だから」

「キヒッ。わたくしは呪術的な対策してるから」

「私もちょっと子飼いの怪異と相性悪いかもしれないからパス」


 こうしてグダグダしつつも七不思議狩りは始まった。






 本校舎三階理科室。


「七不思議その壱。理科室には夜な夜な踊り狂うガイコツがいる」

「それは僕の家業に舞い込んだことのある話です。怪異【付喪神】、最終的に危害を加えたら壊すと脅して無力化させました。偶に四年生の授業で使われます」






 本校舎西階段。


「七不思議その参。階段には踏んではイケナイ十三段目があって、それを踏むと異界に飛ばされて戻ってこれなくなっちゃうんだって」

「これはガチ。怪異【十三番目の裏切り】のせい。でも踊り場までの段数が十段づつなせいで三段も延長されるとパッと見でわかる。しかも発覚したらすぐ戻って来られるし、行先は何もない空間。たまに発覚せず児童置き去りでニュースになる」






 本校舎四階音楽室。


「七不思議その弐。音楽室に飾られている絵がたまに動く」

「キヒッ。それ、結構ガッツリ動く奴よ。何なら歌って踊って演奏するわ。怪異【動く絵】さまさまね」






 本校舎四階404号教室前。


「七不思議その肆。存在しないはずの四階の404号教室が出たり消えたりする」

「怪異【404号室の悪魔】ね。キヒッ。簡単に言えば部屋を隠すだけだわ。霊視出来れば確率で見えるらしいのだけれど、わたくしには見えないわ」

「僕にもだ」

「俺は見えるぜ」

「私も見える」






 体育館前。


「七不思議その伍。体育館が使われている音がしても中には誰もいない」

「それさ、先輩から教えてもらったんだけどよ。【空耳木霊】って怪異の仕業なんだって。幻聴を聞かせてくる怪異の」

「へーでも最後はとびっきり怖いのよ。七不思議の陸。夜中の十二時に人間が怪異と入れ替わる」

「それ【十二時の十二人】だね。交渉して人間を襲わなくなったからもう平気だよ」


 気づけば七不思議が全て終わっていた。七番目は全て知った奴を殺す怪異だから言及してはいけない。


「全部終わったね。帰ろっか真由ちゃん」

「う、うん。だったらこんなにお守り要らなかったかも」

「にしてもスッゲー呆気なかったな」

「対怪異特別教師たちが危険な怪異を先に処分してくれたおかげですよ。だからこうして肝試し許可まで出してくれるんですから」


 皆の足が帰路へとついて行く。このまま日常へと歩みを進めていくのだろう。一人一人の足が明日を向いていく限り、未来は私たちを歓迎するのだから。そうして()()()()()の足が足並みを揃えて地を踏みつけていく。

 ただ一人を除いて。


「?どうしました。帰らないんですか?その、…ゴスロリの人」

「待って。私が占いで見たヤバイ怪異がまだ出てない。まだ()()()()()()

「あーあ。気づかなけりゃ何も感じさせずに逝かせてあげたのになぁ」


 何よりも高い木の上にそいつは居た。奇術師(マジシャン)的風貌で佇んでいるが、顔には涙模様のピエロ化粧をしている。こちらを哀れんだ口調で話しかけたはずなのに、そいつの顔からは苛立ちを感じ取れた。


「お前!何モンだ!」

「見ての通り、奇術師さ!」

「え!?でもピエロの顔してますよね!ピエロじゃないですか!」

「ええ、その通りですよ。それに、マジシャンならポーカーフェイスするべきですよね!」


 ありえないものを見たかのように唖然として見せた後、ピエロが鬼の形相でもって叫んでみせた。


「ざっけんじゃねぇぞクソガキ共!!ピエロとクラウンの見分けもつきそうにない年して!!いっちょ前に指摘してくんじゃねぇ!!いいか!!マジシャンは仕掛けを分からないようにして不思議なことをする職業!!ピエロは敢えて失敗して人を楽しませる泣き顔の職業だ!!俺様が失敗したり泣いて見せたりすると思うか!!!」

「いや小1五人に正論パンチされて罵声浴びせるしか出来ない奴は大人化失敗してるし人生見つめ直して慟哭したらいいと思う」

「キヒッ。キヒヒッ。みんなどうしてヤバイ不審者を刺激するのかしら?常識がないのかしら?キヒッ」


 取り敢えずここまでの隙で、健二に助けを呼ぶよう連絡した。しかし枠を設置しない限り本人は来れず、護衛の偽誘拐犯も仕事で今この町に居ない。どんだけ頑張っても到着に二十分以上掛かるため来ないと思って良いだろう。


「俺様はもともとここのチャイムの怪異を仲間にするために来たんだぜぇ。それがもっといい取引先が見つかった、つって追い返されるし常識ねぇクソガキに罵倒されるしで散々だ。……でも一ついいことが有ってよぉ。お前アルビノじゃねぇかぁ。しかも霊力持ち。ここまで素材として最適なのは初めてだぁ。是非とも生け捕りにしてぇ。んじゃ後は頼んだぞ【石竜子(せきりゅうし)】!!」


 その瞬間、灰色の鱗に全身を覆った巨大な蜥蜴がこちらに向かって紫色の吐息を吹きかけてくる。直接仕掛けてくるまで察することもなかったことからかなり高度な隠密が出来ると推察できる。

 とは言え今のダメージを配下に分散したら全員石化した。しかも全滅したから二度目は無理。


「わたくし知ってるわ!【石竜子(せきりゅうし)】は石竜子(とかげ)の一種で石化する息吹を吹きかけてくるの!石になっても治療薬があるわ!」


 既にピエロは何処かへ行ったようで【石竜子(せきりゅうし)】一匹となっていた。辺りを見渡すと植物達が石となり宛ら石の庭園と言えるだろう。


「おい!お前ら大丈夫か!俺は肉体派霊能力者だから避けられたけどよ!お前ら石になったりしてねぇよな!」

「ええ僕も大丈夫です。かなりの道具がやられましたから次は無いですが」

「わたしもダイジョブ。お守り全部無くなっちゃったけど」

「私はもう無理。機動力がないし無理やり動いてもうちの子の強みを消す。だから託す。後は頼むよ」


 治療薬の話、嘘だったら容赦しないから。






***視点:間 真由***


 待って!そう叫ぼうとしたが体が追い付かないに体が追い付かなかった。あっという間に愛寿夏ちゃんが石になっちゃった。


「怪異が見えないままでは危険ね。可視の粉よ、不可視の存在を明らかに!」


 よく知らないゴスロリの子が粉を振りまくとそこに居た怪異が見えてくる。そこには灰色の大きなトカゲと黒い口のような怪異が居た。


「石ニナッタ主カラノ命令ダ。協力スル」

「なら貴方の主を回収してください!山田さんはあれの動きを止めてください!私が目を潰します!」

「わかった!それと、武でいい」


 すごい、全員今日出会ったばかりのはずなのにもう連携してる。わたしも何か手伝いたい。


「あのっ!わたしは何をすれば」

「なら先生を呼んできて頂戴!先生なら確実に葬れるわ!」


 その声を聞いた瞬間脇目も振らず駆け出した。職員室なら誰かしら先生は居る。特に怪異と戦える人はかならず一人は職員室にいるって愛寿夏ちゃん言ってた。


「武!撃たせないでください!今彼女はお守りを持っていません!」

「おうよ!ブレスは撃たせねえーぜ!」


 背後から物凄い音が響いてきた。それと同時に大地が揺れ思わず転びそうになる。それでも足を止めることはない。振り返ることもない。だって今振り返ったら、みんなが稼いでくれた時間が無駄になっちゃう。



 そうして何とか職員室に辿り着いたわたしの目に入って来たのは、石化した大人たちであった。


「え?なんで石になってるの?なんで幸せそうなまま固まってんの?なんで今必死になって戦ってる友達がいるのにこんなに簡単に負けてんの!?ねぇ動いてよ!動いて戦ってよ!!」


 かなり無茶なことを言っているのは自分でもわかってしまった。でもそうは叫ばずにはいられなかった。大人なら何とかしてくれる。そう思ってここまで走って来たのに。戦えないわたしでも呼ぶくらいなら役に立てると思ったのに。



 悔しくて、それ以上にどうしていいかわからなくて涙が出てしまった。わたしには無理だった、大人にも無理だったから。そんな弱音に心を支配されてしまいそうになる。でもその分心は楽だった。ここなら戦場から遠くて安全だと思ったから。それでも怖いものはみんなに押し付けてわたし一人安全でいるのが腹立たしかった。自分がよりキライになっていく。


「イヤだよ、助けてよ。愛寿夏ちゃん」


 そこでハッとした。助けてって言ったのは愛寿夏ちゃんだ。後は頼むよって言われたんだ。ならこんなところで休んでいる場合じゃない。卑怯者のキライな自分でもそれだけは裏切りたくないから。


「ゴメンね愛寿夏ちゃん。すぐ戻るよ。それと、こんなダメダメなわたしだけど勇気を貸して」






 そこは地獄だった。辺り一帯は石となり砕けた破片が散らばっていた。三人の少年少女と一匹の異形、そして両目を潰された【石竜子(せきりゅうし)】が激しく戦闘を継続していた。


「!?何で戻って来たの!先生は!」

「みんな石になってた!だからお願い!わたしにも手伝わせて!わたしを逃げただけの卑怯者にしないで!」


 何かが響いたのか疲労困憊のはずのみんなが顔を見合わせ一つ大きく頷いた。


「……なら一番キツイ役を頼みますわ。キヒッ」

「へへっ、あそこまで言ったんだ!ガッツ見せろよ!」

「辛いなら辞めてもいいんですよ、なんて言ったら貴方の覚悟に対する最大の侮辱になってしまうじゃないですか!」


 反応は三者三葉。しかし一人の言葉に焚きつけられ、みんなの意識が一つになる。そのことだけは共通していた。


「キヒッ。今の【石竜子(せきりゅうし)】は両目が見えてない。霊力でものを見てるの。だからあなたの霊力を隠すわ。キヒヒッ。うまくつけてね、その()()


 もしかしたら愛寿夏ちゃんは知ってたのかもしれない。だから朝にこの首輪を渡そうとしてきた。そうに違いない。


「合わせてください!僕は上半身を抑えます!捉えろ!束縛の術!」

「キヒッ。動けなくなってしまうといいわ。下半身不随・金縛りの呪い」

「友達が頑張ってんだよ!だから、くせぇ口閉じろや!」


 三人が【石竜子(せきりゅうし)】を拘束している間に、わたしは黒口腔(くろこうこう)に乗り首の天辺に上った。


「お願い。ロープに結んだ簡素なものでも効果をだして」


 この作戦の肝が運頼みなのは気に入らなかったが、それでもこれに賭けるしかなかった。首輪が置かれロープが首の横を滑ってく。そして一周したロープが首輪の留め具で結ばれた。


「名付けさせて、今からあなたはイッシー君よ」


 首輪の効果か。それまで激しく暴れていた体が急に静かになる。


「……成功ね。あとは腹を引き裂いて治療薬を作るわ」






***視点:間 真由***


 意識が戻り体が動かせるようになった。信じた通り倒したのだろう。


「キヒッ。どう石のお医者様───石化復活液の効力は」


 正常に治療できたか確認しに来たのだろう。ゴスロリが顔を覗き込んでくる。


「愛寿夏ちゃん!」


 真由ちゃんが私をきつく抱きしめる。効率のためとは言え、心配させた分甘んじて受け止める。


「なんであんなことしたの!もっと自分を大切にして!わたしの前から居なくならないで」

「わかった。次からは気を付けるから」

「絶対だよ。絶対って約束して」

「まぁ頑張る」


 それにしても黒口腔(くろこうこう)の記憶を読む限り、かなりいい連携をしていた。本当に初対面とは思えないくらいだ。職員室への道すがら聞いてみるか。


「にしても皆凄いね。本当に今日あったばかりなの?」

「ええ、僕も驚きですよ。折角ですし自己紹介でもしましょう。僕の名前は安倍(あべ) 直樹(なおき)。一年二組です」

「入る前にも言ったが、俺は山田(やまだ) (たけし)。一年三組だ」

「キヒッ。わたくしは山崎(やまざき) 智美(さとみ)。一年三組だわ」


 もしかしたらこれも何かの縁かもしれない。友達になっておいて損はないだろう。


「私の名前は喜美候部 愛寿夏。一年一組だよ」

「智美ちゃんとは初めましてだけど、わたしの名前は間 真由。一年一組だよ」


 ん?ここで一つ疑問になった。私はてっきり全員真由ちゃんが連れてきたと思っていた。けどなんで智美ちゃんと初めましてなんだ?


「キヒッ。キヒヒッ。疑問に思ってそうな顔をしてるわね。なんでここに居る全員と初めましてなのかって。キヒッ。それはね、わたくしが勝手に紛れ込んでいただけ。占いで呪術的にいい素材が手に入るって出たから。キヒヒッ」


 この場に居た私達全員が思わず歩みを止めてしまった。そして全員がこう思っただろう。


((((こいつ七不思議より怖くね))))



ぬらりひょん系ゴスロリ娘「常識ないのかしら?」

↑入学式から連続不登校といい一番常識ないかも。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ