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第六話 裏掲示板


 寿命が!足りない!!


 今、私の寿命は少ない。健二からもらった五年分だけしかない。とはいえ奪ったままではまずい。人から盗ったものを返さないのは優等生のすることではない。だからこそ黒口腔(くろこうこう)が持っていたエネルギーで一部返済した。が、そもそも怪異は寿命となるエネルギーを大量に蓄えているわけではない。限界集落を壊滅させた黒口腔(くろこうこう)だがそれでも持っていたのは一年にも満たない。さらに今後も駒として活躍させることを考えたら搾り取れる量も雀の涙だ。



 ならばどうするか。人間を襲うのが一番効率的だが、それは優等生を目指す身としてはいただけない。それに元々直ぐ死ぬ予定の人間に注ぐわけだから効率も悪い。であれば、名が知れ渡る程強力な存在。それに挑むためには駒を揃える必要がある。だからこそこうしてネットサーフィンをしているが。


「見つからない」


 それもそうだ。犠牲者が沢山でるような存在は国が隠蔽している。一般に広まっている噂は信憑性に乏しい。


「そもそも怪異は一か所に留まるようなものじゃないし、留まるタイプは厳しく封鎖されているし。あっなにこれ。怪異について知りたいなら裏掲示板を見るべし」


 なんじゃこりゃ?最初は見間違いかと思ったが、そうではないらしい。確かに掲示板の中に先ほど言ったタイトルのスレが立てられている。


「どうやらこれも怪異で、本気で怪異について知りたい人しか辿り着けない怪異好きの楽園らしい」


 怪しい。本当にそんなものがあるならインターネットは規制されているだろう。実際、そのスレ内にも懐疑の声は上がっていて、ただの釣りなのかと騒いでいる。


「ほらやっぱり」


 ”もし本当にある場合、むしろ規制すればある証拠と捉えて探す人が出る可能性がある。だから規制されてない。”

 そんなものはない。そう言おうとした時だった。スレ主の反論が目に入ったのは。


「一理あるな。まぁ元々手詰まりに近いし、探すのもありだな」


 そう思いそのスレを見ていくと、スレ主の最後の書き込みにURLらしきものが貼られているのが目に入った。不思議なことに他のスレ民達は見向きもせず、ただ掲示板を荒らしていくだけだった。


「もしやこれか?……試してみるか」


 そう言うと私はそのスレに最後のURLっぽいナニカしてみた。

 ところが、私の書き込みに反応した人は居ても、誰もURL何て存在しないと回答したのだ。

 そのURLとは「htttttt:::::::::///怪異怪異怪異/怪異怪異怪異/怪異怪異怪異/裏掲示板.異界」


「うん。もろ怪異だわこれ」


 リンクを開くべきか、ブラウザを閉じるべきか。迷った挙句実行したのはリンクを開く行為だった。

 念のため開いた先のブラウザは私が直接見るのではなく、チートを使って十分以上虫に見せてから直接見る。

 特に問題はなかった。


「思ったよりも普通」


 零れ出たその一言が今の私の感想だった。

 背景が黒で文字が赤い。その程度の変化しか見られずむしろ拍子抜けだ。使われている文字がこの世に存在しないとか、見たら死ぬとか。そういうこともあり得ると思っていたが、今の所は全然ない。


「さて今話されてるスレは……怪異【十二時の十二人】について、だと」


 気になるタイトルがあったため、思わず開いてしまった。スレ内では主に誰がそれを起動したのかについて議論されていた。





【朗報】十二時の十二人 動くwww


1 名無しの怪異

久しぶりにあのチャイム動いたやん。

何で?


2 名無しの怪異

スレ立て乙ww


3 名無しの怪異

何でもあの怪放連中の実験らしいぞ


4 名無しの住人

なんで怪放が?


5 名無しの怪異

>>4

たぶん生きた人の分身が欲しかったんじゃね。

あいつらの目的からして人欲しそうだし


6 名無しの住人

たし蟹






 そこまで読むと私は多数の視線に晒されていることに気が付いた。あたりを見回してみてもどこにも人が居ないことがわかる。とは言え興味深い単語が出てきたため今やめる訳にはいかない。

 怪放がなんなのか。直接書き込んで尋ねるか悩む。この手の怪異は直接反応うすることで引きずり込まれる可能性があるため危険だ。残念だが周りの反応から予測することしかできない。そう思っているとスレの方に進展があった。






36 名無しの住人

あの、最近入って来たばっかなんですけど怪放ってなんですか?


37 名無しの怪異

>>36

怪放ってのは怪異解放連合の略。

全ての怪異を人間の手から解放することを目的としてるヤバイ奴ら。

ついでに今回の実験はたぶん人間と成り代わった伏兵を作ることだと思う


38 名無しの住人

>>37

サンガツ






 どうやら入学式の騒動は怪異解放連合なる危険な組織が行ったのだろう。全ての怪異を解放して奴らに何のメリットがあるのだろうか。怪異は人間が助けたって恩を返してくれる相手ではない。むしろ怨にして返してくる。

 きっと私には想像が付かないだけなのだ。動物愛護団体の人とか、自分に何のメリットもないのに行動できる人間はいる。それが偶々怪異に向いただけ。ただそれだけなのだろう。



 だとしても怪異を人間の手から解放した場合、怪異はどうするか。それは人間に襲い掛かるだろう。復讐か娯楽か、存在を維持するためか。そんなものは関係ない。ただ一つのシンプルな問題だ。

 私が被害を被るのは御免だ。そのためにもこの組織は解体させてもらう。



 そこまで思考して気が付いた。さっきより視線が増えている。それに何だか肌寒い。

 この現象は怪異【裏掲示板】のせいなのか。どちらにせよ開き続けるのは危険であるためブラウザを閉じようとする。

 その時だった。一つの書き込みが目に入った。






89 名無しの住人

もし君がまだ取り込まれていないなら見てくれ。

これは怪異【裏掲示板】だ。視線は目を付けられた証拠。

放置したらダメ。書き込んでもダメ。遠くに逃げてもダメ。

ログアウトせずに閉じると取り込まれる。






 そんな書き込みがあったからか思わず手を止めた。視線は増え続けている。

 スレ内でも反応があった。






90 名無しの怪異

>>89

うわ荒らしじゃんwww


91 名無しの怪異

>>90

荒らしは無視


92 名無しの怪異

>>89

あいつまた嘘ついてる


93 名無しの住民

騙されるな。

”名無しの怪異”はすべて【裏掲示板】だ。


94 名無しの怪異

今北産業


95 名無しの住民

この反応もしかして今誰か見てる?

だとしたら早く逃げて


96 名無しの怪異

>>94

新人

荒らし

嘘つき


97 名無しの怪異

>>96

サンガツ






 異様な光景。よく見たら書き込みには” 名無しの怪異”と” 名無しの住民”の二種類が存在する。だとしたら” 名無しの怪異”が【裏掲示板】で” 名無しの住民”が取り込まれた人なのだろうか。

 アドバイス通りログアウト出来ないか探してみるが、それらしい物は存在しない。どうしたらログアウトできるのか、名無しの住民が教えてくれるのをそんな呑気に待っていた時だった。

 スレが動いた。いや高速で書き込まれ続けた。”ksk”、と。






100 名無しの怪異

ksk


101 名無しの怪異

ksk


102 名無しの怪異

ksk


103 名無しの怪異

ksk





 この【裏掲示板】のシステムとして新規に書き込まれた場合、リアルタイムで更新しその書き込みが映るようページをスクロールする仕様がある。がそのせいで凄まじい勢いの書き込みにより、あっという間にその他の書き込みを見失ってしまう。このままではログアウトの仕方がわからず時間切れとなるだろう。






996 名無しの怪異

ksk


997 名無しの怪異

ksk


998 名無しの怪異

ksk


999 名無しの怪異

ksk


1000 名無しの管理人

このスレッドは規定数に達しました。このスレッドは過去ログへと移行します。

これ以上の書き込みはここの住民となって新規スレッドを立ててくださいwww






「終わった。こんなのもうどうしようもない」


 書き込みが千に到達した瞬間、強制的にスレが閉じられた。

 名無しの住民を信用するならば、【ワンホール】で逃げても駄目らしい。であればもう逃れることは出来ないのだろう。


「いやそれがどうした。今助かる方法が思いつかないだけで、別に諦める理由にはならない」


 考えろ。もし書き込みが邪魔されたらどうする。書き込み以外で出来ること・・・そうかスレ立て。立てたスレの題名なら直ぐには消されない。






やったね犠牲者、仲間が増えるヨ   (10)

【悲報】画面の前の君、ワイら舐めすぎ(12)

【朗報】住民、増えるもようwww   (14)

ログアウトの仕方は上のメニューか ・・・(1)






 確かにその考えは間違っていなかった。だが逆に邪魔なスレを無数に立てられかき消されていく。中には最初の文字だけ同じでそれ以降は嘘で構成されたスレもあった。

 タイムリミットが近いのか、後ろからの視線も増え遂には笑い声さえ聞こえる。


「直接的な内容なら似たものを乱立させられて妨害する。だが直接的に消去しないなら、過去ログからさっきのスレを見る」


 はっきり言ってこれは賭けだ。あの”ksk”の中でログアウトについて書き込めたかなんて分からない。

 でも妙な確信があった。絶対にあの人なら間に合っているという確信だ。

 確かに先ほど私が一方的に認知しただけの顔も名前も知らない人だ。それでも長い間、画面の向こう側も知らずに呼びかけ続けたあの人を私はとても尊敬する。


「あった、”【朗報】十二時の十二人 動くwww”。さらにページ内を検索、”ログアウト”これだ!」


”956 名無しの住人

ログアウトするには上のメニューの一番右の一番下の隠しリンクを押してログアウトページに行く”






 私はその書き込みを信じ最後まで実行した。その瞬間、感じていた視線や笑い声が一気に消え、謎の肌寒さすら感じなくなった。ログアウト出来たのだろう。

 たまにあれは夢だったかと思うぐらい、何も残ることはなかった。

 しかし最初に見つけたあの書き込みに、今でも【裏掲示板】へのURLは残されている。


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